見出し画像

名作Loopwheelerからモノづくりのあり方を再定義してみた

どうも、Yusugeです。
最近パーカーを購入しました。
“Loopwheeler”のどこにでもありそうな黒のパーカーを購入しました。

唯一無二のパーカー

画像3

このパーカーを購入するまでワードローブの中にパーカーは1枚もなかった。
自分のスタイルに合わせられない、着こなす自信がない、子どもっぽく見える等、あらゆるネガティブな要因があったが、そもそもニット全般関心がなかった。
しかし、ファッションに対する価値観や好みが変化し、少しずつニットに関する関心が芽生え始めた。
その時、行き着いたのがニット界のマスターピース“Loopwheeler”である。

普遍的なデザインに落とし込まれていて、大人が着てもジェケットを着てるかのようにドレスライクに見える不思議な感覚であった。
着心地も申し分なく、リブの締め付け感も心地よい。
フルジップで着た際のシルエットも抜群で、とにかくかっこいい。
袖のさりげないネームタグがエモい。

非効率が生み出す高耐久性

さて、ここからLoopwheelerの生産プロセスについて見てみる。
生地は吊り編み機でつくられている。
ビンテージスウェットはこの編み機でつくられている。
つまり、現代の生産プロセスにはフィットしない編み機である。
実際に、現在出回っているシンカー編み機と比べて、生産能力は10分の1しかない。
例えば、裏毛(裏地、裏起毛)を編むのに、1時間に1mという非常にゆっくりしたスピードである。
加えて、メンテナンスも手間がかかる代物である。

画像2

(出典:Loopwheeler Make a Loopwheeler)

この吊り編み機は大変希少なものであり、世界規模で見渡しても和歌山にしかないそうだ。
今なお現役で使用できるような状態でメンテナンスをしていることは称賛に値する。
先述した通り、ゆっくりとしたスピードのため、糸に余計なテンションが掛からず、糸がリラックスした状態で生地として編まれている。
その結果、柔らかな風合いを実現している。
LoopwheelerのHPを拝見したところ、編み機は天井から吊り下げられた状態で設置されており、糸の自重で下がっているため、余計なテンションがかからないそうだ。

画像1

(出典:Loopwheeler Make a Loopwheeler)

吊り編み機はシンカー編み機のように大量に生産することはできないが、消費者にとって上質な状態で長く着用することができるプロダクトを生み出す機械である。
シンカー編み機でつくられたプロダクトは、購入した直後は柔らかく感じても、洗濯していくうちにゴワゴワになってしまう。
実体験はないが、イメージは湧くし、なぜそうなるのか生産プロセスの観点から理解できる。
約3年着用すると、風合いは大きく変わってしまい、当初の着心地は影を潜める。

時代と逆行しているようでトレンドを抑えたモノづくり

“Less is more”という言葉がある。
“より少ないことは、より豊かなこと”を表す言葉だ。
現代のモノづくりの根幹を体現している言葉であると、わたしは思う。

確かに、吊り編み機は生産能力が低くメンテナンスも手間がかかる機械を使うことは商品をつくる上で致命的に見えるかもしれない。
しかし、この機械からつくられたプロダクトは一見どこにでもあるように見えるが、誰にもまねができない製法で、かつ上質な状態で長く着られる唯一無二の存在である。
したがって、プロダクト単体といった表層的な部分を切り取るのではなく、このプロダクトが生み出されるまでの文脈を捉えてあげることで、今までと違う景色が見えるようになると、わたしは感じている。

また、生産能力の高い製法は大量生産・大量消費を生み出していることも忘れてはならない。
未曾有の事態が起こると、価値観が変容し、消費行動が変化する。
2013年に発表されたファッショントレンドの一つノームコア(究極の普通)は、日本人にとって先日10年を迎えた3.11によって生まれた行動変容が一つの要因であると、わたしは考えている。
わたしたちの人生はいつ終わりを迎えるのかわからない。
とすれば、愛着を持てるモノ、本当に欲しいモノ、長く大切に使えるモノを購入したい、使いたいというマインドが醸成されるのは自然の成り行きではないだろうか?

同時に、サステナビリティへによる価値観の変容も今後のモノづくりや消費行動に大きな影響を及ぼすに違いない。
すでに、フランスでは昨年より売れ残り商品の廃棄を禁止する法律が施行された。

わたしはファッションを大好きだからこそ、このような信念を持ちながら意思決定をこれからも行っていきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?