柚子と蜜柑

「ひとうたの茶席」というサイトを運営しています。音楽を聴くことや、文章を書くことも好き…

柚子と蜜柑

「ひとうたの茶席」というサイトを運営しています。音楽を聴くことや、文章を書くことも好きです。 https://www.hitouta.com/

マガジン

  • 2023ピティナ特級

    • 93本

    2023年ピティナ・ピアノコンペティション特級に関するnote記事です。公式レポーター6名の方の記事も合わせてご紹介しています。演奏、文章で特級を丸ごとお楽しみください。

  • 茶会記録

    「柚子と蜜柑」がお茶会に参加した記録をまとめたものです。

  • 2024年春旅

    2024年の閏日からの2泊3日の旅の記録です

  • 家の音楽環境を整える

    家のオーディオ環境を改善しよう!と一念発起して、オーディオを探す日々を書いた日記です

  • 2022ピティナ特級

    • 157本

    2022年ピティナ・ピアノコンペティション特級に関するnote記事です。公式レポーター6名の方の記事も合わせてご紹介しています。演奏、文章で特級を丸ごとお楽しみください。

最近の記事

夏休み

散歩をしていたら、小学生2年生くらいの男女の帰り道に遭遇した。 男の子はスポーツメーカーの黒いリュックとシャツ、女の子はピンクのリュックにリボンの着いたキャップ。動きやすいのにフェミニンでかわいくしていて、お母さんのセンスが想像できる。 同じ方向に向かっていたので、なんとなく後ろを着いて歩いたら、男の子はそれはそれは振る舞いがかっこいいのだった。多くの大人がそのまま渡ってしまう押しボタン式横断歩道はもちろん正しく待ち、渡る際には女の子の手を自然に取ろうとした。 狭い道に大

    • 家の音楽環境を整える(10)DENONのRCD-N12を試す

      しみじみ続くオーディオ探索。機会をいただいて、Denonさんに伺ってネットワークCDレシーバー「RCD-N12」を試させていただきました。飯田有抄さんが楽しい記事にしてくださっています。 うちにはスピーカーとアンプがあるので購入には至りませんでしたが、初めてオーディオを買いたい人や、仕事場や別宅に導入したい、という人には記事の「RCD-N12」、すごくおすすめです。デザインもスッキリと可愛いし、聴きたい媒体間の切り替えがスムーズでストレスがありません。 機械のことはもう良

      • 挫折を乗り越える唯一の方法は、「続けること~映画『言えない秘密』河合勇人監督インタビュー~

        本日公開の映画「言えない秘密」、河合勇人監督のインタビューをさせていただきました。 京本大我さんと古川琴音さんがピアノを学ぶ音大生を演じる本作。主人公の留学中の挫折に焦点を当てたご質問に対する「才能はないと分かっても止められない、好きだという気持ちだけでやってるもの」という言葉が印象的でした。 今年も夏のコンクールが始まっています。自身の才能のありどころや将来への不安を振り払うようにピアノに向かう若者たちを、応援したいと思います。 同時に、「そんな時代はもう終わったから

        • 茶箱を作ろう(2)古裂と籠

          茶箱の道具を何も入手しないまま、まず仕覆づくりを習いたいと考えた。そこで思い浮かんだのは、昨年の恵観山荘のお茶会で同席したご婦人だった。白髪にワンピースなのに、少女のような佇まいとお声。ワンピースの品物の良さと色合わせの妙、ご本人との調和のセンスだけで、布を扱う人だと分かる。聞けばその日のご亭主の仕覆の先生だと言う。 この日のご亭主は、私に様々なことを教えてくれるお茶人だ。視聴者はおろか、やっている本人たちも忘れかけている、菓子ましチャンネルのセンターを張っている。ここでは

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        • ピティナ特級2022公式レポーター
          26本

        記事

          茶箱を作ろう(1)

