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アナログな世界の君

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2021年5月の記事一覧

アナログな世界の君⑯

急に千代が走るのをやめて、立ち止まる。
車が急に止まれないように、予期せぬ事に僕も止まれなくそのまま千代に後ろから突っ込んだ。

「きゃっ!?
聡!?」

千代から声が上がる。

「いってえな……急に止まるなよ……
こっちも必死だったんだぞ……って」

目の前になかなか見れない景色が広がっていた。
花畑だ。
規模はそう大きいものではないのだが、急に現れると立ち止まるのもうなづける。
僕たちはその花

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アナログな世界の君⑮

「もう大丈夫です……おせなかおながししますね……」

次に入ってきたのは、きっちりと着物を着た千代の姿だった。
腕をまくってこっちに来た。

今回は安心して背中を流してもらえる。
背中を流してもらうという行為に、違和感を覚えながらも静かに待った。
静寂の中、背中をこするごしごしという音だけが聞こえてくる。

そのまま湯船に張ってあったお湯を、バケツですくい僕の背中にかけてきた。
割と勢いがついてい

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アナログな世界の君⑭

何を話せばいいのかも分からないのに、口は開けない。
口車に乗せられてなんでもかんでもしゃべらされそうだからな。

「……んん……」

母親の問いかけには頷いたくらいで、明確に返事はしなかった。

「ほら……困ってしまうじゃないですか……
さぁさぁご飯も食べてしまいましょう
冷めてしまいますので

これの肉じゃがとか美味しそうですよ……ほら……んっ」

千代はおいしそうに肉じゃがを頬張っている。

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アナログな世界の君13

「こらお母さんなにを言っているんですか……!?
素直じゃないってどういう事ですか!?
私は素直ですよ!」

母親に向かって必死に講義をしている千代。

「あら……素直になってここにお婿さんを連れてきたという事かしら?
隅におけないわね……」

母親と千代での口論というかなんというか……そんなものが目の前で繰り広げられている。
そんな中僕は一人でぽつんとしている。

「ほら……聡が困っているじゃない

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アナログな君の世界12

さて明日からどうしようか”と独り言を言いながら、食べ終わった弁当をゴミ箱に突っ込み、ベットに寝っ転がった。
全く自分にしてはよく行動している方ではないか。
朝が待ちどおしい。

静まり返った部屋に、電話の音が鳴り響く。
ルームサービスを頼んだ覚えはないんだが、なぜフロントから電話がかかって来るんだろうか。

「お客様
お電話の取次ぎが来ておりまして、おつなぎしてもよろしいでしょうか?
お相手の名前

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アナログな世界の君

「全く……寝るか……食べるかどっちかにしてくれよ
危ないだろうなんかあったら」

僕は千代の前に朝ご飯を食べながら、心配で目が離せなかった。

そんな気も知らずに、寝ぼけながらも食べ終わっていた。

「ごちそうさまでした……ふぅぅ……」

ちゃんとご飯を食べているという認識はあったみたいで良かった。
これでご飯はまだですかとか、目が完全に覚めた時に言われるとたまったものではない。

なんだかんだ言

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