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一次方程式から連立方程式へのパラダイム・シフトを考えてみる

1 パラダイムとは

ある時代に支配的な物の考え方・認識の枠組み。規範。

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 パラダイム・シフトとは、パラダイムが構造的に変化することです。

2 パラダイム・シフトの例

 パラダイム・シフトの例として、佐伯(1985)が次のように紹介している。

 科学の「燃焼」という現象を通して、「質量」の認識が変わったタイミングがありました。

 今では、「燃焼」は酸素と結合する現象なので、質量が増えるという認識です。
 しかし昔は、「燃焼」はフロギストン(マイナスの質量をもつ物質)が抜けて質量が増えると考えられていました。

 この例でいえば、昔はどんな物質にも「質量」があるというのが、科学というパラダイムの中では第一義的ではなかったですが、酸素と結合するという捉え方をするためには、第一義的だと認める必要があります。

 つまり、パラダイム・シフトが起こって、パラダイム内の構造が変わったわけです。

図1 科学のパラダイム・シフト

 また、2つのパラダイムは、包含関係にある場合もあります。
 古典力学と相対性理論の関係がこれに当たります。
 相対性理論で、物体の速度$${v}$$が光速$${c}$$に対して十分に小さい場合は、古典力学が適用されます。

3 方程式を解くときのパラダイム

 一次方程式は、両辺から同じ数を足したり、引いたり、掛けたり、割ったりして、未知数$${x}$$を求めます。この学習は中学1年生で学習します。

図2 一次方程式を解く

 ここで中学1年生の認識(パラダイム)は、引いたり割ったりするのは数のみです。

 中学2年生になると、連立方程式を学習します。連立方程式は、加減法か代入法で解くことができます。
 例えば、加減法では次のような計算をします。
 おそらく生徒が躓くのは、②は等式なのに、なぜそれが一次方程式でいう「数」の役割になっているのかです。

図3 連立方程式を解く

 中学校では、②の等式は両辺が同じ値であることを表しているから、①から②の両辺を引いてもよいと習うはずです。

 でも、一次方程式を次のように連立方程式と統合的に捉えなおす(パラダイム・シフト)こともできます。

図4 一次方程式を解く際、連立方程式の解き方を用いる

4 最後に

 私は心理学の専門家ではないので、パラダイムなどの用い方が誤っている点があるかもしれません。申し訳ありません。しかし、子どもたちの中で連立方程式を学習したとき、一次方程式の解き方を捉えなおす機会を設定するのは、子どもたちが知識を統合させたり、発展させたりする土台作りになるのではないかと感じました。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

・参考文献


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