海洋城郭都市・ドゥブロヴニク【Bucket List07】
都市全体が城壁に囲まれた城郭都市といえば、遥か中世にタイムスリップしたような雰囲気を味わえるスポットである。
中でもクロアチアには「アドリア海の真珠」とも謳われる美しい街並みを誇る城郭都市がある。
今回はそんな街・ドゥブロヴニクについて取り上げたい。
ドゥブロヴニクはこんな街
ドゥブロヴニク(Dubrovnik)はクロアチア南部のアドリア海に面した人口約4万人の都市である。
古くはラグーサ共和国としてヴェネツィアなど他の都市国家と共に独立を保ち、アドリア海・地中海貿易で繁栄した歴史を持つ。
街の発展とともに徐々に拡張された城壁は、16世紀頃には現在の姿になったとされている。
1677年の大地震や貿易の不振などで徐々に共和国としては衰退し、1808年にイタリアに併合され、その後オーストリア・ハンガリーやユーゴスラビア時代を経て、現在はクロアチア共和国の領地となっている。
街は現在でもラグーサ共和国時代の建築や城壁を遺しており、「ドゥブロヴニク旧市街」として1979年に世界遺産にも登録されている。
旧市街スポット巡り
街を訪れたら早速門をくぐって城郭都市の中へと入ろう。
旧市街の西側に位置するピレ門は、かつて街へのメインの入口として使われていたそうだ。
今でも門前には衛兵が立っているが、何人もフリーパス状態である。
中へ入ると最初に目につくのはオノフリオの大噴水だ。
15世紀にナポリの建築家オノフリオによって作られたこの大噴水は、噴水というより水飲み場のほうがイメージに近い。
川のないドゥブロヴニクにおいて、12km離れた厳選から市内に水を引き、市民の水道となっていたそうだ。16面あるドーム型の噴水には各面につけられた彫刻から今も水が流れ出ている。
極めてシュールである。
これら16名が誰の顔なのかはわからなかったが、もし何らかの功績を残した偉人がその功によってモチーフに採用されていたのだとしたら、それがいい迷惑であるという可能性についてオノフリオは思いを馳せてみるべきだったかもしれない。
噴水を通り過ぎるとメインストリートのプラツァ通りである。
石畳の道の廻りにはカフェや土産物屋が並び、観光客で賑わっている。
また、ちょっと脇道を覗いてみても、細い通りに店やテラス席が並んでおり、穴場の探しがいがありそうだ。
メインストリートの終わりには、かつて市場が開かれていたというルジャ広場がある。
この近辺には街の守護聖人を祭る聖ヴラホ教会や、
大聖堂などの宗教施設が点在している。
特にドミニコ会修道院は三連アーチの回廊に囲まれた中庭を持つ美しい教会が見ものだ。
メインストリートを抜け、小道を通り過ぎるとドゥブロヴニクの交易を支えた旧港にたどり着く。
現在は主に観光用のボートの発着で賑わっている。
そして港を眺める位置にレストランがあるので、潮風を感じながらシーフードリゾットや、名物のカスタードプリンであるロジャータなどを楽しむのも悪くない。
城壁一周
ストリートを歩くのもいいが、せっかくならば市街を囲む城壁に登って街並みを楽しむのは外せない。
全長約2kmの遊歩道はときに細く、登り降りも多いが、その分街歩きとは異なる視点からの美しい街並みを楽しめる。
入り口はいくつかあるが、私はピレ門に近い入口から反時計回りに回ることにした。
先程のメインストリート・プラツァ通りも一望である。
地上からでは確認できない、ドゥブロヴニクの美しさの重要な構成要素である、家々の赤褐色の屋根が見て取ることが可能だ。
また街の外にも目を向けたい。
基本的に城壁の外は切り立った絶壁で、アドリア海へと落ちていくのみである。
しかし、ごく一部の僅かなスペースはビーチとなっており、夏場は海水浴客で賑わっている。
砂浜など存在しないが、このビーチ最大の楽しみは飛び込みであるらしい。
眺めていると、次々と岩場からアドリア海へと勢いよく飛び込んでいく。
夏場の日差しの中階段を登り続けた身としては、彼らを羨ましくも感じるが、流石にすべて脱ぎ捨てて海に身を投げる度胸など持ち合わせていない。
ただ透き通るようなアドリア海へとダイブしていく男たちの姿をカメラに収めるのみであった。
その後も城壁を一周していくと、最後に残るのは最大のハイライトと言えるミンチェタ要塞である。
この要塞は城壁の中でも最も高い位置にあり、途中なかなかタフな上り道となる。
しかし登りきった先にはご褒美が待っている。
ドゥブロヴニクはジブリ映画「紅の豚」で飛行艇で街の上空を旋回するシーンなどの舞台のモデルになったともされており、青い海と赤い屋根のコントラストの美しさが作品を思い起こさせる。
このように中世からの美しい街並みを楽しめるドゥブロブニクであるが、内線による破壊による危機に陥った時期もある。
1991年にクロアチアはユーゴスラビアからの独立を宣言した。
しかし、クロアチア国内に一定数居住するセルビア人がこれに反発しクロアチアから独立の動きを見せると、ユーゴスラビア軍とクロアチア軍の戦闘に発展し、ドゥブロヴニクも隣接するユーゴスラビアの構成国ボスニア・ヘルツェゴビナ軍による砲撃を受け、大きなダメージを受けた。
一時は危機遺産リストに掲載されたが、その後破壊された街は正確に復旧され、現在の美しい姿を取り戻している。
屋根瓦の中に鮮やかなものとくすんだものが混在するのはこのためだ。
城郭都市の全景
更に高い位置から街を見下ろすことも可能だ。
旧市街の北にそびえるスルジ山へはロープウェイが運行されており、山頂から市街の眺めを楽しむことができる。
3分ほどで山の頂上へ。
そこからは城壁に囲まれた街の全景がはっきりと確認できる。
ロープウェイ乗り場そばには展望台があるのだが、そこからだとどうしても街にロープウェイの支柱とロープが被ってしまうので、それに遮られない形で写真に収めたい場合、少し場所を移動するのが良い。
なお、美しい街並みとアドリア海に背を向けると、そこには対照的にどこか荒涼とした景色が広がっている。
5分ほどゆくと、支柱の影響を受けずに街を眺められるようになる。
街の向こうに見えるロクルム島は、現在は無人島であるが船で訪れることが可能だ。
11世紀の修道院などの遺跡がある他、クジャクやウサギがそこかしこにいるので、市街とはまた異なる魅力を楽しみに訪れるのも良いだろう。
そうこうしているうちに日没が近づいてくる。
沈んでいく夕日によって茜色に照らされるアドリア海はいつまでも眺めていられる美しさだ。
ドゥブロヴニクのマグネット
ドゥブロヴニクのマグネットがこちら。
晴れたアドリア海に浮かぶ城郭都市の姿が実にドゥブロヴニクらしい。
なぜか1本丸太らしきものが浮いているのは謎である。
丸太の部分は飛び出ているので塗り間違いではなさそうだ。
夜の帳が下りても街は活気に満ちている。
スルジ山から夕日を眺めるのであれば、ライトアップされた旧市街の様子も楽しんでおきたい。
しかし、展望台から外れた位置で待機していた場合、街灯などがない割に岩場のようになっているので、足を踏み外して無様にズッこけるようなことがないように注意をしてほしい。
なお私はあくまで一般論としてその危険性を指摘しているのであって、己の経験談からくるものではない。
最後までご覧いただきありがとうございました。
次回は東欧の古都を取り上げられればと思います。
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