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映画評「沈黙の艦隊」/1か月後には評価が変わっているといいな・・・。

さぁ、「沈黙の艦隊」

についてお話しさせていただきます。

1988年から1996年まで連載された漫画「沈黙の艦隊」がこの度映画化。

私と、漫画「沈黙の艦隊」の出会いは、西暦2000年頃。
お肌弱弱だった当時、平気で2~3時間は待つ皮膚科に通ってまして、待合室の本棚の隅っこに、くしゃくしゃになっている、コミックス版「沈黙の艦隊」と遭遇したのであります。

これがゲロ吐くんじゃないかと思うほど面白く、皮膚科終わりで速攻で父親にねだり、全巻買ってもらい、一気に読了。
しばらくは、家でも皮膚科でも「沈黙の艦隊」を繰り返し読み耽る日々を送っていました。

人生ベスト漫画を5冊選べ。
と言われたら、そのうち1冊は「沈黙の艦隊」です。

物量が半端じゃない現代海戦描写

癖すご登場人物たちの熱いポリティカルサスペンス
が混ざり合いつつ、
「世界平和の実現」
という、今日日高校生のディベートでも扱わんような、ド直球なテーマに一つの答えを出してしまう、そんな物語なのであります。
無理がある展開は多々あるのですが、熱量でねじ伏せられる、唯一無二な漫画なのです。

その、「沈黙の艦隊」が、この度アマゾンスタジオ製作の邦画第一作目という、鳴り物入りな映画化。
9/29(金)に公開されたので、早速観てきました。

さて、それで感想なんですが。

以下、多少ネタバレです。



これは、、、。

うーん、こいつは、、、。

あれ。
僕の知らないところで、「沈黙の艦隊」って、映画化じゃなくてドラマ化が決まってるんだっけ。
僕が観たのは、初回2時間スペシャルを映画館で観よう!っていう企画だったのかしらん。

そんな感じです。

どんなストーリーかっていうと、予告編ではこのような字幕がつく。

「日米政府が極秘で開発した、最新鋭の原子力潜水艦を奪い、海江田四郎は、深海へと消えた ー 」

映画終わってみると、本当にこれ以上でもこれ以下でも無かったという ー 。
予告編にあった以上の展開も見どころも存在しなかったという ー 。

長大な原作を2時間にまとめて映画化するので、そこで終わるんかい!な展開かなっていう予感はありましたが、それにしたって、物語は何も始まらずにひっそりとエンディングと相成りました。

終わり方だけが問題かっていうとそうではなくて、2時間の上映時間中、特に退屈もしなければ盛り上がることもない、そんな小津安二郎にしか許されないような時間が続いていく。

バトルは薄味で、基本的には数グループが密室で会議をやっているだけ。
かつそこにも、信念の対立みたいなのはほぼ存在せず、「今日何食べる?」くらいの熱量で、「どーしよっかなー」をやってる。

アメリカ側の描写も問題が多い。
雰囲気も無い英会話スクールの兄ちゃんたちが、狭い部屋でしゃべってるのみ。
軍司令官みたいなおじさんが、司令室なのかあれ?な、ただの薄暗い会議室にずっといるんですが、リモート式典の時だろうが資料を読むときだろうが、ずっとティアドロップサングラスをかけっぱなしで、そんなテキトーな「ガイジン」描写でした。

「沈黙の艦隊」に期待していた要素がひとつもないままに映画は終了。

「沈黙」の「艦隊」って何だ。
海江田四郎の目的は何だ。

全然触れられない。

「ミッションインポッシブル」なら10分でちゃちゃっと片付けていた冒頭部分が、2時間に引き延ばされた感じ。

「ドラえもん」の実写映画化で、のび太くんの日常シーンのみで構成されてるようなもんです。
未来の道具どころか、ドラえもんも出てこない。
ドラえもんを出さんかい。ドラちゃんはどこに行ったんだ。

しかし、これは「映画」と考えれば。
ドラマシリーズ初回2時間スペシャル なら、最高の出来です。

主演「大沢たかお」は、素晴らしい。
何してもキングダム「王騎」に見えるんだろうな(ってそれもよく考えれば凄いことですが)、と思ってたら、ちゃんと海江田でした。
序盤の海江田って、のっぺりとした作画の上に、そもそもがポーカーフェイスで、指令以外の口数はほぼないキャラクターなので、ぶっちゃけ魅力に乏しい。
その上、原作のキャラ造形じたいも特徴的な顔立ちではないので、再現できるようなキャラじゃないはずなんですが、時折みせる海江田そのものな立ち振る舞いや表情が物語を牽引。

ただ、ほぼ見どころはそこしかないんですねぇ。

まぁね。
再三申し上げますが、上記は2時間の映画として観ればの話なのです。
ドラマの第一話として見れば、何の文句もないクオリティです。

あと2週間〜1ヶ月すれば、
ドラマ「沈黙の艦隊」がプライムビデオで独占配信!
というニュースが駆け巡るはず。
そうだよね?サプライズだよね?

ということで、ドラマ化発表に期待しています。

そういう意味では、1か月後には評価が激変している、珍しいタイプの作品なのかもしれません。

それまでは、漫画を読んだことない方は、おとなしく「グランツーリスモ」か「ジョン・ウィック4」を選択するのが、身のためです。


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