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見事な伏線回収〈あなたが誰かを殺した〉

ミステリー小説を読むとき、謎を解く登場人物と一緒になって推理をする場合と、ただ読者として物語の行末を見守る場合とがあります。

一緒になって推理をするミステリー小説というのは、事件の状況やそれまでに挙がった謎が丁寧に記されている場合が多いような気がします。

例えばそう…物語に出てくる謎を解き明かす人物が、所々で事件の状況や、注目すべき謎を整理してくれる、みたいな。


言うまでもなく、私が今回紹介したい「あなたが誰かを殺した」と言う作品が、まさにソレでした。



⚠️ここから先は、若干のネタバレを含む可能性があります。

〈あらすじ〉

閑静な別荘地で起きた連続殺人事件。
愛する家族が奪われたのは偶然か、必然か。
残された人々は真相を知るため「検証会」に集う。
そこに現れたのは、長期休暇中の刑事・加賀恭一郎。
――私たちを待ち受けていたのは、想像もしない運命だった。

amazonより


加賀恭一郎のキャラクター性には惹かれるものがあり、心に秘めたものを全て話してしまいたくなるような包容力と、全てを見透かしているような余裕と鋭さを持ち合わせています。

そんな加賀恭一郎が事件の詳細や注目するべき謎を丁寧に取り上げ、わかりやすくまとめてくださるシーンがいくつかあるおかげで、読者の頭がこんがらがってしまうことがないわけです。


本作は、読者が一緒になって謎解きができるような材料がたくさん散りばめられています。読者にとって分かりやすく引っかかる点が多いということです。
また、有り得ない設定や非科学的なこともなく、謎解きはもちろんのこと、物語もしっかり楽しめたという印象です。

しかし、そうも簡単に事件が解決しないのが東野圭吾さんの作品。
実は犯人は序盤で犯行を自供し、逮捕されます。これで事件は解決…と思いきや、不可解な点が多いのです。そこで「検証会」を開催するに至り、犯人がわかっているのに犯人がまるでわからないという展開になっていきます。


物語としては、スピーディに進んでいくのですが、読者が置いてけぼりになることはありません。登場人物が多く、謎も多い複雑な設定でありながら、とても読みやすいものでした。

また、最後の1ページまで目が離せません。というのも、作中に散りばめられた伏線が物語の全てを使って回収されていくからです。
終盤では、そこに居合わせた人物それぞれの新たな人生の幕開けを思わせ、雨あがりの独特の匂いを纏ったような、じめじめした中に少しの爽やかさが入り交じったような終わりを迎えます。が、その時点でまだ全ての伏線が回収されていないことに気づく読者も多いはずです。

そうして全ての伏線が見事に回収され、読後感は非常にスッキリで、満足感も半端ではないです。
記憶をリセットしてもう一度読むなら、一言一句見逃せないな、というのは読後だからこその感想です。


私はこんな本格的なミステリー小説が好きだ!と再確認させられました。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
読んだ本の感想や、オリジナル小説を書いていきますので、今後も読んでいただければ幸いです。
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それではまた。

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