見出し画像

ちゃんぽん食べて鼻血吹き出した話

日曜日の真っ昼間、俺はちゃんぽんを食べていた。二日酔い、野菜不足、遊ぶ友達もいない……様々な偶然が重なって日曜日の真っ昼間に独りちゃんぽんをパクつく羽目になったのである。

シャキシャキのみずみずしい野菜に齧りついていると、沸々と沸き上がる生の実感。ラー油入れて、酢を入れて、胡椒をこれでもかと振る。二日酔いで震える手によって、胡椒は良い塩梅に丼に盛られた。
もうちょっとかな、振る。振る。さらに、振る……
ヴぇくしょん!!

調子に乗って胡椒を振り続けた結果、店内に響き渡るくしゃみ。白い丼に飛散する血。血?ち?辺りを見回す。人の丼に血を飛散させる不審者をひっ捕まえてやろうと思ったからだ。

誰もいない。恐る恐る鼻の下を人差し指で撫でる。二日間伸びっぱなしの髭が気持ち悪い。家に帰ったら綺麗さっぱり剃り込んでやる。人差し指を見る。
そこには店内の照明を反射した血。もう一度、辺りを見回しトイレに入る。

完璧に鼻血を止めた俺は、自分の席に戻りちゃんぽんを一口。ちょっとのびてしまっているが、美味しいことには変わりない。

誰にも悟られることなく、自分の鼻血を処理し華麗に食事に戻る俺はさぞ格好のよろしい男だっただろう。

「ごちそうさま」

優雅にちゃんぽんを味わい、伝票をレジに。ほどなくしてやってくる、いかつい店主。鼻血処理の高揚感によって、舞い上がっていた俺はお礼を言った。

「最高でした」

眉間のシワをさらに深くする店主。俺が放った最上級のお礼を無視して捲し立てる。

「君ねぇ大人なんだから鼻血とか出たら店の人に言おうよ。こっちは飲食店なんだからさぁ。あとから入ってきたお客さんに血のあとがテーブルについてる、なんて言われたら信用だだ下がりな訳よ。わかる?」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?