見出し画像

「青年も、大志を抱く」セルフライナーノーツ

どうも、しとろんです。

前回の「dawn」に続いて、今回もだらだらと自分の書いたラップの解説をしたいなと思います。聴いてくれた方はありがとうございます。まだの方は良かったら聞いてください。


https://youtu.be/lucDVqguEGw

ボカロラップはもう3曲目になりますが、今回は割とテクニカルな方面に振ったというか、内容も大事だけど、ちょっと変化が欲しいなと思って。
そういった意味で、今回は韻に始まりフロウとかも色々工夫したので、その諸々を知ってほしいなという記事でございます。

ここ見て!ポイント

同音異義語

まずこの曲で初めて試みたのがこれですね。
FORKとかが有名なやつです。

普通ライムは母音を揃えるものですが、子音も揃える技を「同音異義語」というみたいです。(子音踏みと呼ぶ人もいますね)

例えば、「相当冷める」と「そーっと納める」みたいね。これだけ切り取っても、あまり凄さが伝わらないけど()
というか、上手く前後を繋げないとダジャレっぽくなりがちなので扱いが難しい高等テクですねこれは。

まあ、ともかく。
今作「青年も、大志を抱く」では以下の部分でこれを使っています。

16冊目の歌詞ノート
始まりはもう9年も昔のこと
「喜怒哀楽 及び 愛憎を書き起こそう」
と重ねた証の音

青年も、大志を抱く

ここは割と分かりやすいライム、フロウというか。個人的には櫻井翔の血を感じる部分になってるんですが。
一応言うと「歌詞ノート」「(む)かしのこと」「愛憎を」「書き起こそう」「(あ)かしの音」の5つを、aioooで踏んでますね。

その中でも、「歌詞ノート」と「証の音」は「kashinooto」で子音まで全く同じになっています。これが同音異義語ですね。
やってみたかったけど、難しい。「ノート」=「の音」はよくある奴ですし、もっとすごい同音異義語踏みたかったけど、文脈も考えると今の自分で作れるのはこれが限界でしたね。

でも、「歌詞ノート」という実際に自分が書いてきたもの、しかも造語を歌詞に何の断りもなく載せるというのは、ある意味とてもパーソナルな曲が書けたなと思って、それも新鮮でした。
この曲をHip Hopと呼ぶ気はさらさらありませんが、自分のことを歌う文化には憧れがあったので、できてよかったです。

三連符フロウ+頭韻

最近、まあ広い目で見れば新しい技術の「三連」。
音楽的に正確に言えば「三連符」だと思うんだけど、それを今回は割と意識的に入れました。多分これは「遺書」とかでも全然使ってるんだけど。

"普通"に スーツに 身を包み
傍ら虎視眈々と向かう硯
夢中になれるこの銀世界で
ゆっくり足跡 遺していこう

青年も、大志を抱く

ここの前半二行は分かりやすい「三連」ですね。
ライムもそれに揃えてuuiの三音です。この前半のフレーズは難しい言葉は使ってないけど、表現がユニークで好きです(自分で言うな)

内容については後で話すんですが、ついこないだまで就活をしていたので、そういう「普通」をこなす自分。その傍らこうしてラップを作っている「普通ではない」自分。
そのスタンスを社会人になっても続けてやるぜっていう意志表明の曲なんですよね。この曲を一言でいうと。

なので、それを簡潔にかつユニークに表現できたこの2行はパンチラインと呼んでも差し支えないかもしれない。呼ばせてください……(急に弱気)

とはいえ「硯」っていう普段使わないワードを引っ張り出せたのが大きかったな、これは。徒然草のサンプリングですね。それは大袈裟か。

後半も「夢中に」「ゆっくり」と頭韻で締めてるのもバラエティ豊かでいいですよね。まあ、頭韻くらいはいくらでもやってますけど。

おっと。でも、本当に好きなフロウはここじゃなくて。
この前です。

三連緩急フロウ+ロングライム

素敵な僕になる方法 それは
夢見た君を生かすこと

青年も、大志を抱く

まず先に言うと「僕」は「おとな」、「君」は「こども」と読みます。
この書き方にしておくことによって、サビの意味が分かる仕掛けにしていたんですが……。
動画では普通に「大人」「子供」って書いちゃった/(^o^)\

