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20020220 吉田初三郎

 吉田初三郎という人がいた。この人は鳥瞰図を書くのが得意な人で大正の広重$${^{*1}}$$と言われていた。

 幼少の頃の記憶で鉄道沿線の観光案内にはよく鳥瞰図が用いられていた様な気がする。路線図の中で駅名を小判型の枠の中に書き込むのは最近はあまり見られなくなったが、数十年前はどこでもそのような書き方をしていた様な気がする。吉田初三郎$${^{*2}}$$の鳥瞰図に書き込まれている駅名は全て小判型の枠に書いてある。今、彼の絵に惹かれる理由はこれではないかと思う。見ていると非常に懐かしい気分にさせてくれる。

 鳥瞰図というのは上空から斜めに見下ろした様に書いた図のことで俯瞰図とも言う。空を飛んでいる鳥には地表がこう見えるだろう、という意味である。吉田初三郎の鳥瞰図には空を飛んでいる鳥はもちろんのこと、遙か上空を飛ぶ飛行機でも見ることはできない場所が登場する。

 この図$${^{*3}}$$は琵琶湖の観光案内図であるが、富士山や樺太などが書かれている。このような極端な地形の歪曲や変形$${^{*4}}$$は一枚の絵に沢山色々なものを描き込む技法となっていて、見る者を楽しませてくれる。フェルメール$${^{*5}}$$の絵と同じ楽しみ方ができる。

 観光地の展望台などに上ると方位盤などが設置してある。そこにはニューヨーク$${^{*6}}$$、ロンドン$${^{*7}}$$などの方向が書いてあることがある。展望台からは見えるはずがないので、その方向を望んでも書いてある場所は想像するしかない。それが吉田初三郎の鳥瞰図では見えてしまうのである。なんとお得な絵なのだろうか。

 国連の旗$${^{*8}}$$の様な正距方位図法$${^{*9}}$$を鳥瞰図に応用すれば地元の地図の鳥瞰図にもかかわらず、アルゼンチン$${^{*10}}$$や南極が書き込めるかも知れない。

*1 パノラマ地図を旅する
*2 yosida
*3 吉田初三郎:地図の想像力
*4 吉田初三郎の世界
*5 20010127 フェルメールとブレードランナー
*6 My NYC.gov Portal
*7 Mayor of London, the London Assembly and the Greater London Authority
*8 国際連合旗
*9 地図投影法 / 投影法カタログ / 正距方位図法
*10 MINISTERIO DE RELACIONES EXTERIORES, COMERCIO INTERNACIONAL Y CULTO

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