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もう惨めな思いはしたくない。対面じゃないからこその安心感が、そこにある。

・厚労省は1月23日、緊急避妊薬について、対面ではなくスマートフォンやパソコンを使って医師の診察を受け、処方してもらう「オンライン診療」を初診から適用するか否かの議論を検討会で始めた

・オンライン診療は、原則初診は対面とされているが、アフターピルは服用に緊急性を要するため「例外」として初診から適用すべきという意見が出ている

・離島や地方などで産婦人科が近くにない人や、カウンセリングや診察に行きたくても人には知られたくないと思っている人へのアクセスが向上するというメリットがある一方、性教育の遅れで、正しい知識がなく乱用してしまったり、悪用したりする人が出るかもしれないというデメリットも指摘されている

レディースクリニックは悲喜交々だね。

旦那さんと連れ立って、柔らかな笑みをたたえている女性。
落ち着かない様子で、悲壮感漂う女性。

私は周りの人に、どんな風に映っているのかな?
私は私の妊娠を心の底から喜んでくれるパートナーと一緒に、幸せな気持ちでこの場に来る日がくるのかな?

ねえ、私、今、すごく惨めだよ。

画面越しからでも伝わる、痛いくらいの悲しみに、なんて返せばいいのか分からなかった。

彼女は、家の近くのレディースクリニックだと知り合いに会うかもしれないと、電車を乗り継ぎ5駅先の病院に行ったらしい。

診察はあっという間。支払いが済み、副作用に関する同意書にサインをするとアフターピル1錠とコップに入った水が手渡されてその場で飲む。

「副作用の症状が出たら連絡してくださいね」と念を押してくれた看護師さんに頭を下げ、エレベーターに歩を進めると、同じく診察を終えた夫婦と乗り合わせたそうだ。

妊娠が防げた(であろう)安心感と、副作用が出るかもしれない不安、その二つを抱えているだけでも苦しかったのに、「順調だって、よかったね」とクスクス笑い合う夫婦の姿に、なんて自分は惨めなんだろうって、いたたまれなくなったよ、と続ける彼女に、やっぱりなんて声をかけたらいいのか戸惑ってしまった。

診察は対面の方がいい、というのは私個人の考えだ。対面だからこそ伝わる情報、例えば呼吸の荒さだったり顔色であったり、それらによってより正確な診断が期待できるからだ。

しかし、病院という不特定多数の人が訪れる場所に足を運ぶのは、通院したことを人に知られたくないという人にとっては心理的ハードルが高い。

彼女のように、「望まない妊娠を防ぐためにアフターピルを処方してもらう」ことは、できれば人に知られたくない。

さらに言うと、病院で他の患者さんと不用意に比較してしまうのは精神衛生上好ましくないので、なるべく避けたい。

そういう人にとって心強い味方となるのがオンライン診断だと思う。

もちろんメリットばかりではない。アフターピル自体、副作用があるものだし、今より入手するハードルが低くなることで性犯罪などに悪用されるケースも想定できる。

それでも、病院に足を運ばなくていい選択肢があるだけで、少しは救われる。

きっと、あのとき彼女にオンライン診断という選択肢があったら、きっと必要以上に心を痛めなくて済んだんじゃないかな。

私はそう信じている。

サポートしてくださったあなたには、こじらせ人間に絡まれないよう念力を送ります