見出し画像

中村憲剛はなぜ愛されたか

本日、中村憲剛FROのドキュメンタリー映画「ONE FOUR KENGO THE
MOVIE ~憲剛とフロンターレ 偶然を必然に変えた、18年の物語~」を見てきました。(以下、映画のネタバレ含む)

自分は長いこと川崎市に住んできて、10年以上川崎フロンターレを応援しています。サッカーを見る方ならわかるかもしれませんが、中村憲剛は、入団した時には当時まだJ2にいたフロンターレを今では5年連続タイトルを取る常勝チームへと成長させた元選手で、現役を退いた今でも多くのサッカーファンに愛されています。長年応援してきた選手のドキュメンタリー映画とあって興味があって見に行きました。

映画は、中村憲剛と川崎フロンターレの歩みを同時に描いて重ね合わせていくような構成になっていました。僕が応援を始めた頃はすでに中村憲剛も川崎フロンターレも知名度はありましたが、それ以前にも色々なドラマがあったことを知りました。『両者』の出会いや『両者』の歩み始めも含め、なかなかメディアでも見ないようなものが多く描かれていて、感動しました。

なぜ中村憲剛はここまで愛されたのか。愛されているのか。

今まで日本サッカーには数多くの名選手がいて数多くの愛されてきた選手がいました。でも、その選手が引退して一年足らずでドキュメンタリー映画化されるようなことは僕が知る限り今までなかったと思います。普通はホーム最終戦でやるはずの引退セレモニーを、わざわざ別日に、しかも試合のない日に、しかもお金をとってまでやるようなことも多分なかったのではないでしょうか。

なぜ


僕がこの映画を見て思った理由は、

中村憲剛が誰よりも『川崎フロンターレ』を体現していたから

だと思います。


フロンターレのクラブ理念は主に二つの柱からなります。サッカーが強いクラブになることと、地域に愛されるクラブになること。このどちらともに、中村憲剛は誰よりも強い思いも持ち、行動を起こして来ました。


まず、選手としてチームを思う気持ちと責任感を誰よりも持っていました。

優勝できずに去っていく先輩がいる中、中堅からベテランでとなるにつれて孤独に全てを背負って来ました。J1に昇格しある程度の手応えをつかみ、実績も積みました。しかし、数多くの2位を経験しW杯メンバー落選も経験し挫折を味わいました。自分の引退までのカウントダウンも始まっていました。それでも誰よりもチームのことを考え、風間監督が就任してからはさらにうまくなってチームを引っ張って来ました。

その姿に呼応するように、新加入の大卒選手たちが成長し徐々に優勝できるようなチームができていきました。他の選手が、初優勝した時に最初にあふれ出た感情は、中村憲剛へのおめでとうという感情だったとのことです。後輩にも慕われていたのは、誰よりも重圧を感じ戦って来たからだと思います。誰よりもチームのことを思い、自らがなんとかしようともがき苦しんでいたからなんだと思います。


そして、プレーだけでなく地域交流の場に積極的に参加し、市民への感謝を示していました。

これはフロンターレならではの活動です。川崎を代表するクラブとして、市民に応援されないチームであっては意味がない。みんなに応援するチームであることに意味がある。支えてくれる人がいて自分たちが練習や試合をできているから感謝をしないといけない。映画では、選手たちの商店街巡りや小学校授業訪問など、数え切れないくらいの地域交流の映像がありました。

そして、この活動を一番積極的にやっていたのが中村憲剛だったそうです。シルバーコレクター時代はこの斬新な理念や活動を批判する声もあったそうですが、憲剛はこの理念にこだわりました。他の選手が敬遠するような体を張るイベントにも積極的に参加したそうです。チーム内でサッカーが一番うまく最も影響力のある選手が。

この地域密着には、二つの効果があったと思います。

まずシンプルに、フロンターレを応援する人が増えたこと。自分たちの活動を支えてくれる市民に感謝を示すこと。たしかにこれをされたら、応援したくなるのも当然です。スタジアムの動員人数は格段に増えました。強いチームや常勝チームを応援するのはよくあることですが、「負けた時こそ応援する」という声もあったのは印象的でした。

もう一つが、川崎にサッカーの文化が根付いたこと。中村憲剛が小学校に来ることでサッカー選手になりたいと思う人が増え、そんな人たちがJリーグで活躍してたらフロンターレに入りたいと思う人も増えたと思います。東京オリンピックメンバーには川崎にゆかりをもつ選手が多く選出されていましたが、これも地域密着の効果の現れなのかなと思います。

中村憲剛は、この全てに貢献してきました。


誰よりも自分の仕事に強い思いを持ちそれを行動で示すこと。それを支えてくれる人への感謝を日々伝えること。


これが中村憲剛が愛される理由なのかなと思います。それと同時に、川崎フロンターレが愛される理由でもあるのかなと思いました。

人としてあるべき姿を見た気がしました。すごく当たり前じゃんとか思わなくもないですが、これって意外とむずかしいですよね。。


以上です。

これからの川崎フロンターレと中村憲剛氏の活躍が楽しみです!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?