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【株知識】投資と投機と、時々先物

はじめに

あらゆる生物の中で、投資をする生物は人間以外に存在するのでしょうか。あるときこうした疑問を持ったことがあります。その疑問は曖昧すぎて答えが出ませんが、そもそも「投資」とは何かを定義する必要がありそうです。

投資とは 現物に価値を見出す

とう‐し【投資】
読み方:とうし[名](スル)
利益を得る目的で、事業不動産証券などに資金投下すること。転じてその将来見込んで金銭や力をつぎ込むこと。「土地に—する」「若いピアニストに—する」
経済学で、一定期間における実物資本増加分。

デジタル大辞泉

この投資の定義の根底には「保有すること」が前提にあるようです。商品や事業に価値を見出して資金を投下、一翼を担うことで配当を得る現物取引。その商品が欲しい、買うことで自分に利益があるから買う。商品そのものに価値を見出しています。保有するのだから、将来の価格の上下など気にしません。弾きたいからギターを買うみたいなことです。

先物取引の誕生

過去にタイムスリップしてみましょう。
イギリスが1600年に東インド会社を設立し、世界初の株式会社を誕生させていたそのさらに東側、江戸時代の日本では、株式市場の代わりに米市場がありました。そこでは、現物取引の正米取引先物取引の帳合米取引が行われていました。大阪堂島の米市場で、世界初の先物取引市場ができていたことは有名です。
先物取引とは、将来の決まった時期と量と価格で売買することを約束する取引です。

米は主食であり、食料として現物として必要であるため、現物取引が生まれるのは納得がいきます。
また、米は一年単位で収穫されるため、成果は短期的に回収できます。一方で事業や商品に対する投資は何年もかけて成果を回収するため、長期的でした。また、米は不作や飢饉の影響で、流通量や価格が変動しやすいです。「おい米屋!来月こんだけ買うから取っといてくれ!」というお願いの一つもしたくなるでしょう。つまり米市場というマーケットで先物取引が誕生するのは、考えてみれば自然な流れです。

投機とは 価格変動に価値を見出す

とう‐き【投機】
読み方:とうき
利益幸運得ようとしてする行為
将来価格変動予想して現在の価格との差額利得する目的行われる商品有価証券などの売買

デジタル大辞泉

先物取引は現物価値を見出して売買をしてはいますが、価格変動を読んで売買をしていることにもなります。ここで短期的な「投機」のにおいがしてきます。

「投資」「投機」の両面を持ち合せる先物取引という新たな取引の誕生は、その後者のみを目的とした利益の取り方も生み出しました。それが「相場師」と呼ばれる人たちでした。「投機」の始まりです。
投機とは、価格変動にのみ価値を見出して行う取引です。ここにはもう、商品そのものに価値を見出す視点はありません。ギターは弾かないけど、いつかプレミアがつけば売れるからそのギターを買うみたいことです。


先ほどの「投資」の定義では、投機的な「将来の価格変動を予期して株などを売買すること」も含んでいます(広義の投資)。しかし、厳密には「将来の価格変動を予期して株などを売買すること」を「投資」の意味から切り離して(狭義の投資)、「投機」と呼んで区別します。

まとめ

再び現代にタイムスリップします。
デイトレーダーの中にはファンダメンタルズ(経済政策など)企業分析を活用する人はいますが、基本的にはテクニカル分析を活用します。つまりチャートのデータから有りうる将来の価格変動を予測するものです。買った銘柄の名前さえ初めて聞いた、みたいなデイトレーダーも当たり前にいます。これは商品や事業そのものに価値を見出していないため、「投資」というより「投機」と言えるでしょう。

なぜ投資投機を区別するのでしょうか。それは私が思うに、投資は経済成長を促しますが、投機は経済にはまったく貢献しないからでしょう。かといって、投機がダメだという訳ではなく、リスクを理解して行えば飯のタネにはなるでしょう。「金を稼ぐ能力」として。

この記事の執筆にあたって、金融庁の以下の記事が参考になりました。
次回の【株知識】シリーズもお楽しみに!

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