死神の命取り

「 俺は死神 お前の命を奪いに来た」

「僕の命を?」

「 そうさ。お前は死ぬ。」

「…いいよ。」

「 は?」

「僕の命、あげるよ。」

「 …。分かった。この世にお別れを言いな。」

「…ないからいいよ。早く。」

「 ふっ。そうか。分かった。目を潰れ。素早くお前の命を頂く。」

そう言って死神は、大きな斧で僕の頭をかちわった。

ちゅんちゅん…。

(「あれ…?朝…?死んだ世界でも朝って来るの…?」)

(いや、何かがおかしい。
ここは生前の僕の部屋だ。なぜだ…?
僕は死んだはずだ。
僕は体中をつねった。
痛い…。
ならばと、ナイフで手を突き刺した。)

「うっ…。痛い…。」

(血が出てくる。激痛も走る。
なぜだ…?)

「 よぉ。おっ(笑)なんだよ。ナイフなんかで(笑)」

「死神…どうして…?僕は死んだんだよね…?そうだよね…?」

「 ん?あー。なんか死ぬ直前のお前見てやめたんだわ。」

「…え…?

「 でも勘違いすんな。お前の魂胆が見え見えだったからだよ。
 お前は死ねば、一時的にでも有名になれる。
 そう思ったんだろ?哀れんでもらえる。そう思ったんだろ?
 そんなお前を見てつまらなくなってな。」

「そん…」

「 でも安心しな。お前はこの世で孤独だ。
 孤独、つまりそれこそがお前の死なんだよ(笑)
 何も呟いても反応が来ない。
 誰に連絡をしても返事がこない。
 それこそが、お前に与えた死だ。」

「うそ…」

「 それとな、嬉しい事だ、喜べ。
 お前は一生病気にはならない。
 だがな、それはつまり、病気で早死にすることも無い、とゆう事だ(笑)
 良かったなぁ?」

「え…。あ、じ…自殺は…?!」

「 …さぁ?(笑)」

(僕は走った。マンションの屋上まで、早く…早く…!
そして、僕は、飛び降りた。)

「 あーあ。つまんねぇやつ。
 …。なんてな(笑)
 お前は一生、孤独なんだよ。」

(…。
僕は…生きていた…。ただ…孤独に生きろと…。
何もかもの痛みを抱え、
寿命が訪れるまで…ただ…生きろと…。)

「 つまんねぇやつ。
 誰も見てねえっての前提だからより、つまんねぇんだよ。」

(死神は呼吸器をつけて、意識朦朧としている僕にそう告げて
笑っているのか泣いているのか?
よく分からない表情の中、消えていった。)


(僕は、退院した。生きている…。
今日も今日を生きている…。
ただ生きて…働いて…食べて…排泄して…お風呂入って…寝て…また起きて…。
ただ、生きている。)

(でも、そんな僕にまさか見ていてくれていた人がいたなんて思いもよらなかった。
だってあいつ…死神は、孤独だって。
一生、孤独だって…。誰も見てないって…。)

「ねぇ、〇〇さん。
私と結婚、してください。」

(僕は…寿命が来るまでその人とともにした。
彼女は当然、病気にもなったし、
生死をさまよう事だってあった。
だから、僕を見て)

「〇〇は羨ましい。
病気にもならないんだね。」

(辛そうな笑顔を何度も向けられた時だってあった。
僕だって…普通の人生を歩みたかった…。
もしも、あのとき、死神に抵抗していたら、
少しは変わったのかな…?
僕も病気をしたのかな…?
こんなに悩まなくてよかったのかな…?
このまま一生孤独なのかな…?
って…。
でも、なぜか違った。
君は僕を見ていてくれた。どうして…?)

「 お前、ほんっとーにつまんねぇな。」

「え…?死神…?」

「 誰も現実で見てないとは言ってねーぞー。お前が、全世界、つまりはSNSに浸かりすぎてたからだよ。
 お前が本当に本当の普通の人間だったら、普通に連れ殺してたし、こんな回りくどい事しなかったさ。
 でも、少し、普通の人間らしくなってきたな。
 もう少ししたら、お前を連れ殺すのも面白いかもな。あはは!」

(死神はそう言い残して、また消えていった。
え…?つまりは生身の人間にはずっと見えてたってこと…?)


(「え…、僕は見えてた…生きてたの…?」)


(あの死神は良いやつなのか悪いやつなのか分からない。
いや、少なくとも死神となれば、良いやつでは無いのかもしれないが…。)

(僕がいて、彼女がいる。
そして、おそらくそばにはずっと死神がいる。)

(なんだ。そんな事か。
お前は僕に、ちゃんと周りを見ろ。
そう言いたかったんだろ…?
まだ分からない事はもちろんある。
だが、今はそれを信じて、
もう少し、前を上を向こう。
ときには振り返って、見直すのもいい。
見直して、やり直して、繰り返す。)

(「楽しても辛くても、

今日も僕は、生きています。」)

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