思い込みで固められた世界
本棚を眺めていたら、ずいぶん前に購入してまだ読んでいなかった「FACTFULNESS」が目に入った。表紙にはこう書かれている。
10の思い込みを乗り越え、データを元に世界を正しく見る習慣
思い込みというのは本当に恐ろしいもので、「こうだ」と刷り込まれたり、思い込んでいるうちにそれがあたかも自分の現実であるかのように振る舞ってしまうことになる。
偏見や差別というものも、もしかするとそんな風に生まれるのかもしれない。
大体、人というものは自分の知っている範囲でしか、物事を判断できないので知らないことに対しては不安を覚えたり、恐れを抱く傾向にあるように思える。
自分の住んでいるこの世界のことについても、自分の半径5メートルくらいの世界についてはかろうじて把握できたとしても、まだ足を運んだことのない地域や全くなんの繋がりを持たない世界ついては想像力を働かせるより他はない。
いくら情報化社会だと言っても、無味乾燥な情報をパッチワークのようにつなぎ合わせるだけでは理解できるとは思えない。強いて言えば「知っているような気になれる」くらいだろう。
ビジネス書や啓発書、教養書の類は苦手なので、普段はあまり食指が動かない。ファクトフルネスを手に取ったのは表紙の「思い込みを乗り越え」というフレーズが気になったからだ。
冒頭にクイズに挑戦してみよう、という項目が出てくる。世界についてどれほど知っているかチェックしてみてほしい、と著者は言うのだ。世界の事実に関する13問のクイズに答えなければならない。
このクイズ、実は2017年に14か国・1万2千人を対象にオンライン調査が行われている。地球温暖化の質問をのぞき、平均正解数は12問中たったの2問だけだったのだそうだ。満点は誰一人としておらず、全問不正解者が15%もいたというのだから驚きだ。
分断本能、ネガティブ本能、直線本能、恐怖本能、といった章のタイトルだけでも、興味が湧いてくる。
普段から気になっていることのひとつがSNSのフォロワー機能である。自分の読みたくなる相手、すなわち類似した人たちをフォローすることで、自分の思い込みをますます確固としたものに無意識の内にしがちなのがSNSの危険なところだ。
そういう意味でも、この本を読んでみる価値がありそうだ。物語をたくさん読んで自分とは異なる人物の思考について考えを巡らせるように、たまには「思い込みを乗り越える」という明確な目的で本を手に取ってもいいだろうから。
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