          非現実的なまでに美しかった、伊藤 穰一さんの野点の茶会で私の心を奪ったのは、茶箱だった。中でも7人の工芸家の技が結集した「掌」の名を冠するひと箱は、主に金銭的理由から抑え込んできた茶箱熱を再燃させた。 道具収集にはあまり熱心でない私も、かねてから茶箱には憧れがあり、ふくいひろこさんや堀内明美さんの茶箱の本を眺めてはため息をつき、京都ではうるわし屋さんやちんぎれやさんを覗いては夢を膨らませてきた。私は布が好きなのだ。 そんな日々を過ごしながらも、私がなかなか茶箱を入手できな

          茶箱を作ろう(1)

          茶友とアルゲリッチ

          長年アルゲリッチのファンだというお茶の友人に連れられて、すみだトリフォニーホールへ。 叶恭子さんのようにグッドルッキングガイにお供をさせて鑑賞する予定がキャンセルになったそうで、無害そうな私ともう一人の茶友が同行の栄誉に預かった。ガイズには袖にされたのだろう。 そんな日もあるわ。そういう時のために私たちはいるのよ。 憧れのピアニストに会える喜びに華やぎ、彼女と共にあったような人生を振り返りつつ会場に向かう友人は、「希望」を体現する見本のようだった。 自分ではさすがに買

          茶友とアルゲリッチ

          LFJ:エル=バシャさんマスタークラス

          昨日は、ラ・フォル・ジュルネでのエル=バシャさんのマスタークラスへ。生徒は私が何度かレポートさせて頂いた、昨年のPTNA特級グランプリ、鈴木愛美さん。 あんまり言うことがないパターンのレッスンになりそうと予想していたが、概ねその通りだった。技術の指摘がほぼない代わりに、音楽家としての姿勢に踏み込むような、極めて高度な内容になった。 技術よりの指摘は大きくふたつ。 P(弱音)は、F(強音)よりエネルギーが小さいのではなく、Fとは質が違うと捉えること。例えば優しさや柔らかさと

          LFJ:エル=バシャさんマスタークラス

          春の宵に、小さな歌でカフェをめぐる~水咲カフェ@ふくい南青山291~

          クラシック音楽ファシリテーターの飯田有抄さん激押しの、水咲加奈さんの、水咲カフェへ。 ご出身地である福井をこよなく愛する水咲さんが選んだ今日の会場は、福井県の交流施設、ふくい南青山291。水咲さんは現在は東京で活動していますが、毎週パーソナリティを務めるFM福井の収録のため、毎週福井に帰られるのだそうです。 喫茶店が大好きすぎる水咲さん。実在する喫茶店を、1分程度の歌にして、毎週(!)リリースされています。 落ち着いた、テンポのよいトークを挟みながら、弾き語りが始まりま

          春の宵に、小さな歌でカフェをめぐる~水咲カフェ@ふくい南青山291~

          坂本龍一×高谷史郎「TIME」

          友人が紹介していて、東京公演最終日に間に合った「TIME」。新国立劇場の中ホールには水の流れる音や風鈴のような音がかすかに聴こえていた。 ひとときの暗転ののち、無からいま生まれたように田中泯さんがそろりと動きはじめた。宮田まゆみさんの笙の音が響く。 舞台上に作られた水面と水際に配置されたいくつかの道具、後ろに映し出されるスクリーンの高谷史郎さんの映像が舞台を構成する。 夏目漱石「夢十夜」と「邯鄲」「胡蝶の夢」をクロスさせて紡がれるその世界は、彼岸のようでも、夢のようでも

          ¥100

          坂本龍一×高谷史郎「TIME」

          ¥100

          一条恵観山荘:春の茶飯釜

          現代茶道塾の松永さんにお誘いいただき、友人と鎌倉へ。花見客で賑わう鎌倉駅を抜けて、バスで浄明寺に向かいました。 今日の会場は敷地内のお茶室です。江戸時代初期、後陽成天皇の第九皇子であった一条恵観が営んだこの茶屋は、京都から移築されました。この日は、眩しいほどの新緑と青紅葉に囲まれていました。 1.江月庵(点心・薄茶席) 手を清めてから、茶室・江月庵へ。 江月庵には、利休道歌がかけてありました。 「茶の湯とは 只湯をわかし茶をたてて 飲むばかりなる事と知るべし」 ドイツ

          一条恵観山荘:春の茶飯釜

          春の「連」茶会(VOL.2)

