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システム内製化の価値をゼロベースで考える

最近、クライアントよりシステム内製化について検討したいとの相談を受けました。契約・プロジェクトスタートはまだ先になりますが、事前に考えたこと、整理したことを書いていきたいと思います。

DXの文脈ででてくることの多い”システム内製化”について興味のある方、物事の思考方法について興味のある方向けの記事になっています。

今回は記事の内容をスライドにもまとめてます。

経緯

システム開発の支援をしているクライアントからシステム内製化について今後検討するので支援してもらいたいという相談を受けました。

そこで、プロジェクト開始時には価値を出せる状態になっておくべく、知識整理・論点整理をはじめました。

今回の案件についていえば、プロジェクト開始後に、まずはシステム内製化の目的や目標を確認することとなるはずなので、内製化することによる価値について事前に整理しておこうと考えています。

想像するに、DXの文脈の中で経営層より”内製化”検討を指示されて私のところまで相談が来たのかなと推測しますが、目標や目的がないまま検討を進めてもそもそも論に陥る可能性があるので。

アプローチ

システム内製化の価値について考えていくわけですが、以下の進め方で整理していきます。

1. ブレスト(本記事)
2. レポート・書籍の調査
3. ブレスト結果と調査結果の整理

DXの文脈で世の中にレポートが沢山ある中で、わざわざブレスト(ゼロベース)で考える必要があるのかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、レポートなどを先に読んでしまうと、先入観により、大事な視点が抜けてしまったり、論理の飛躍に気づかない場合があるため、一度自分の頭でも考えた上でレポートを読むようにしたいと思います。

今回は1.のブレストの部分のみ書いていきます。レポートや書籍の調査もでき次第記事にしたいと思います。

考える上でのシステム内製化の定義

そもそも、”システム内製化”と言っても定義が曖昧です。内製化のスコープは開発/運用/保守のどの部分か。または、一部の役割(管理/開発)だけを内製化するのかなど、様々な定義をすることができます。

定義を決めておかないと、思考するときに考えがぶれてしまったり、まとめる際に軸が定まらなくなったりするので決めておく必要があります。

ここでは全てを内製化することで考えていきたいと思います。その意図としては、一部を内製化する場合はメリット・デメリットもその一部になると考えられるので、包括的に考えた方が、その結果をプロジェクトで活用しやすいと思うので。

ブレスト実施方法

今回は独りでブレストするのですが、独りで実施するとなると、視点が偏りがちになるため、私の場合以下のような方法をとることが多いです。

独りブレストにおける視点を広げるためのTips
・時間を空けて複数回実施する
・多面的な質問を複数用意したうえで実施する

今回は2番目の方法として、以下の質問事項を用意しました。内製⇔外注、メリット⇔デメリットの4象限で考えるイメージです。

独りブレスト用質問事項
・質問.1 外注のメリット / なぜ今まで外注が好まれたのか
・質問.2 外注の問題は?なぜ外注をやめようとしているのか
・質問.3 内製するメリットは?
・質問.4 内製することによるデメリットは?

ブレスト実施結果

実際の結果について羅列していきます。

質問.1 外注のメリット / なぜ今まで外注が好まれたのか
・社内にシステム開発の体制がないから
・社内にシステム開発の知識・スキルがないから
・システム開発の責任を外部に転嫁できるから(請負契約の場合)
質問.2 外注の問題は?なぜ外注をやめようとしているのか
・システム開発に関するノウハウが溜まらないから(ベンダコントールのノウハウだけが溜まる)
・システムの内部が分からないためベンダに主導権を握られる
・ベンダに主導権を握られる(ベンダロック)になる
・ベンダに主導権を握られることで高コストになりがち(価格交渉力低下)
・ベンダに主導権を握られて実現したいことができないことがある
・常にベンダ交渉が必要となるためビジネス変化にシステムが対応しづらい
・アジャイル開発(準委任契約)が困難
質問.3 内製するメリットは?
・要件や計画を変更しやすい(ベンダ交渉が不要)
・マネージメントコスト(ベンダコントロールへの労力)が不要
・体制や要員・保持するスキルセットもすべて自分たちで構築可能
・採用する技術も自分たちで選択可能
・技術的なナレッジ・ノウハウの蓄積が可能
・システム仕様のすべてを理解可能
・必要に応じて外注化も容易
質問.4 内製することによるデメリットは?
・開発や運用・保守体制の構築・維持が必要
・システム開発に関する責任全てを負う必要あり
・技術者が社内システムしか関与できず、高スキル技術者の育成が困難
・システムが業務時間外も稼働を要求される場合、時間外(シフト、夜勤などの)の運用体制を構築する必要がある

ブレスト実施結果の整理

ブレスト結果を大まかにグルーピングしていきます(KJ法)。作業を始めて気づきましたが、”価値”以外にも、システム内製化の”課題”についての項目もあったため併せて整理しておきます。意図して洗い出したわけではないのですが、これはこれで有益なので。

項目と以下の紐づけはスライドの方を見ていただけたらと思いますが、ここでは結果だけ箇条書きにしておきます。

ブレスト結果のまとめ(グルーピング結果)
・コスト適正化
・システム品質向上
・ビジネスとシステムの整合
・技術ノウハウの蓄積
・ベンダ依存脱却

これは、ブレスト結果を見ながら近い項目をグルーピングしたわけですが(ボトムアップアプローチ)、よく見ると並列感がないためもう少し整理が必要そうです。

具体的に言えば、ベンダ依存脱却というのは手段(how)であって、目的(What)ではないです。技術ノウハウの蓄積も同様です。

そこでロジックの構造を以下の様に整理しました。

内製化の価値
ベンダ依存脱却
→ 自社でのコントロールを取り戻す
  → ビジネスとシステムの整合
  → コスト適正化
  → システム品質向上
技術ノウハウ蓄積
→ 技術活用能力の向上

システム内製化の課題については以下が抽出できました。

システム内製化の課題
・体制構築・維持
・リスク管理

最後に文章で分かりやすく書き下したいと思います。

内製化の価値
・ベンダ依存から脱却できることにより以下の効果が期待できる
 - ビジネスのスピード、変化に合わせた機能開発
 - 開発・運用・保守コストの適正化
 - システム品質の把握が容易となることによる品質向上
・また、技術に関するナレッジ・ノウハウを自社に蓄積しやすく、技術活用能力の向上が期待できる
内製化の課題
・開発・運用・保守のための、体制の構築・維持が必要
・開発に係るリスクを負うことになることからリスク管理が必要

まとめ

システム内製化の価値を考えることを題材に、思考方法と思考した結果を紹介しました。

思考方法として、独りブレストを実施しましたが、そのコツとしては視点が偏らないような工夫(時間を空ける、質問を複数用意する)のが良いことを紹介しました。

思考結果としては、内製化の価値はベンダ依存脱却とナレッジ・ノウハウの蓄積による様々な効果を洗い出せました。

次は世の中のレポートや書籍を調査していきたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございます!




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