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映画「グリーンブック」黒人ピアニストとイタリア系運転手との南部ツアー旅

原題 Green Book
公開年 2018
製作国 アメリカ
監督/制作/脚本 ピーター・ファレリー
キャスト ビゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ、リンダ・カーデリニ他
評価(10段階): ★★★★★★★★☆☆

映画の舞台は1960年代。
実話をベースに、黒人ピアニストと彼に雇われたイタリア系の運転手の、ディープ・サウスと呼ばれる地域での演奏ツアーの日々を描いた作品。

タイトルの「グリーン・ブック」は、1937-67年まで出版されていた、黒人のためのガイドブック。
黒人でも泊まれるホテルやレストラン、美容院などを掲載した本。ニューヨークのハーレムの黒人の郵便局員、グリーンがまとめたことからこの名がついたらしい。

映画のはじめ、家の修理で訪れた黒人が使用したコップをトニーが捨てる場面が印象的だ。
仕事のないトニーはカーネギーホールの上に住む裕福なピアニスト、"ドク"に雇われ、南部へと2ヶ月の旅へ出る。

とにかく色々と考えさせられる作品だった。
(以下ネタバレ含む。)

ドクは一流のピアニストとして裕福な暮らしをしているという点で黒人という括りの中ではマイノリティ。その上更に性的マイノリティでもある。
行く先々の演奏会では自分たちを"教養人"と思いたがる上流階級の人たちからもてはやされるが、一歩外へ出れば単なる黒人でしかない。それでも目一杯、立派な言葉遣いと振る舞いをしなければならない。一体、自分はどこの誰なのか。
その点、特に家族と強い絆で結び付いた中で生きているトニーとは対照的だ。

ドクがもともとはクラシックピアニストを目指していたということも劇中で語られる。
黒人のクラシックピアニストでは成功の見込みがないからと、エンターテイナーとしてのレールが敷かれてゆくこと。ここでも黒人というステレオタイプから抜け出すことは出来ない。
クラシックの世界はその後どれだけ変われているのだろうか、ちょっと考えさせられた。

南部でツアーをやると決めたドクの思い。誰かが何か行動を起こさなければ世の中は変わっていかない。
それでも、どこまで我慢して、どこまで自分の信念を貫くか。その線引きはいつも難しい。
何とか最後までこぎつけたツアーの最後。
レストランで食事を許されず、最後の最後で演奏を蹴ったドク。
その後に入ったバー。普段はスタインウェイしか弾かないドクが、調律もひどいバーのピアノで弾いたのが木枯らしのエチュードだったのがとても印象的だった。

そしてツアーを終えてクリスマスに家に戻ってくる2人。
最初は遠慮していたドクだが、トニーの家族が集まるクリスマスパーティに顔を出す。ドクを暖かくハグで迎える妻のドロレス。
クリスマスにちょっとした奇跡が起こる。このあたりがなんともアメリカ映画らしいなと思った。

何よりも良かったと思ったのが演奏を見守るトニーの表情。トニーの表情がドクの才能の全てを伝えていたように思う。

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