雑多なものをゆるく繋ぎたい。市民アーティスト 久保ふじ江さん
(※今回のインタビューを動画にまとめています。よろしければ、動画も合わせてご覧ください。)
逗子アートフェスティバルの市民企画として「numamaあるある」を開催している久保ふじえさん。
逗子生まれ逗子育ち、ずっと逗子に住んできた。
60歳まで逗子から横浜に通勤しフルタイムで働く。
退職し時間の余裕ができた時、地元での繋がりが少なかったことに気づいた。
そこで改めて地元逗子で繋がりを作りたかった。
そんな時に駆け出しの逗子アートフェスティバルに出会い、参加。
「numamaあるある」は久保宅での展示を中心に、逗子の沼間にある家、3カ所ほどで行っている逗子アートでスティバルの市民企画のひとつ。
人と人をつなぐ場=numamaあるあるの誕生
逗子アートフェスティバルが初めて開催された2013年、最終日の夕方近くに、東逗子駅前でアートフェスのチラシを目にし、ZAF(逗子アートフェスティバル)の存在を知った久保さん。その時は関わろうという気持ちはあまりなかったという。
2013年にZAFを知ったことをきっかけに、翌年初のトリエンナーレとして開催されたZAF2014にボランティアとして参加。展示品の材料を蘆花記念公園に市民の皆さんと運んで作品を作るなどし、地域の人々と繋がることが楽しいと実感。地域型アートフェスティバルの可能性を感じた。
そんな2014年の経験から、自分の住んでいる地区でも何かやろうと決意。ZAF2015に市民企画として、自宅をオープンハウスとして提供し「ちょっと未来の沼間あるある」を開催。
【人が集まるきっかけを作りたかった。自宅の利用していない空間を利用し、友人や知り合いの作品を展示した。】
「皆で、ひとりで、作品を作り展示します。空きスペースがモッタイナイと思い、わが家を使っていただくことに。人と人をつなぐ「場」になれば幸いです。」(ZAF2015パンフレットから)
2015年からこれまで6回の展示を行ってきた。2016年からは企画名を変更し、「numamaあるある」を開催している。
同じく2016年からは、鎌倉由比ヶ浜を拠点に芸術・創作的活動を通じて障がい者への支援を行う「アトリエそらのいろ」の展示も行っている。
また「numamaあるある」は久保宅の他にも数カ所で展示も行っている。書道のワークショップや中南米の音楽のミニコンサートなどを行ってきた。
初めのうちは、沼間のあちこちで展示を行うため、場所が分かりづらかったそう。そのため2019年からはひとつ工夫をし、最寄りの駅から三箇所の家をたどる道案内として毛糸のポンポンをつけていった。
このポンポンも「numamaあるある」の一部となっている。
久保さんの語る逗子の沼間の魅力
逗子市を地区ごとに分けてみると、このようになる。
駅などがある逗子・山の根、海沿いの新宿・小坪、少し内陸で山に面した池子・沼間、鎌倉方面に位置する久木、そして葉山に隣接する桜山。
海と山に囲まれた逗子は、それぞれの地区に個性豊かな色がある。市内の様々な場所で開催される逗子アートフェスティバルを通して、それぞれの地区の魅力をぜひ感じてもらいたい。
ここでは久保宅のある沼間について紹介したいと思う。
沼間は逗子駅のお隣、東逗子駅を中心とするエリアで、逗子に住んでいる人でもあまり知らなかったりする。
沼間にはリノベーションをした家、アトリエが多くあるなど、空間をオリジナルに、自分のものにしている人が多くいる。
久保宅もそのひとつ。ZAFに長年携わってきてもなお、本企画ではなく市民企画として参加し続けるている久保さん。
なぜか聞いてみると、沼間にはまだまだ発掘できていない市民がたくさんいる。久保さん自身もまだまだ知らない沼間がある。だから、市民企画として参加しつづける意義があり、沼間を離れることは考えてないと語っていた。
久保宅のメイン展示「アトリエそらのいろ」は朝のラジオ体操で知り合ったことがきっかけで始まった。元々は久保宅のみで行うつもりだった企画が、3ヶ所に増えた。近所で繋がり、形になっていくことこそ市民企画「numamaあるある」のひとつの魅力だ。
今後も展示場所を増やしていきたいと語っていた。本企画よりも参加するハードルが低い市民企画として続けること。そして逗子の中心から少しずれた場所にある沼間で開催し、訪れ知ってもらうことに意味があるのかもしれない。
沼間には、夏にはホタルが見える田越川、約1300年の歴史がある神武寺、逗子八景にも選ばれた鐘楼堂など多くの観光スポットもある。
逗子と聞くと海が注目されがちだが、海の他にも様々な魅力がある。これは沼間だけでなく逗子市全体で言えることだが、自転車でどこへでもいける、というのも魅力のひとつ。自転車で海から山までぜひ巡ってほしい。
ちなみに自転車に乗った久保さんは逗子市内どこでも出没するらしい。
久保さんの逗子のおすすめの場所
久保さんのオススメスポットは、ネパールカレー屋の「エベレストキッチン 東逗子店」
【沼間地区にはオススメのお店はいくつかあるのだけれど、まだ比較的新しくて実はチェーン店、近くを通るとカレーの良い香りもするし県道沿いにあるのにあまり知られていなくて、もっと逗子の人に来て欲しいと思うの。だからオススメ。特にネパール人のマスターとの会話が楽しくて、必ずお話をしていてネパールの話をしてくれたり、ネパール人から見た日本の魅力や日本人の性格など私じゃ気づかない所を話してくれて。もちろん本格的なカレーは美味しい、私のお気に入りはマトンカレー】
ネパール人の奥さんが作る本格ネパールカレーが楽しめる。
今年のZAFに向けて
「numamaあるある」の展示は今年で7回目になる。
人や地域を繋ぐ力を持っている久保さん。
今までもこれからも「繋がっていく」をテーマに活動していきたい。これまで横のつながりを広げてきた。今後は次の世代、縦にも広げていきたいという。
具体的な展示内容としては、これまでも扱ってきたポンポンを使った展示を行う予定。
【糸を結ぶという誰でもできることから繋がりを広げていきたい。糸を繋ぐことをきっかけに、人も繋ぐことができる。】
久保さんの考える繋がりとは?
【サポートが必要な人に手が届き、届けられるようにしたい。見て見ぬふりをしない近所を作っていきたい。】
そのためのきっかけづくりを、日常からポンポンの糸を紡ぐように続けてきた。
ZAFに参加することもそのひとつ。
そして、その先に何か残せるものがあればいい。それが何か具体的にはまだわからないが、時間的な繋がりを作りたいと語っていた。
【多様じゃなくてもいい、「雑多」でいいと思うの。】
久保さんが語ったこの言葉がすごく印象的だった。
人も、店も、地区ごとの特色も全て、「雑多」でいい。でも「逗子」で括った時、何かそこには「らしさ」があるのではないだろうか。ゆるくも強く繋がっている何かがあるはず。
自分がアーティストだとはあまり考えたことはないという久保さん。
道を人を拾うのが趣味。すれ違う人に挨拶し話してみたら、偶然が続きいつの間にかこんな素敵なことになっていたという。
見えはしないけど確かに久保さんが持っている、人を繋げるエネルギーこそがアートではないだろうか。久保さんと話す中でそう感じた。
インタビュアー/ライティング 増子柚季
撮影 嶺隼樹
編集 大澤颯人
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