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本をマウントの道具にするなよ(、わたし)

世の中に大公開するのがちょっとはばかられる内容となったので、初めて有料設定に挑戦してみます。
購入すると、よい気分にはなれませんが、自分の暗部に気づいてごろんごろんしている私を観察できます。
※文中に出てくる「黒ワンピちゃん」にまつわるエピソードは、ご本人が読んでもピンと来ない程度に脚色しています

親しくしている方が内容にドン引きせず、引き続き親しくしてくださることを祈っています…


***


しばらく前のことだ。
地元の本屋で棚を物色していると、20代前半らしき女の子二人組が隣にやってきた。本を引き出したり仕舞ったりしながら、楽しそうに話している。
いいな、友達と本屋行くの楽しいよね~と思っていた矢先、そのうちの一人がこう言い放った。

「最近この人の本好きなんだよね~、○○ちゃん読んだことある? あ、そうなんだ。結構いろいろ読んでるんだね、えら~い!

うん??

反射的に発言者の方をチラ見する。肩までの髪をカールさせ、黒いワンピースを着た、ごく普通の女の子だ(以下、黒ワンピちゃんと呼ぶ)。ほほう、と思って、悪趣味とは思いつつも二人の会話にこっそり聞き耳を立てる。

黒ワンピちゃんの発言は続く。

「あー、この人の本、人気みたいだけど読まないほうがいいよ、本人××××(特定の思想の蔑称)だから。情弱だとひっかかっちゃうんだろうね」
「この人はまあ、読んどいて損はないんじゃない? 高校生のときめっちゃハマってた、なつかしー」

同行者は穏やかに微笑んで、そうなんだー、と繰り返している。
若さとはげに恐ろしきものよ、と思いながら棚を移動して、それからしばらく自分の買い物に集中していたのだけれど、ああそういえばあの人の新刊が出ていたはず、と思い立って新刊コーナーに行くと、またその二人にかちあってしまった。

目当ての本が平積みされているまん前で、黒ワンピちゃんは結構な大声で言い放つ。

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