📖十二月の都大路上下ル|八月の御所グラウンド|万城目学|直木賞

・『風が強く吹いている』三浦しをん と比べて非日常版駅伝
・京都で過ごすと過去の偉人が本当にいたのかと実感する気持ちわかる
・『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦 よりオタクみが薄い

京都に1年ほど仮住まいをさせていただいたことがある。散歩をしながら一歩踏みしめるごとに、この足元で何人もの命が絶えて重なっているのだなと思った。

日本史に目が向く。碁盤の目状に街を作ったのは、豊臣秀吉。授業で習ったのだか習っていないのだかすらわからなくなっている。もともと疑ったことなんてないのに、本当に「いた」のだと理解する。

のちに関東へ越して来て、あまりの自転車の乗りづらさに辟易する。秀吉の恩恵を享受した街で生きてきたことにありがたみと恋しさを抱く。

森見登美彦も万城目学も京都で「いた」人々と対話したのだろう。

万城目学のつづる、五山の送り火。京に生きた亡き人を可愛らしく此岸に送り込んでくる。戦死した人々の未練を文字の中で存分に成仏させる。

戦争に翻弄されたプロ野球選手に心ゆくまで草野球をさせ、駅伝の脇で新選組をただただ仲間と走らせる。恨みつらみ嫉み嫉みなどのない未練。可愛らしい未練。生きる本質を教えてくれるような未練。

どうぞ安らかに。またお越しください。

生きる糧