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20020605 振り子の工夫

 柱時計や置き時計には振り子が付いたものがある。振り子を使って一定の時を刻んでいるのである。振り子がいつも同じの時間で振れることをガリレオ$${^{*1}}$$が発見し、ホイヘンス$${^{*2}}$$によって振り子が時計に応用された。

 振り子はいつも同じ時間で振れるというのは振り幅が小さいときだけで、大きく振れると振れる角度によって振り子の往復時間が違ってくる$${^{*3}}$$。この小さく振れた時と大きく振れたときの振れる時間が一定になるようにホイヘンスは巧い工夫$${^{*4}}$$している。

 これによって振り子時計は一定の時を刻むことが出来るようになった。振れる角度が一定であれば殆ど狂うことがなくなる筈である。振り子の振れる時間を決めるのは振り子の長さと重力加速度$${^{*5}}$$である。重力加速度は時計を柱に掛けっぱなしにしていれば殆ど変わらないだろう。しかし振り子の長さはしょっちゅう変わる。

 大抵の場所は温度が変化する。一日でも一年を通してでも温度が変わる。温度が変われば振り子は膨張したり収縮したり$${^{*6}}$$する。そうなれば振り子の竿の長さが変わることになり、時計が狂い出す。

 これを解決したのが温度で長さが変わらない材料$${^{*7}}$$の登場である。フランスのGuillaumeがinvar(アンバー、インバー)と呼ばれる金属材料を発明し、ノーベル賞を受賞$${^{*8}}$$した。

 変わらないと言っても、鉄は1℃変化すると長さが0.0012%変わるのに対してinvarはその1/10程度変わる$${^{*9}}$$。全く変わらない訳ではない。

 そこで振り子の竿に工夫をする。まず支点からinvarで作った竿を下ろす、そして端から折り返すようにして別の材料で作った竿を上に向けて付ける。この材料は正確にinvarの2倍の変化を持つ物にする。そしてまた折り返してinvar製の竿を下ろす。そしてその先に振り子のおもりを付ける。

 こうすれば温度が変わって2本のinvarの長さが下に伸びても中間の竿は上にその2倍伸びるので相殺されて振り子の竿の長さは一定になる。

 この方法をwebのどこかで見かけたのだが、どうしても見つからない(※2020年10月の内容見直しで見つかった)。水銀を使って温度補正を行う方法$${^{*10}}$$は見つかった。おもりの中に水銀を仕込んで温度の変化で振り子のおもりの重心が変わるようにしてある。

 昔はこういった方法で機械式時計の精度を向上$${^{*11}}$$していったが、水晶振動子や原子時計$${^{*12}}$$が出てきて純粋な機械式の時計で精度を追求することがなくなった。

*1 20020525 ガリレオ温度計
*2 わがはいのページへようこそ。
*3 単振り子の運動 解説
*4 クリスチャン・ホイヘンス(1629-1695)
*5 今回(こんかい)の「時の理科(ときのりか)」は「時の歴史(ときのれきし)」。
*6 熱膨張
*7 インバー材料とスピン揺らぎ - 東北大学深道研究室
*8 Physics 1920
*9 INVAR-MASK & CSM
*10 水銀振り子 置き時計|明治村百選|明治村とは|博物館明治村
*11 リーフラー天文時計
*12 20020604 機械式腕時計

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