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「ブルーピリオド」に猛烈に感動している

絵に全く無縁だった主人公が、あることがきっかけで絵の世界にのめり込み、やがて、東京藝術大学に合格するべく、奮闘する。

そんなお話、「ブルーピリオド」既刊7巻、連載中。

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マンガ大賞の受賞をきっかけに、「マイリスト」に登録していたのですが、先日ふいに一気読みしてみました。

大!感!動!

※以下、少しだけ展開に触れます。1巻程度ですが。

「作品内の作品」について

この漫画、何が優れているか。

「音楽」でも「絵画」でも「小説」でも、表現(もしくは芸術)を表現する作品って難しいですよね。

いわば、「作品内の作品」に対してどう向き合うのか、という点。

作品の中で、すげえ!と言われている作品を、どのように生み出すか。

素人目から見ても、「なんじゃそりゃ?」ていう作品が、世界を席巻している!という設定だったりすると、その時点でどうしても入り込めない。

音楽を扱った漫画を映画化する場合のハードルは1番にそこですが、「最高の音楽を生み出すバンド」が題材であれば、映画の場合にはきっちり音を付けなければならない。
そこをクリアしないと、良い映画にはならない。
そういう意味で、「NANA」の第一作は大成功だったと思うのですが。

「作品のことは置いておいて」「それに翻弄される人々を描く」という方法もある。近年だと、映画にもなった「響 ーHIBIKIー」がありました。自分は映画のほうしか見ていませんが・・・、この手法の場合、「天才だ」「天才だ」と持て囃される主人公の凄さを伝えるのが難しい。
その点で、成功しているとは言い難いと思っています。

さて、「ブルーピリオド」の題材は、「絵画」。

音楽漫画とは、別の難しさがあります。だって、どうしても絵画そのものを、映し出さなければならない。ここに説得力がなければ、物語が成立しない。

そこを、見事に真っ向勝負しています。

詳しいことは、別で検索して調べてもらえればいいと思うのですが、今回の漫画に全て書き下ろしではなく、すでにある同世代や同じ大会?に応募された作品を、借りてきているらしい。

その時点でリアリティは満点。

それに、主人公と一緒に、我々も絵画の世界を少しずつ学んでいく。

それによって、作品内に施された技術を感じることができるようになってくる。

なんとなく、わたしは好きかな

みたいなニュアンスの世界まで、伝えられているのは、不思議なくらいすごい。


「伝わっちゃった」経験の功罪

私が、「ああ、ダメだ。この作品、めっちゃ好き!」となったのは、1巻の第一話。

主人公は、「美術」の授業で、絵を自由に描く課題が与えられる。

いつもであれば、流して適当に ー といくところだが、何故か今回はそうするつもりになれない。

どうしても忘れられない「世界の表情」を、なんとか画用紙に落とし込みたい。

完成した作品は、うまくできた部分もある気がするが、自分の頭の中にある完璧な作品にはほど遠い。

これでは、自分が表現したかった世界が、描き切れていない。

掲出された作品を見ながらそう考えていると ー

あ、伝わっちゃった。

てやつだ。

良いのか悪いのか、表現をしていくことから離れ難くなってしまった、人生の始まり。

こういう成功があるから、やめられないんだよな。

うまくいかなくても、あのことを思い出して、また創作に打ち込める

そういうきっかけを、端的に表現した「業」の深いシーン。

良いよなぁ・・・。

「ブルーピリオド」内において、主人公はまだまだ若い。浮沈を繰り返しながら、前に進んでいる。
彼が、これからどうなっていくのか、それはわからない。絵画でご飯を食べていくことを目指すのか、それが成功するのか。

でもひとつだけ明らかなのは、「彼は今後一生、絵を描き続けていくだろう」ということだ。

こういう成功体験というのは、忘れがたい。

かく言う自分も、場面や文脈は違ったが、そのような「伝わっちゃった」経験があって、サラリーマンをしている今も、「作家志望」とか言っちゃってる。

勇気をもらえる気もするし、「呪い」にもなり得るきっかけを、さらっと描いた名シーン。

連載中の漫画を追いかけるのはあまり得意ではないのだが、今後も追っていきたい。

「ブルーピリオド」、よかったらご覧ください。


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