なぜ、未亡人は美しく見えるのか? Chapter 3 毎日出会う色の「あ、そうだったのか!」を解明する(4)
オジサンに必ず売れる「オジサン四原色」
「オジサン四原色」とは?
Chapter1の「ピンクヘアーのご婦人の理由」の項で、若者は「黒」が好き、というお話をさせていただきました。
若い年令の方は、赤、青、黄色などさまざまな色を着こなす一方で、ありあまる元気を沈静化、つまり中和するため、心の底で黒を着たくなる傾向ある、ということ説明したものでした。
しかし、こうしてファッションを楽しむ若者も、いざ就職となると、紺色のスーツを「やぼったい」「あーおれも社会人か」とため息しながら着た時代がありました。
それもこれも、会社の人事担当者の方々に気に入られるため。
社会人のセンパイであるオジサンの方々は、本当に紺色を非常に愛しています。
そして紺色と同じくらいな好きなのが白、茶色、そしてグレーです。
もちろん、スーツ中心のウィークデイに、茶色やグレーを前面に押し出すのは、いくら好みとはいえ難しいことです。そのかわりオジサン方は、休日ともなればせっせとグレーや茶色を身に付けます。
「それは昔の人の話で、今の40歳くらいの人は、茶色やグレーなんて…」
という方も、今一度ご覧になってみてください。茶色といってもいろいろです。アイボリーに近い茶色系。少し青みがかったグレー。イエローを取り入れた明るい印象の茶色、などなど。その時代によって味付けは変わりますが、基本のコンセプトはやはり茶と白とグレー、そして紺色なのです。
理想のビジネスマンが好む色!?
実は、これには理由があります。若者が溢れる元気を沈静化させるために黒を着るのと同じように、オジサンには、オジサンなりの事情があのです。
簡単に申し上げますと、オジサンは、紺色っぽい人、白っぽい人、茶色っぽい人、グレーっぽい人になりたいということなのです。つまり、この四色が表現しているイメージのような人になりたいのです。
紺色、白、茶色、グレーを見て、多くの人が連想する感覚的な言葉は以下のようなものです。
紺色
冷静・知性・沈着・冷淡・真実・静寂・自立・探求・清潔・孤独
白
清潔・心理・理知的・新しい・威厳・可能性
茶色
誠実・堅実・努力・包容力・現実的・律義・活力・献身・責任
グレー
大人・落ち着き・安定・中立・保守・迷い・不信
グレーは、「迷い」「不信」、気持ちが定まらない「不安」な気持ちを表現する一方で、逆に「落ち着き」や「中立」といった、「安定」を与えてくれる色でもあるという両面を持った不思議な色です。
この四つの色が示すイメージを並べてみると、まるで理想のビジネスマンではありませんか。
「私はこうなりたい」。まるで宮沢賢治の「雨ニモマケズ」のビジネスマン編のような言葉ばかりが並んでいます。
「冷静」で「誠実」で「知性」に溢れ、「大人」で、「偏らず(中立)」、「清潔」で、しかも「孤独」を恐れず。
まさに理想のビジネスマン像、大人像です。
さらに休日に着る茶色やグレーはどんな顔色にも合い、つまり似合わない、ということがもっとも少ない色でもあります。
どんな方が試着してもそれなりに似合うし、他の色ともぶつからず着合わせも楽です。つまり冒険要素はないにしても無難で、リラックスした休日に、何も考えずに着ていられる、実にありがたい色というわけです。
そんな姿を見て「あー、なんか年寄りくさい!」などと思った奥様から、いくら「少しは明るい色を着たら、気分変わるわよ、若返るし」といったリクエストが出ても、やはり茶色、グレーを着続けるオジサンたち。きちんと理由があったのです。
オジサンとスーツ
ウィークデイの制服ともいえる青(紺色)のスーツと白のシャツ。
この色の組み合わせは、先ほども申し上げた通り、
青は「冷静」「知性」「沈着」「真実」、
白は「清潔」「理知的」「可能性」を表す色。
何か仕事を頼もう、というときも、黄色や赤が持つような「若さ」「情熱」「興奮」といったイメージの人よりも、どちらかといえば「知性」「沈着」「清潔」な人にお願いした方が良いと感じるものです。仕事の内容にもよりますが。
ビジネスマンの皆さんは、こうした「知性的」で「清潔」なイメージを紺色と白でベースに確保し、その上でネクタイなどで自分なりの個性を出す。いってみれば、とても堅実な自己主張を行っているわけです。
ネクタイは個性をアピールします。
黄色のネクタイであれば
「快活」
「躍動」
「若さ」
「スピード」
「軽さ」
「柔らかさ」
黒なら
「重々しさ」
「自信」
「男性的」
「絶対的」
「ニヒル」
ピンクなら
「落ち着き」
「柔らかさ」
「かわいらしさ」
赤なら
「情熱」
「興奮」
「活動的」
「爆発」
「強烈」
どれも決して悪いイメージではないものの、コマーシャルの中で製品片手にガンバルの図でもない限り、やはりビジネスマンが一番に主張したいことではなく、個性の部分を表現するようなキーワードが並びます。
スーツと白いシャツとネクタイ。面積比にすればだいたい8.5対1対0.5という感じでしょうか。この面積の大小も重要です。
逆のパターンを想像してみてください。たとえば(いないとは思いますが)黄色いスーツに白いシャツ、紺色のネクタイ。
これを色の言葉で翻訳すれば、「活発で、やる気満々、ちょっとは冷静で清潔感も持ち合わせています」となるわけですが、やはり普段一緒に仕事したい相手ではないような気もします。
大統領の色作戦
ところでこのネクタイの効果。毎回アメリカの大統領選挙の際などたびたび取り上げられ話題にもなっています。
大統領候補が人前に立つとき、特にテレビにおいて候補者同士が討論を行うといった、ここぞ! というとき、必ず着用する赤いネクタイについて。
これはもちろんスーツによる「冷静で」「知性的」なベースになるイメージに加えて、「情熱」「活動的」なイメージを是が非でも伝えたい、という狙いがあるからです。
ゴア候補とブッシュ候補の討論会では、なんと二人揃って仲良く赤いネクタイで登場したこともありました。芸能人がテレビに出る場合など、同じネクタイで出演することなどもっとも恥ずかしいこと。
相手が自分と同じ赤と知ればさっさと違う色を着用するのが当たり前ですが、相手が同じ色と知って、それでも大統領候補の二人は迷わず赤を着用。それほど赤は効果的な色であったわけです。
ちなみにこの赤いネクタイパワーを初めて活用したのは、かのケネディー大統領。
まだテレビがモノクロで、色の効果が今ほどいわれていなかった時代。ケネディは候補者討論会において赤いネクタイを着用し、見事、現場にいた聴衆の気持ちを掴み、その姿をテレビを通した聴衆にまで強烈な印象で伝えることに成功、強敵ニクソンに対して見事な逆転勝ちを収めました。この赤いネクタイは、いまやアメリカにおいて「パワータイ」などと呼ばれています。
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