やらかしましたね……。慣れないことしようとするとこうなる。

ええと、何の話だっけ。あ、そうそう。
ここのフロウが一番好きって話だ。

これは珍しく歌詞からじゃなくフロウから決めたくらい。
基本は三連符なんだけど、三連目(?)を2分割して緩急をつけてます。「タッタッタタ」のリズムですね。これ本当に気持ちいい。

そしてライムもちょっとだけ凝ってて。
「方法」と「こと」だけを踏んでると思ったら大間違いですよ。

すてきな おとな     になるほうほう
ゆめみた こどもを いかすこと

これを母音だけにすると、こうなります。

ueia ooa   iauoo
ueia oooo iauoo

間の「大人」「子供」の部分が少し違いますが、計11音も母音を揃えています。わーすごい。まあ、ちょっと日本語が不格好ですが。そこはご愛敬でお願いします。

ア段のカウント

そして、最後のポイントがここです!これは一度やってみたかった!

そもそもカウントって何?って感じだと思います。自分もこの言い方が正しいのか分かりません。誰か教えて。
で、この歌詞を説明する前にCreepy Nutsの「よふかしのうた」(1:21~1:29)を聞いてください。

分かりますかね。オ段の音が強調されてるのが
分かりやすく書くとこんな感じ。

それから前は楽をくれた の裸も見せてくれた
んだ事ねぇ酒に口つけて オンのタバコくすね火を付けた

よふかしのうた / Creepy Nuts

私はこれがやりたかったんですね。でもなかなか難しくて、ずっと見送って来たんです。
でも今回は挑戦してみようと。この「ア段バージョン」をやることにしたんです。そしたらこうなった。(動画だと2:22~です)

座かかずに ける宝くじ
途の川 る今際まで
度も筆をらせてっ黒にき付ける
文乱筆な俺の

青年も、大志を抱く

おおぉ~~……ん??

お気づき頂けただろうか……。
そうです。私も最初は、ただ単純に「ア段」を強調させる予定だったんですが、途中でこう思いました。

「これ、「あ」から「わ」まで揃えたら凄くね…?」

というワケで、死ぬほど難易度上がりました。なのでちょっと強引な所があるのは許してください。

分かりやすく描くと、

「あ」ぐらかかずに
「か」ける宝くじ
「さ」んずの川 わ
「た」る今際まで
「な」んども筆を
「は」しらせて
「ま」っくろに
「や」きつける
「ら」んぶん乱筆な 俺の
「わ」だち

ですね。特に前半は分かりやすく強調してます。後半はもう気付く人は気付くだろうと、フロウというか言いやすさを優先しました。「や」とか消えかかってます。

「ら」から始まる四字熟語とか調べまくって書いたのが懐かしい……。自分も広辞苑10冊分並みの語彙が欲しいものです。

ともかく、これも初めてチャレンジしてみたやつのひとつでした。

今回のレファレンス先

レファレンスって聞き馴染みないな。でも「参照」だとちょっとニュアンス違う。
まあ、サンプリングと呼んでもいいんですけど。

前回の「dawn」もそうでしたが、自分の音楽のルーツになっている方のエッセンスを意図的に混ぜることを今回もしています。ちょっと今回は引用の仕方がモロな所もあってパクリと言われるのも恐いので、ここで弁明しておきたいと思います。

R-指定

Creepy Nutsでお馴染みのラッパー。彼の歌詞が無意識的にも意識的にも随所にちりばめられていますね。歌詞、というより言葉選びに影響されている感じです。

分かりやすいサンプリングはまずここ。

いつかのワナビ 絵に書いた餅
それじゃ無理で 時は過ぎて
でも俺はいつまでも俺が好きで
バクマン。感覚の成り上がりストーリー
どこかで夢見ていたいんだ餓鬼のように

青年も、大志を抱く

その名の通り「それじゃ無理」という楽曲から引いてます。「成り上がりストーリー」もibid、同じくです。
あと、「いつかのワナビ」もRがたまに使うワードで「ぬえの鳴く夜は」などから。

