見出し画像

家の音楽環境を整える(4)吉祥寺のあばれる君

冬の井の頭公園

マツコの知らない世界の放送から数日後、飯田さんとカメラを持って井の頭公園を散歩した。

「マツコさんは本当にすばらしかったのよ~」などと、撮影秘話もうかがう。マツコさんはやはりクラシック音楽に精通しており、楽章や楽器を指定して試聴したりもしたのだそう。

水仙が咲いていました

「うちもオーディオを見なおしたくて、実際にオーディオを見てみたい」と言うと、飯田さんはうちのオーディオ事情をざっと聞きとり、「プリメインアンプとCDプレイヤーを変えればいいんじゃない?」とその足でヨドバシカメラに行くことになった。

ヨドバシカメラのオーディオ売り場へ


ヨドバシカメラの3階に上がり奥に進むと、スピーカーとアンプとプレイヤーがたくさん並んでいた。

たくさん並んでいます

でももう・・何がなんやら・・
説明してくれても実際に聴かないと分からないし・・
どうやらスピーカーとアンプを選んで視聴できるようなことを書いてあるが店員さんも見当たらない。

あばれる君登場

よく分からぬまま、値段とデザインだけ見て、飯田さんのおすすめ商品をネットで調べようか・・と売り場を離れようとしたその時、プリメインアンプ群の正面にスクッと一人の男性が仁王立ちになった。そして「パーフェクトデイズ」の役所広司のように、無駄のない動きでやおらメンテナンスを始めた。店員さんらしい。坊主頭と素早い動きが、あばれる君に似ている。お名前を失念したので、以降あばれる君と呼ばせていただこう。

「あの人に、聞いてみよっか・・」恐る恐る話しかけた。

えっと、CDとレコードと配信を聴きたくて、聴くのはクラシックのピアノが中心で、スピーカーは変える気はありません。古いCDプレイヤーは必ず買い替えしたくて、プリメインアンプは必要があれば変えたいです。

立て板に水、といった感じであばれる君は説明してくれるが、ほんとに日本語?というレベルで入ってこない。しかしあばれる君のオーディオの知識と情熱は伝わってくる。オタク気質を感じさせる口調に、「この人は適切な場所で働いている」と感じた。

聴きくらべ

「あの、よく分からないので比較してみたいんですが・・」私が言い終わらないうちにあばれる君は、目にも止まらぬ速さでフロアの端に移動した。そしてボタンを操作したとたん、流れていた音楽の音質が恐ろしく良くなった。

このボタンでアンプとプレイヤーを選べるしくみ

「おおおお!何?今、何したの??」びっくりする私に、「スピーカーを変えたんだよ、こっちの高いのに・・」と飯田さんが答える。メーカー名は忘れたが160万円という値段だけは覚えている。あばれる君がマスクの下でニヤリとした気がした。

その後もあばれる君はいくつものプレイヤーとアンプの組み合わせを試させてくれた。

分かったのは、値段に応じて当然、音質は変わる。が、ある一定程度を超えると値段ほどの音質の差がなさそう、ということだった。ならば値段と質のバランスの良いラインを見極めたい。

「予算はどのくらいで考えてるの?」飯田さんが助け舟を出してくれた。「30万円くらいです」まったくの嘘である。この売り場にふさわしい予算をとっさに口にしただけだ。

この予算でおすすめの組み合わせを聞くと、あばれる君は無言で右手でアンプを、左手でプレイヤーを指した。ラッパーみたいでかっこいい。

この二つで30万円くらいだった。

もう少し安価でおすすめの組み合わせは、

こちらもとてもよい組み合わせとのこと。デザインもすっきりしている。
こちらで計23万円程度だったかな。

あばれる君の推薦は、非常に妥当なものに思えた。
帰ってからゆっくり検討しよう。飯田さんがYOUTUBEがいいよ、と教えてくれた。

もう一度考える

飯田さんと分かれた帰り道、私は我に返った。今日アンプとプレイヤーを試したのは160万円のスピーカー。うちのスピーカーにつないだら、どうなんだろう。

うちのリビングはこの空間よりもずっと狭く、またマンションの壁も薄いため、アンプのボリュームを10度以上傾けたことがない。そもそも予算もはったりだった。

そういった家の事情を抜きにして、環境の整った空間だけで比較し、高額な商品の購入を判断するのはかなりの難題のように思えた。

「マツコの知らない世界」で出て来たParadigm PERSONA 7Fの音を聴いた時も思ったのだが、ハイスペックのオーディオを必要とする人たちは、いわばオーディオそのものを愛していて、その進化を楽しんでいるのだと思う。でも、そういうこととは違うような気がする。

私の生活での音楽は、正面から向き合うというよりも、日常生活の傍らで、ここちよく鳴ってくれれば良い。あまりにいい音は、注意をひきすぎて時に邪魔にすら感じる可能性がある。

なんとなく部屋の空気が沈んでいる時には明るい音楽を、落ち着かない日には静かな音楽を、部屋の空気の色を塗り替えるように音を使えるといい。でもたまに、自分の好きなピアニストの音源を聴く時には、なるべく多く音質を拾って欲しい。

手元のONTOMO MOOK「オーディオのある暮らし」の表紙に目を落とす。オーディオが中心なのではなくて、暮らしが主役、ということを言いたかったネーミングなのだな・・と思った。

私がオーディオに求めるのは、暮らしの風景を音楽で作っていくようなこと・・

そこまで考えた時、ふとうちにあるスピーカーの名前を思い出した。

scenery(風景)・・

https://store.listude.jp/products/scenery-standard

10年以上前にカンだけで、一切の比較検討なしに買ったスピーカーだ。今よりももっと安価だった。

今日考えたようなことを考えて買ったわけではなかったが、知らず知らずのうちにコンセプトに共感していたのだろう。

青い鳥はすぐそばに・・。

そういうわけで、次回はListudeさんへ。

おまけ

どうでもいいですが、昔タモリ倶楽部で見た、オーディオの音質を良くするために家のそばに電柱を立てた人の話。