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映画評「AI崩壊」

AI崩壊(2020年/131分/日本)

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今の世の中は大変恵まれておりまして、映画におきましては、素直に選択しておけば、駄作に巡り合うことは、ほとんどありません。

ウェブやSNSを通じて、面白い映画の評判はすぐに回ってきます。

加えて、コンテンツ量の多さ。
NetflixやらAmazonプライムビデオやらが、オリジナル作品を多数配信してくれています。
映画館では大作を、配信系では小品を、さらにテレビドラマもたくさんあるので、面白い作品を見るだけで、あっという間に時間がなくなってしまいます。

なと幸せなことでしょうか。

しかし、幸せだと逆に物足りなくなるのも人間の業。

映画を見るという行為が、「面白いことの確認」になってしまい、意外性が全く無くなっていく。

そう、意外性。掘り出し物。珍作。最悪、駄作で構わないから、たまには脳に別角度の刺激を与えたい。
この感覚、多分不倫と一緒。

ということで、「AI崩壊」を観ることにしました。

なんとも不純な動機で、製作陣に対しては甚だ失礼ではありますが、しょうがないでしょう。

「AIが暴走して、人間の選別を始める」とか今更なプロットですし、予告編も一瞬たりとも面白そうじゃなかったし。
ただ、こういう作品が当たりだと、大変嬉しい。舐めてたら面白かった、ほど活力を得られるものもないのです。

最近のそういう系では、「アルキメデスの対戦」がありました。

果たして結果やいかに!

あらすじ。
2030年。
AI崩壊!
犯人は、開発者である大沢たかお?
逃げる大沢たかお。追う警察。
逃げながら真相を究明するのだ、頑張れたかお!

映画が開始して5分。私はなんとなく、「平成ゴジラ映画」を連想してました。

「ゴジラvs◯◯」みたいな、アレです。
なんでしょうか、あの感覚。

「人工知能」とか「アルゴリズム」とか、そういう最新?の専門用語を、はしゃいで連発するセリフ とか

「近未来」を表現したいけど、予算もないので、東京ビッグサイト的な外観のビルが映し出されて、その建物の内部セットは異様にすっきりした作り とか

エキストラの演技が総じてやる気なさそう とか

主人公(大沢たかお)は、難病と闘う妻と植物がたくさんある、照明がびっかりしている研究室で、AIを開発している。が、そのAIは認可がおりないため使用できず、最愛の妻を亡くしてしまう。

このへん、非常に「ゴジラ対ビオランテ」っぽい。

それから数年、ついにAIが完成する。妻の名前を冠し、その名も「のぞみ」。
ここで往年のゴジラ映画であれば、大沢たかおはマッドサイエンティストで、AIの正体は、妻の細胞と植物を融合させたもので、それが暴走してしまい、人類に牙を剥く展開である。
生き残るのは、ゴジラか!それとも「のぞみ」か!

だが、今作はゴジラ映画ではないので・・・、ゴジラは出てこない。
ゴジラが出てこず、人間パートが延々と続くということは・・・、簡単に言えば、すげーつまらねーです。

2030年が舞台という説得力がなく、ガジェット的に映える仕掛けがありません。せいぜい、通る車の音が「キュイーン」と電気自動車っぽいことくらい。

目玉である日常が崩れていくシーンは、その辺の道で、やる気のないエキストラが「うッ!」と胸を押さえて倒れ込むだけで、迫力なし。

肝心の逃亡劇としても、二車線だけの道路とか、田舎の裏路地を、たかおがドタバタ走るだけなので、燃えない。

ちなみに、大沢たかおはマッドサイエンティストでなく、単純に真面目に取り組んでAIを完成させて、妻の名前を記念につけただけの、グッドサイエンティストでした。
メインのサーバールームは、無数の電極に繋がれた妻の脳だった!みたいな展開を期待してたのに。

番狂わせ、起きず。

追伸

巻き込まれ系&監視社会逃亡劇なら、
「エネミー・オブ・アメリカ」「ボーン・アイデンティティのシリーズ」「ゴールデンスランバー(邦画)」

近未来&人工知能なら、「エクス・マキナ」「her/世界でひとつの彼女」

日常の崩壊なら、「アイアムアヒーロー(邦画)」


「AI崩壊」と同じジャンルであれば、上記がオススメです。


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