見出し画像

我が家的!関東風桜餅ランキング


1.開幕宣言

先日大阪の方から、「東京で買える、関東風桜餅のおすすめってありますか?」と聞かれた時、答えられなかった。関西出身の私には、これまで桜餅は関西風一択であり、関東風の桜餅の存在意義を感じられなかったためだ。

しかしそんな私も関東に住んでもう20年。こうした時に自信を持っておすすめできるようになりたい。そういうわけで、桜がなかなか咲かないこの春、我が夫婦の関東風桜餅選手権が開幕した。

2.結果発表

色々あった過程など面倒でしょうから、開幕の次に、もう結果を発表する。これらはあくまで我が家のランキングであり、独断と偏見に満ちた内容であることをまず、ご理解いただきたい。好みは人それぞれ。

「私の好みと全く違うわい」という方は、まだ間に合うので、各店の桜餅をご自身で食べていただき、ぜひご自身のランキングを作成していただきたい。なお、誰にも頼まれていない自主的な取り組みのため、一切忖度はない。値段は変動したり、間違いがあるかもなので参考程度に。

評価は、下記項目を各5点で比較し、夫妻の合計点でランキングを行った。
◆見た目・・見た目の美しさ
◆餡・・あんこの美味しさ
◆皮・・皮の美味しさ
◆コスパ・・値段に対する満足度

1位:とらや

◆見た目・・★★★★★(5)
◆餡・・・・★★★★★(5)
◆皮・・・・★★★★★(5)
◆コスパ・・★★★★☆(4.5)

もうね、なんだかんだ言って、結局とらやさんなのよ。見て、この映え。
皮の描く満々としたカーブにぴたっと寄り添う桜葉の葉脈は、自然の芸術性を再発見させる。皮間から見えるあんこの、今旬を迎えた花魁のようなふくよかな盛り上がり。あんこと葉の色を前提とすれば、この濃さ以外考えられないピンク色を選択した老舗の自信。現代における関東風桜餅の美しさのイデアと言って良かろう(イミフ)。

とらや

口に含んだ瞬間にとらやと分かる、印象深いあんこの味。キムタクをどこか素直に好きと言えなかった王道嫌いの私も、「参りました」とほぼ5の評点を付けた。476円という値段にコスパは4.5となったが、贈答用を想定すると、その価格もブランド維持に一躍買っているのだろう。
すべてにおいて、堂々たる王者の風格であった。

2位:巌邑堂

◆見た目・・★★★★(4)
◆餡・・・・★★★★★(5)
◆皮・・・・★★★★☆(4.5)
◆コスパ・・★★★★★(5)

ひとうたの茶席」で毎度お菓子をお願いし、一言えば十以上に意図を理解し、毎度驚く作品を提供してくださる浜松の名店、巌邑堂さんの桜餅も関東風。お菓子を受け取りに行くついでに、日本橋高島屋で購入させていただいた。

巌邑堂

一口食べた途端、夫婦同時に「おおっ」と声を上げた。
「こ、これは・・!」
予想していたことだが、あんの美味しさは間違いなし。

「幾度か食べたあの羊羹の味ね」とすぐに分かるとらやさんと比較し、「巌邑堂さんの味ね」というような、覚えられる味ではない。それでいて、このクオリティ。キムタクが誰を演じてもキムタクにしか見えないが良いのか悪いのか、意見が分かれるように(毎度例えがキムタクですまない)、私はこの職人気質の匿名性が好きだ。

これが301円で食べられるとは、いい時代である。コスパは5以上だろう。私は皮の感じも好きだったが、夫は皮に評点4を付けた。

見た目も十分なクオリティだが、とらやさんの全方位的「ドヤ感」にはやはり届かなかった。その辺りで、2位としたが、かなり1位に肉薄した次点と言ってよいだろう。

3位:赤坂塩野

◆見た目・・★★★★★(5)
◆餡・・・・★★★★(4)
◆皮・・・・★★★★☆(4.5)
◆コスパ・・★★★★(4)

3位は同点で2店舗が入った。赤坂塩野さんの花衣は、私が一番好きな春のお菓子である。その桜餅は、封筒型に四角くあんを包んだ、可憐で可愛いらしい御姿。とらやさんが花魁とすれば、こちらは舞妓さんだろうか。

赤坂塩野

その可憐さと、柔らかなクレープ風の皮とあんのバランスの良さ。見た目と同様に、味もどこか幼く懐かしい味わい。500円と、もっとも高価。

ちなみに、赤坂塩野さんには関西風の道明寺もあり、こちらも可愛らしく、大変美味だった。赤坂塩野さんに寄られることがあれば、ぜひ両方を試していただきたい。

3位:銀座あけぼの

◆見た目・・★★★☆(3.5)
◆餡・・・・★★★★(4)
◆皮・・・・★★★★★(5)
◆コスパ・・★★★★★(5)

銀座あけぼのに寄った日はお彼岸で、和光の向かいにはたくさんの外国人がおはぎを求めて列をなしていた。

銀座あけぼの

ここの桜餅も封筒型で、赤坂塩野とは逆に下から葉で包み上げ、上に桜の塩漬けを乗せている。大変可愛いが、桜の塩漬けがやや大きいものは少しバランスが悪いようにも感じる。
もちもちした皮とあんがしっかりと手を取り合って、日常遣いのお菓子の味を作り上げている。しかし270円でこの美味しさはすごい。コスパは間違いなく5。

5位:餡の輪

◆見た目・・★★★★☆(4.5)
◆餡・・・・★★★★(4)
◆皮・・・・★★★☆(3.5)
◆コスパ・・★★★★★(5)

