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青いノート 1994年11月23日

今の人間関係は最悪だと思う。
Sは他人に厳しすぎるような気がする。
確かに彼女もしっかりした人間だ。
彼女は決して他人に心をゆるしたりしない。
人間は、他人に心を許すと自然とわがままになったりルーズになったりする。深く付き合うとそれを許せたりするのだ。しかし彼女の場合は決して許せないのだ。ある意味ではしっかりしていると言えるがある意味では他人に入り込む隙を与えない孤立した人間とも言える。
だから少し彼女が怖いと思った。
自分のこともどこかで、誰かと批判しているのだろうかと思うと嫌な気持ちになる。全てをさらけ出せる人というのはなかなか居なくても、ある程度のことは言える人がいればとても良いと思うのだ。


最初のページには、こんなことが書いてあった。当時21歳。おそらく専門学校時代のクラスメートの女の子のことについて書いていると思われる。Sと言う女の子はもの凄い美人で、美術大学を目指していたが、受験に失敗し結局私と同じデザイン系の専門学校へ入学した。私の通った専門学校は特に受験があるわけではないので、彼女のような志高い学生と、私みたいにふらっと入ってきた学生が同じクラスにいるのだから温度差を感じても不思議ではない。

その当時の私にとっては周りの人間関係が全てだった。親とは精神的に距離を置いているが、学生だったので、まだまだ中身は子供。私は特に奥手で臆病な性格だったので他の同年代に比べても世間知らずで子供っぽかったと思う。
内気というよりは、おっとりとした性格で周りからは隙があるように見えたためか、友達は自分から頑張らずとも勝手に向こうから寄ってきてすぐに出来るタイプだった。

話をSに戻そう。
彼女は湘南にある大きなお家に住んでいて絵に描いたようなお嬢様だった。美人で成績も良かったけど、どこか冷たい感じの雰囲気の子だった。この日記を書いたとき、確かいつもよく一緒にいる子のことについて、「あの子は、繊細でか弱く見えるけど実際はそんなことはない。本当は、すごく強いくせに。」というような事を言っていたのを思い出した。「あの子」というのは、周りからの印象は女の子っぽくて、天然な性格で傷ついてすぐ泣くような、いわゆる男性から見たら守ってあげたいタイプだった。
なので、Sがいきなりそんな事を言い出したのでびっくりしたのだと思う。
今考えてみれば、実際に「あの子」は彼女のいうような性格の女の子だったのかもしれない。そう考えると、なかなかあざといな。でも、当時の私は世間知らずだったので、そんな事想像すらできなかった。まぁ、私はそういう感じの子だった。

Sは、私がメインでつるんでいたグループとは別の面々とよく遊んでいた。専門学校時代は一つ上の先輩と付き合ってたけど、結局は別れて、卒業後に大手企業に勤めている男性と結婚したんだった。
卒業後、特に交流があったわけではなかったけど、なぜか私の仲間グループの中で私が一人だけ彼女の結婚式の2次会に呼ばれた。あれってどういうわけだったんだろうか。私とグループの友達との違いといえば、私だけがデザイン関係の会社に就職して勤めていたってことくらいかな。他の友達2人はフリーターで全く関係ない仕事をしていた。2次会当日、めちゃめちゃ仲良かったわけではないクラスメートに会ったけど、学生時代チャラチャラしていた男の子達も、社会人を頑張っているようで新鮮だった。でも結局Sを含めて彼らには、その日以来会っていない。今はみんなどうしているんだろうか。



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