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映画評「透明人間」
上映延期になる映画が多い中、特にNetflixが狂い咲いておりまして、
「愛の不時着」「梨泰院クラス」「呪怨」「日本沈没2020」
「オールド・ガード」「ザ・ファイブ・ブラッズ」・・・
必見作が多すぎる。
気前が良すぎる田舎の定食屋じゃあるまいし、コンテンツ山盛り状態。
どこから手をつければ良いのやら。
それに加えて、上映延期になっていた作品が、徐々に映画館に戻ってきておりまして、それは喜ばしい限りなのだが、時間の使い方には悩まされる。
だが・・・。
行くしかないでしょう。だって、「透明人間」ですよ。
私はこういう、ド直球な映画が好きなのだ。
「インビジブル」を中学一年生で劇場で観て以来の、「透明人間」ファンであるし。
そういう意味で、「インビジブル」てのは罪な映画で、それは本題から逸れるので置いておくとして、映画館に向かったのである。
簡単に言えば・・・めちゃくちゃ面白かったです。
できるだけ、予告も回避して観てほしいですが、一応。
ネタバレなし感想
といいつつ、最大のネタバレは、
「透明人間」
というタイトルである。
このタイトルの付け方が、伝統に則りつつ、逆手にとっているなと感心したのですが、観客に、厭でも「透明人間」ていうタイトルが分かるように設計しているのです。
「透明人間」です、この映画。
「透明人間」が出てきます。
どんなにネタバレを回避しても、ご丁寧に、「The Invisible Man」というタイトルクレジットが出てきます。
絶対に!「透明人間」が出てきますからね!という宣言でもある。
よって・・・。
壁、ドア、部屋の四隅、なんの変哲もないそれらが執拗に映されるのだが、それだけで緊張感が凄まじい。
それは、「透明人間」というタイトルで、観客も巻き込んでいるからだ。
加えて、演出も巧い。
「音」の調整が非常に独特で、ドアのノブをひねる音・フライパンで焼ける食材・テーブルに何かを置く音、それらがめちゃくちゃ強調される。
一方で、ポップコーンの咀嚼音だろうか、いや違う・・・という程度の、細かい、「きしみ」「こすれ」の音が、所々で挿入される。
あと、「音楽」は、音割れしているスピーカーが鳴らすハンス・ジマーサウンドみたいで、「ドゥヴァーン!ズォゥーン!」と、やかまし気味に鳴らしてきたりする。
あと・・・。「透明人間」というワードを聞いて、連想されるのが、「エロ」。
これは、主に「インビジブル」のせいであるが。
これはこれで最高の映画なのだが、「透明人間」映画の決定版というか、ジャンルへの風評被害が凄い、「あけすけな」映画だった。
だが、本作は、大変残念ながら、「エロ」も「えろ」もない。
それでもなお、大変面白い作品です。
ハリウッドとしては低予算の700万ドルで製作されたらしいですが、安っぽいシーンは一切なくて驚き。
まぁ、この場合の低予算ってのは、
夜はコース1.5万円からの高級中華料理屋の、ランチ1000円の坦々麺
みたいなもんで、使用している機材や技術ありきの話ではあるはずだが、それでも感心させられる。
オススメです!
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ネタバレあり感想(核心は避けます)
この映画の面白いところは、前述の通り、
「今から『透明人間』が始めるよー」
という宣言もありながら、観客はいまいちそれを信じられないことだ。
主人公の妄想なのではないか、という疑念が付き纏う。
演出もそのように誘導していくが、特に、主演エリザベス・モスの雰囲気。
意図的に(のはずだが)、
・被害者なのに、被害者「ヅラ」しているように見える
・同情に値する境遇なのに、共感できない
・幸薄そう&好感度低い
という、非常に「危ういバランス」の女性を演じていて、お見事。
おかげで、再三申し上げているように、この映画、
「透明人間」が登場する
のだが、そのとき、ちょっとびっくりしてしまう。
うわ・・・ほんとに「透明人間」出てきたわ・・・とひいてしまうくらいである。
この透明人間が何者なのかとかは置いておいて、造形や動機や犯行方法において、
・どういう原理で透明になるのか
・せっかく透明になったのに、やってることスケール小さすぎない?
・透明人間って、ずっと全裸だし、暑そう寒そう。
・透明になって監視し続けるって、暇なの?眠くないの?
などなど、「透明人間もの」で当然湧いてくる疑問に、さらっとこの映画なりの答えを提示してくるところが、非常にスマート。
あんな透明人間ならなってみたいな、でも「インビジブル」の方が夢はあったかもな・・・。
とにかく、おすすめです。
映画館へGO!
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