ランチタイム・ラン
静かなランチタイム。騒がしいランチタイム。俺は圧倒的、牛丼。特盛、生卵。汁だくにはしない。卵の白身と相まって雑炊のようになってしまうからだ。
目の前に牛丼がやって来たら、最初に箸で食べる。七味も紅しょうがもいらない。まず、素っ裸の牛丼を味わう。死んだ牛を裸で味わう。二本のチョップスティックで。
二口食べたら次はすべてを乗せる。紅しょうが、七味、卵、すべて我流で乗せる。完璧な秩序の世界。無我夢中で食らう。意識は飛び、時折、「俺は何をしているんだ」という自問自答が駆け巡る。邪念は持ち変えたスプーンに全神経を集中させることで立ち去る。
牛丼マインドフルネス状態となって、店を出る。クラウンが走っていた。
時刻は十二時半。仕事に戻るべく、俺も走る。