調布は仙川駅からほどないところにある、餡の輪さん。比較的新しいお店ながら地元のファンを獲得し、最近ではすぐに売り切れてしまう有名店となった。

餡の輪

「餡の輪」という店名からうかがえるように、あんこが売りだが、お茶席のお菓子というよりは、緑茶やコーヒーなどと日常に食べることを想定した味づくりだと思う。よってそれほどどっしりしたあんではない。赤坂塩野さんに通じる、可憐な可愛さも特徴だ。

「焼き桜」という名前の関東風桜餅は、内側から葉が透けるほど薄く仕上げた皮。いつもは上品な甘さながらこっくりとしたあんこを使用しているが、少しあんこをゆるめにしていることで皮との融合を図っている。好みによるが、もう少しあんがしっかりしていても良いと感じた。260円。
この店には道明寺もあり、こちらもおすすめ。

6位:玉川屋

◆見た目・・★★★★(4)
◆餡・・・・★★★☆(3.5)
◆皮・・・・★★★★(4)
◆コスパ・・★★★★★(5)

目黒在住の友人が教えてくれた、大正12年創業の老舗。桜直前に伺った本店は、意外に静かだった。

玉川屋

強豪との相対比較において点数は限定的となったが、個人(妻)的にはこの玉川屋さんがもっとも好きだ。もちもちとした皮、控えめな甘さのあんは、食欲旺盛な人には物足りないだろうが、重たい味に負担を感じる胃にはちょうどよい。それで190円だよ!どういうこと?

一見目立たないが、常に優しく穏やかなクラスメイトを尊敬するような気持ちだ。ゴディバよりも明治森永がほっとする感覚と言えば伝わるだろうか。ぜひ近所に売っていて欲しい、そんな一品である。

7位:岬屋

◆見た目・・★★★☆(3.5)
◆餡・・・・★★★☆(3.5)
◆皮・・・・★★★★☆(4.5)
◆コスパ・・★★★★★(5)

小さいながら、和菓子の有名店と名高い岬屋さん。長く存在は知っていたが、この選手権で初めて伺った。

岬屋

皮の感じは玉川屋さんに似ている。見た目ほど浮島のようなふわふわ感はない。妻は、大きめで甘いあんこがやや重たいと感じた。夫は、かなりのお気に入りだったようで、岬屋さんの評価が最も分かれる結果となった。250円。

お分かりと思うが、評点に0.5となるものが夫婦の評点が違う項目である。

8位:川口屋

◆見た目・・★★★★(4)
◆餡・・・・★★★★(4)
◆皮・・・・★★★★(4)
◆コスパ・・★★★★(4)

名古屋の名店川口屋さん。月に2回新宿高島屋に届いたところを見計らって、他の上生菓子とともに入手。

川口屋

元祖長命寺桜もちのように、2枚の葉っぱで包むタイプ。長命寺桜もちは、白い皮の2枚折だが。こちらは桜色で、かつ丸められている。
他店よりもやや塩気が強いように感じる葉の塩気が、ふわもちっとした皮、あんの甘味を引き立立てているようだ。

一緒に入ってきたお菓子も美しく満足度が高い。340円。

9位:長命寺 桜もち

◆見た目・・★★★★(5)
◆餡・・・・★★★☆(3.5)
◆皮・・・・★★★★(3)
◆コスパ・・★★★☆(3.5)

言わずと知れた元祖長命寺桜もち。創業から300年、桜餅だけを作り続けている。

長命寺桜もち

色など付けない水溶き小麦粉の色合いの皮を2枚どころか3枚の葉でくるむという、老舗にしか出せない外観。「ああ、元祖を食べた」という話題性やありがたさ。どの駅からもやや離れているため、馳走しました、という価値も付加されるかも知れない。あんこはしっかりとして量もたっぷりとしている。さくっとあっさりした皮で、ぺろりと食べられる。250円。

夫婦でやってる菓子ましチャンネルでは、こちらの長命寺桜もちと、鶴屋寿さんの食べ比べをしております。

10位:塩瀬総本舗

◆見た目・・★★★(3)
◆餡・・・・★★★(3)
◆皮・・・・★★★☆(3.5)
◆コスパ・・★★★(3)

塩瀬総本舗

たまたま通ったヒカリエの地下で購入。皮がクレープというよりも、ふわふわとしていて浮島のような感じもあった。
あんも充分に美味しいが、少量手生産の強豪たちに囲まれると量産の味・・という感じが否めなかったかも知れない。357円。

塩瀬総本舗さんの「夜の梅」は間違いない美味しさですので、こちらもお暇な時に・・。

一覧表

こちらが夫婦の一覧表だ。グレーの色がついているところが、夫婦で評点が異なった点。
また、1位、2位はとらや、巌邑堂と夫婦同点だったが、3位は夫は岬屋、妻は赤坂塩野と銀座あけぼのとなった。

結果一覧表(ご興味あれば・・)

終わりに

さて、これで私は「東京で買える、関東風の桜餅、どこがおすすめですか?」と聞かれて応えられるようになったのか。「あ、とらやさんよ」というのも芸がないような気がするし、こちらも間違いない巌邑堂さんは東京で買えるが、本店は浜松だ。そうなると赤坂塩野さんか銀座あけぼのさんになるのか。

結局これ!と明快な回答には至っていない気もするが、時間が許せばこの記事に書いた内容を踏まえ、交通の便や相手の年齢・好み等を勘案した回答ができるであろう。

外出する度に夫婦で手分けして桜餅を購入した桜直前のこの2週間、やや気忙しくも楽しい経験だった。足を運べなかった名店もあるし、知らない名店もたくさんあるのだろう。またなんかでやりたいと思います。

長々とした記事にお付き合いいただき、有難うございました。
画像とかの無断転載は、しないでね。

写真:山平 敦史