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虎に翼 第74回 解釈と演出と印象(照明の当て方)

「腹立たしいが君は有能だ。そして俺たちに好かれてしまっている、それが問題なんだ。キャリアを重ね、俺たちという後ろ楯がある君は、もう昔の弱いきみじゃない。いまの君の『はて?』は非常に重い。まわりを動かす力がある」

桂場等一郎(第74回)

第15週「女房は山の神百石の位?」
このことわざは、女房(家庭における女)は何物にも代えがたい大切なものである、の意であるとのこと。してみると、まずは猪爪家で花江が寅子に「トラちゃんは何もわかっていない。何も見えていない」と悲鳴というよりも慟哭するように叫んだ事件が今週のメインテーマ。家を守る母親役をつとめてきた花江の思いは「山の神百石の位」ほどに重い。そう見立てているようだ。

家庭裁判所においては、女性こそ「愛情深さという、女性ならではの特性を遺憾なく発揮できる」という山下(最高裁長官)の発言に対し、久方ぶりに鮮やかな「はて?」で、男女関係なく、ふさわしい能力の持ち主が腕を振るうべきと反論した寅子。これは、百石の位などと褒めたたえて、ガラス張りのケースに女を押し込めるのはいかがなものか、という意味にもとれる。毎週のタイトルにいつも「?」とついている、クエスチョンマークが跳ねている部分。

それにしても、アメリカ帰りの寅子が着ていた肌なじみのいいサーモンオレンジ色のワンピース+ボレロのお洋服、可愛らしかったなあ。首元を見せる襟はオフタートルでスカートは少しひらひらフレアの動きが綺麗。50年代のアメリカで流行りの形だったのか。半円サーキュラーっぽくて、それでいて膝下丈、わりと短め。ベージュのボレロはワンピースと同系色の花の柄。プリントじゃなく刺繍に見える。バッグも靴も揃えて寅子がアメリカ滞在中に自分で買ったんだろうか。

竹中記者の密着取材で、子供たちが新しい服を着て家族写真を撮ってもらったときも、みんながどういう服を着ているかにも目が行く。寅子はさすがに上記のワンピースドレスではなく、赤いチェックのツイードジャケットを組みあわせてのスーツ……仕事着かな。花江は、はるさんの形見のピンク小花柄の着物。

みんなが身につけた衣装で、新旧の価値観が並列でめまぐるしく移りかわっている時代を代弁させる。そういう演出にも、見えなくはない。

少なくとも、今までのように料理や室内調度をふんだんに見せるというより、カメラフレーム内の人物全身や、それぞれの服装や小道具(剃刀を寅子のハンカチにくるんできた福田瞳とか!)をあっさりと映すのが今週の流れだったような。猪爪家での食事や、多岐川宅での壮行会でも、晩餐を囲む全員を映すのがメインで、料理がアップで映されることはあまりなかった……。

ここまで書いたところで、いったん「下書き保存」したのは、考えがまとまらなくなった気がしたからです。

が日付が変わったところで、予約してあった第15週のシナリオが配信されたので、のめり込むようにして読み始めたら、あのアメリカンスタイルのワンピースについて、ちゃんと寅子自身が多岐川らに説明しているではありませんか。

久遠「おかえり、サディ。とっても素敵なワンピースだね」
寅子「仲良くなったケイト判事から餞別にと一式頂いたんです! ほらこれが正解の反応ですよ、多岐川さん」

虎に翼 第15週シナリオ

自分へのお土産として新調したのに、花江へは英語の「使い勝手がよくなさそうな料理本」かよ、という寅子の身勝手なお土産チョイスへの非難は、この説明があれば、当たりのキツさも変わってきたんでしょうかね。

#テレビドラマ感想文

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