          心待ちにしていた桜が満開を迎えた日、都内のお茶室で、伊藤穰一さんと松本大さんのお茶会が開催されました。私は記録係補佐として、同席させていただきました。 濃茶席 壁にかかった軸は「松風供一啜(しょうふういっせつにきょうす)」。裏千家第14代御家元、淡々斎の筆です。名水を汲んで点てたお茶を、谷からの松風と共に一啜りにする、という漢詩の一説なのだそう。 松風の「松」は、「大(おおき)」というお名前を持つ、松本さんの「松」にも通じているのかな?と思いながら拝見しました。 どっ

          春の「連」茶会(VOL.2)

          空間が耳をそばだてる

          先日、近所の音楽ホールがふと空いていたので、午前中、ステージ面だけを借りてピアノ練習をした。プロのコンサートも行われるようなホールだが、たまたま空いていればお安めに借りることができる。 音と耳が場に馴染んだ頃、客席に人がいるような気がして、何度か客席の方を見るということが続いた。音や人の気配がするようなことは全くないのに、曲が変わると、客前と同様にその熱量の種類も変化するようで不思議だった。またそれを感じる場所が、光がぽっと灯るように、移動していくようにも感じられた。 歴

          空間が耳をそばだてる

          我が家的!関東風桜餅ランキング

          1.開幕宣言先日大阪の方から、「東京で買える、関東風桜餅のおすすめってありますか?」と聞かれた時、答えられなかった。関西出身の私には、これまで桜餅は関西風一択であり、関東風の桜餅の存在意義を感じられなかったためだ。 しかしそんな私も関東に住んでもう20年。こうした時に自信を持っておすすめできるようになりたい。そういうわけで、桜がなかなか咲かないこの春、我が夫婦の関東風桜餅選手権が開幕した。 2.結果発表色々あった過程など面倒でしょうから、開幕の次に、もう結果を発表する。

          我が家的!関東風桜餅ランキング

          「光る君へ」ファンミーティング(3)ファーストサマーウイカさんの凄さ

          前回はこちら! ドラマ内でもナレーションを務める伊東敏恵アナウンサーが登場後、紅白のセットを利用した大階段から、吉高由里子さん、柄本佑さん、町田啓太さん、ファーストサマーウイカさんが降りてきた。 吉高由里子さんはそれはもう、可愛い。共演者に突っ込んだり、誰も置いてきぼりにならないよう気を使う。吉高由里子さんってどんな人?のコーナーでも、「気遣いの人」と評されていた。現場に泣いたり怒ったりしている人がいれば、関係ないのに責任を感じてしまうような人柄なのだろう。「人を見ている

          「光る君へ」ファンミーティング(3)ファーストサマーウイカさんの凄さ

          「光る君へ」ファンミーティング(2):ドラマを支える、強く美しい女性たち

          前回はこちら! 昨日、ご都合の悪くなった珠夜先生(根本さんと共に「光る君へ」の書道指導を担当)の代わりにと、根本知さんに「光る君へ」のファンミーティングにご招待いただいた。 こういう一瞬のために、私は常日頃出来る限り暇であることを心掛けている。 関係者ばかりが集う席で、私的最強名刺「大石静」を手に入れたが、「半裸のシーンを多めにお願いします」程度のことしか言わない自分に失望し、早々に売り込みモードを中止した。 このクラスの人々に、私の発言など邪魔なだけだ。 そして普

          「光る君へ」ファンミーティング(2):ドラマを支える、強く美しい女性たち

          「光る君へ」ファンミーティング(1):「わたし」のための物語

          先日10年ぶりにあった友人に、「その全能感、変わってないねぇ」と言われた。ここで言う「全能」は、「何でもできる」という全能ではない。「私はほぼ何もできないが、おおかたのことは、私の認知を超えた何かがよしなにやってくれる」という、いわば無敵の無能感だ。 図書館も、スーパーも、家も、茶室も、山も、海も、「私のためにすみませんね」という気持ちで利用したり、眺めたり、味わったりしている。もちろん、これは他者を排除するものではない。ある意味では、すべての人が全能で、かつ無能なのだ。そ

          「光る君へ」ファンミーティング(1):「わたし」のための物語