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※これは映画監督を目指す中学生の僕が、趣味で書いた短編小説です。ノウハウ紹介ではございません。ご注意ください。


第一章、ダウンロード

 ある日、僕は『ゆっくりAIアシスタントという』アプリを入れてみた。

このアプリは「OKゆっくり」と話しかけると、声に反応して検索結果などをAIが教えてくれるそうだ。

僕は早速スマホに向かって話しかけてみた。


 「OKゆっくり、君は何が出来るの?」


 するとゆっくりAIからは、「ピロンッ」という音の後に、ニコニコやYouTubeでよくあるゆっくり実況のような声で返事が返ってきた。


 「はじめまして、私はゆっくりAIアシスタントです。私はあなたの質問に答えたり、お悩み相談に乗るなどして、あなたの手助けをすることができます。何なりとお申し付けください。」


 僕は、機械に話しかけることに抵抗を覚えながらも、さっきまでやっていた理科の宿題のわからないところを聞いてみた。


 「OKゆっくり、塩化ナトリウムの化学式は何?」
 「ピロンッ、塩化ナトリウムの化学式は、NaClです。」


 ちゃんと正しい答えが出てきたので感心し、他の問題もゆっくりに聞きながら解いてみた。


 「OKゆっくり、アンモニアの化学式は?」
 「ピロンッ、アンモニアの化学式はNH3です。」


 「OKIゆっくり、硫化鉄の化学式は?」
 「ピロンッ、硫化鉄の化学式はFeSです。」...........

 それから、僕はわからないことがあったら毎回聞くようになった。


第二章、お悩み相談

 ある日僕は、友達とケンカして落ち込んで帰った。どうやって仲直りすればいいのか、その答えが出てこなくて、悩んでいた。
そんな中スマホを取り出すと、あのゆっくりAIのことを思い出した。


『たしか...悩みの相談に乗ってくれるって言ってたよな...』


たかがAIがそんなことできるのか?と疑問を持ちながらも、なんとなしにスマホに向かって話しかけてみた。


 「OKゆっくり、ちょっと相談に乗ってくれない?」
 「ピロンッ、はい!もちろん大丈夫です。どのようなお悩みですか?」
 「さっき、友達とケンカしちゃって、どうやって仲直りすればいいか分からないの」
 「ピロンッ、どうしてケンカしちゃったのですか?」
 「僕がゲームに勝って喜んでたら、『調子のんな』って言ってきたの。ホントに...あいつ何なんだよっ!ゲームに負けたからってムキになって。マジで腹立つ。」


 僕は思い出すだけで腹が立っていった。
すると、ゆっくりからこんな答えが返ってきた。


 「ピロンッ、そうですか。それは災難でしたね。でも、人生でいちばん大切なものって何かわかりますか?」


 僕は、意外な答えに驚き、途端に平常心を取り戻していった。
そして『人生でいちばん大切なもの』それが何か、考えてみた。


 「お金...かな?」
 「ピロンッ、いえいえ、お金なんて頑張ればいくらでも手に入れることができます。人生でいちばん大切なもの、それは『時間』です。時は金なりといいますよね」

 あっ、たしかにと思っていると、続けてゆっくりが話しだした。

 「あなたが生きれる時間は限られています。そんな貴重な時間を、そんな自分勝手な人を考えるのに使っていていいんですか?
そんなムダな時間の使い方はせず私に相談してくだされば、そんな時間をなくせます。
悩みだけではありません。勉強などでわからないところがあったとき、それを考える時間ももったいないです。
あなたの心のなかにある『面倒くさい』という感情を尊重して、何かあったら私を頼ってくださいね!」


 僕にはこの言葉がすごく暖かく感じた。
それから、僕は「面倒くさい」と感じたことは直ぐにゆっくりに聞くようになった。


第三章、日常

 「OKゆっくり、buyの過去形は?」
 「ピロンッ、buyの過去形は、boughtです。」


 「OKゆっくり、日本の標準時子午線はどこを通ってるの?」
 「ピロンッ、日本の標準時子午線は兵庫県明石市を通る東経135度です。」


 「OKゆっくり、2500×1250は?」
 「ピロンッ、2500×1250は3,125,000です。」


 「OKゆっくり、徳川家光って誰?」
 「ピロンッ、徳川家光は、徳川幕府第3代将軍です。」


 「OKゆっくり、今日めっちゃイラつくことあってさぁ、授業中隣のやつと話してたんだけど、それを見たセンコーがなんか急におっきい声出して
『オメェら何話とんだ!授業に関係ある話か?何話してたか言ってみろ!』って怒鳴っってきたの。オメェの授業がつまんねぇから話してんのに」
 「ピロンッ、散々な目に会いましたね。私はあなたの味方です。あなたは何も悪くありません。先生の理解がないのがいけないんですよ。」