胡座かかずに 賭ける宝くじ
三途の川 渡る今際まで
何度も筆を走らせて真っ黒に焼き付ける
乱文乱筆な俺の轍

青年も、大志を抱く

あと、先ほど説明したこの部分。ここめちゃRの濃度高め。ちょっとやりすぎたなと思っているくらい。
最近Rの客演を聞きすぎてたせいで、パッと選ぶワーディングがめっちゃ影響されてますね。

胡坐かかずに→「トラボルタカスタム」
賭ける/筆を走らせて→「博徒2020」
三途の川→「バレる!」
今際→「かつて天才だった俺たちへ」
真っ黒に→「サントラ」
俺の轍→「Overall」

うん、多すぎ。
まあ殆どが単語単位なので、パクリというより本当に影響って感じですが(言い訳)

でも、「賭ける宝くじ」のニュアンスはこのリファレンス先の「博徒2020」を聞いてもらえた方が意味は分かりやすいと思いますね。
決して「人生、宝くじ任せで努力しなーい!」みたいな意味ではなく、「人生をbetしていつか大穴当ててやる」という意味で使っております。まる。

そういえば言い忘れましたが。
「あぐらかかずに」「たからくじ」「さんずのかわわたるいまわまで」という、超中途半端な所で3つ韻を踏んでるのもポイントでした。これ初見で気付けたらヤバい。俺も作ってる途中に気づいた(え?)

傘村トータ

そして、もう一人の参照先が傘村さんです。
打って変わってラップとは無縁のボカロPの方ですね。調声が鬼上手い。

この方の「僕は夢を持ったままの子どもでいるだけ」という曲の要素が入っています。

僕が今回言いたかったことは、大体この曲が言ってることと同じで。
そして傘村さんは自分のボカロPとしてのルーツでもあるので、今回引用させていただきました。

素敵な僕になる方法 それは
夢見た君を生かすこと
心の片隅でほんのどこかで
月に住むウサギを想うこと

青年も、大志を抱く

この部分ですね。原曲を聞いてもらえれば分かりますが、かなり色濃く出てます。ちょっとこれはやりすぎたかもしれない。もっとうまいアレンジというか、捻り方ができればよかったんですが。。
サンプリング、むずかしい!

「夢を見る」の多義性

では、最後に。少しだけ内容の話をして終わります。
手短にしようとしてもやはり長くなるな解説。。

先程の傘村さんの歌でも歌われていることなのですが。
多くの場合「夢を持つ」というのは、子供の特権かのように語られます。
大人になるということは、それを捨て、諦めることなのかもしれません。

でも、私はそうは生きたくないと思いました。


子どもの頃。私は小説を書いて、歌を書いて。
それでプロになれると未来の自分に期待していました。

あの頃の「君」は、未来にいる「僕」を過大評価していたんです。
未来なんてものに、夢を見ていたんです。

そして「僕」は、「もっとあの頃から頑張っていれば」とか「あの時こうしていれば」と「君」を責めたりします。しかし、それも幻想です。
たとえやり直したって、僕は大して変われません。僕は過去に夢を見ているだけです。もしくは若さに夢を見ているだけ。

「僕」も「君」も、現実から目を背けているだけなんです。

過去の自分が純粋に未来に目を輝かせていたように、今の自分が同じように夢を見ることは絶対にできません。
「君」の持つ未来と、「僕」の持つ未来の量は、その可変性は、もうまるで違うのですから。

でも。
だからこそ私は、「僕」のできる「僕」なりの、「夢を見る」を再定義しました。

「君」の純粋さを心に宿したまま、「僕」の柔軟さで社会と闘いながら。
現在を積み重ねて、いつか理想に辿り着く。

そんな「夢」を見て、生きていくことにしました。

それが今の私の結論です。


未来なんて何も分からないけれど。
今の「僕」を信じることができれば、その積み重ねた先にいる未来の「キミ」を無責任に夢見ることも悪くないと思うんです。

だから結局、何も変わらない。
私は夢を持ったまま、大人になるんです。


少年も、中高年も、そして青年も。
大志を抱いていい。

というより、私は抱いていたい。


これはそんな夢想の歌です。









P.S.
変な締め方したせいでめっちゃ恥ずかしいので、チャンネル登録を懇願することでこの場を丸く収めたいと思います。何卒よろしくお願いします!!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?