見出し画像

20041221 メートル原器

 長い間「メートル原器」の寸法を勘違いしていた。メートル原器とは1889年に制定された1mと言う長さの基準となる物差しのことで、1960年までこの原器の長さが基準$${^{*1}}$$となっていた。

 勘違いしていたのは長さ方向ではない。長さは1mに決まっている。そんなことは分かっている。原器自体の長さは1.02m$${^{*2}}$$で原器に刻まれた印と印との間隔が1mになるらしい。そんな細かいことでもない。

 高さと幅との方である。メートル原器の形状は「X」のような形$${^{*3}}$$になっている。この「X」の高さと幅とが大体10cmぐらいあると思っていた。雰囲気としては建材として用いられる「H鋼$${^{*4}}$$」のような形だとずっと思っていた。

 ところが改めてメートル原器全体の写真を見ると細長い$${^{*5}}$$。どう見ても高さも幅も2cm程度$${^{*6}}$$である。おそらくこの勘違いは、端の部分を大写しにした写真$${^{*7}}$$を見た時にその断面形状から建材などを連想して勝手に大きさを決めつけていたのだろう。

 それにしてもどうして断面が「X」$${^{*8}}$$なのだろうか。フランスの科学者Henri Tresca$${^{*9}}$$がこの形状を設計したらしい。従ってこの「X」型の断面をトレスカ断面とも言う場合もあるようだ。トレスカは構造設計などで出てくる「トレスカ応力$${^{*10}}$$」とか「ミーゼス応力$${^{*11}}$$」とかの「トレスカ」である。因みにミーゼス$${^{*12}}$$も科学者の名前である。

 「X」の形状は上下が対称になっていない$${^{*13}}$$。この形状には何か深い理由がありそうだが、調べても結局よく分からなかった。撓(たわ)みにくい、捻れにくいという効果があるのだろう。そういう考え方なら「H」「U」「長方形」「単純なX」$${^{*14}}$$でも良さそうであるが、世界の「長さの標準」$${^{*15}}$$ということでもっともらしい形を採用したのだろうか。

*1 20000115 1メートル
*2 Trescal: calibration service, standard length measurement
*3 計量標準総合センター(NMIJ)
*4 形鋼/H鋼・角鋼 高周波曲げ加工
*5 メートル原器とキログラム原器
*6 長さの基準を決めよう
*7 産総研:メートル原器の重要文化財指定について -我が国の度量衡制度近代化への礎を築く-
*8 科学の歩みところどころ
*9 mechANIma 1814
*10 トレスカ応力はどうやって計算されるの?
*11 ミーゼス応力はどうやって計算する?
*12  Richard von Mises
*13 National Prototype Meter No. 27
*14 The NIST Length Scale Interferometer
*15 Histoire du mètre

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?