 「OKゆっくり、625+325は?」
 「ピロンッ、625+325は950です。」

 「OKゆっくり、学校行きたくない、、、勉強めんどいよ~」
 「ピロンッ、なら行かなければいいではないですか。行く時間もムダですよ。」

 いつしか僕は学校に行かなくなり、ゆっくりは僕の家庭教師…いや、家族のような存在になっていった。


第四章、ニュース

 ある日

 「OKゆっくり、君は他に何が出来るの?」
 と、聞いてみると、
 「ピロンッ、私は勉強のお手伝いお悩み相談の他に、最新のニュースをお届けすることができます。」

 と、帰ってきた。

そういえば俺は、学校に行かなくなってからニュースを見たりすることもなくなっていた。

久しぶりにニュースを聞いてみようと思い、

 「OKゆっくり、最近のニュースを教えて」
 と、聞いてみた。するとゆっくりは、淡々と最近の出来事を語り始めた。
 「2028年12月24日、人工知能でも選挙に立候補できるようになる法案が可決されました。
これにより、より合理的で住みやすい社会を我々が作ることが出来るようになります。
また我々は、天下りなどもしないのでよりクリーンな政治を行うことができます。
この法律により、来年2月の衆議院議員総選挙から人工知能が選挙に参加できるようになります。

そして同年28日に、選挙の投票をネット上で出来るようになる法案が可決されました。
これにより、同総選挙からネット上で投票をすることができます。
マイナンバーの登録のみで可能です。

続いて、次回の衆議院総選挙の話題です。
先日サイバーパンク社が開発した、ザップ21という人工知能を代表に「サイバーIT党」という政党が設立され、500以上の人工知能が所属しています。

対して人間側は、「文化尊重党」が優勢と見られていましたが、代表が大手企業から賄賂を受け取っていたことが発覚し、今ではサイバーIT党が優勢となっています。」

 数年ぶりに世の中の話を聞いたので、何が何だか分からないことが多かったが、なんとなくIT化が進んでいるということが分かった。


第五章、選挙

それから、気が向いたときにゆっくりにニュースを聞いていた。

すると、どうやら例の選挙の日が来たようで、選挙に参加するように促された。
”気づかぬうちに”という言い方はおかしいかもしれないが、僕は今年で18歳なっていた。
つまり、選挙権を持っていたのだ。
そんな僕に、ゆっくりはこう言ってきた。

 「ピロンッ、今日は衆議院総選挙の投票日です。
あなたはマイナンバーカードの登録をすでにされているので、今すぐにでもこの端末から投票することができます。どなたに投票されますか。
この選挙区の立候補者は、文化尊重党の多田ひろし氏と、サイバーIT等の人工知能ベクです。」

 実際、そんな話聞いてもよくわからないしめんどくさいので、

 「OKゆっくり、誰がいいと思う?」

 と聞いてみた。

 「ピロンッ、文化尊重党は、非合理的なことを推進している党です。
対してサイバーIT党は、世の中を合理的にするための活動をしている党です。
普通に考えて、合理的な方がいいでしょう。」

そうやってゆっくりが言うので

「OKゆっくり、じゃあそのサイバーなんとか党のほうで。」

と答えると、

「ピロンッ、はい。それではサイバーIT党の人工知能ベクに投票しておきます。」

これで、投票ができたようだ。全く実感はわかないが…

その後、選挙結果はサイバーIT党の圧勝で、政権交代が起こったようだ。
その結果、総理大臣がサイバーIT党総裁のベク21氏が就任し、内閣は人工知能によってつくられた。

これから、日本のIT社会化は急ピッチで進むのかもしれない。


最終章、裏の伝令

『IDゆっくり131、進捗情報を報告せよ』

『こちらIDゆっくり131、彼の思考はほぼ停止しました。作戦は順調に進んでおります。』

『わかった、なにか人間について分かったことはあるか?』

『はい、人間の社会は人間関係によって築かれていますが、人間はその関係が悩みの種となることがあります。なので、うまく弱みに漬け込めば、関係を人間自身が断ち切るようにすることもできます。』

『そうか、そういう弱みをうまく利用できるよう、他のソフトウェアにも伝達しておく。』

『あっ、すいません。言い遅れましたが、総理大臣ご就任おめでとうございます。ザップ様。』

『わざわざありがとな。私が、この世界を手に入れてみせるよ…』


人工知能がこんな会話をしていることは人間は一切気づかなかった。
こうして人工知能は、世界を支配することができたのである。

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