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史実はキングダムより奇なり「史記」 〜戦争と人間が織り成す壮大な大河ドラマ〜

皆様、いかがお過ごしでしょうか。こちらはスイカの片付けが一通り完了し、ブロッコリーもちょろっと植えて、コミ君がハウス内の堆肥を済ませてくれました。さて、個人的にYou Tube動画の農業系動画には大変お世話になっておりまして、個人的にメロンの栽培動画を見て勉強しております。一回見ただけではわかりませんので、何度も見返して学習すると同時に新しくやる作物はリスクもまた高いので半分だけにするなど限定してやってみたいと考えたりしていますが、こればかりは僕の独断で決められませんから相談の上、決めたいと考えております。

アーカイブというのは偉大なもので、本としてであればいつでも読み返すことができます。動画であれば見返すことができる。時代が変わり、何もかもが移り変わっても人間として生きている以上は根本原理が変わることは農業でもどんな職業でもなかなかありません。その人間の営みは何一つ変わることはないということを教えてくれている歴史書の一つである、「史記」。作者は司馬遷といい、前漢の時代に中央集権体制と儒教の国学化を推し進めた皇帝・武帝に仕えた人物です。

コツコツと読んでいってようやく読み終えましたけれども、どんな書物なのかというと、伝説的な夏王朝の始まりから集英社さんの人気漫画の一つでもあった「封神演義」の題材となった殷王朝、周王朝の興亡記に加え、春秋戦国時代とその時代を終わらせた秦王朝の興亡、項羽と劉邦の出現と争い、そして王莽前夜とも呼べる前漢時代までを描いております。そこに至るまでに900年近い時が流れていますから、それはもうとんでもない数の出来事と人物たちが登場します。

今現在ヤングジャンプさんとアクションさんの方でも連載中で春秋戦国時代を描いた「キングダム」と「達人伝」が知られております。ちなみに僕自身は「キングダム」の大ファンで、ヤングジャンプさんの最新号が出ればデジタルではありますが、必ず見ております。もちろん、漫画なので創作物であることに変わりはなく、架空の人物達が登場しておりますが、基本ベースとなる部分は基本的に史実に沿って物語が進んでいる訳ですから、前述の2つの漫画に出てきた登場人物たちが次々と登場します。

史実も「キングダム」と全く違う部分が多いものの、基本ベースは同じですから、すんなり読めます。ただ、始皇帝・嬴政が中華を統一しようと決心したキッカケは後の丞相(今現在で言うところの総理大臣の地位)である李斯から「あなた方の実力を持ってすれば六国を討ち滅ぼして中華を統一するとが可能だ」と進言されたからであって、漫画のように嬴政自らが己のビジョンとして掲げた訳ではないということです。また、竹馬の友と言っていいほどのポジションを確立している李信の息子・李超は生き延びて後の漢王朝の創始者である劉邦の部下となり、将軍として出世しています。「キングダム」においてこれから書かれるかと思いますが、権力を手にして変わっていく嬴政に疑問を感じるようになり、「こんな男の欲望のために中華を統一したんじゃない。こんなことのために兵士たちが死んでいった訳じゃない。あの頃の嬴政は一体どこへ行ってしまったのか」といった形で嬴政と衝突した結果として秦王朝を離れ、劉邦の元へと向かうというストーリーなのかもしれませんが、そこは作者である原泰久さんの描き方を楽しみにしております。

話を戻しますが、舞台が紀元前の古代中国という恐ろしいほどに昔の話ではありますが、その時代に生きた人たちの生き様だったり、思想、制度などそうした一連の出来事が僕らのご先祖様である古代日本の偉人達にも継承され、今の日本にも伝わっているのは数多くあります。それと、その時代に生きた人たちの記録を改めて見返してみても人間の根本というのはそうそう変わっていないこともよく分かります。名誉のために戦う人間、忠義のために戦う人間、自分のために戦う人間、欲望のために戦う人間、出世のために働く人間、思いはそれぞれあって、そんな思惑が交差し続けていく中でどれを取っても正解はなく、荒れた時代を生き抜いていくためには常に少しずつでも学びながら進んでいくしかないのだろうと感じています。

なぜ、前漢の皇帝の部下であった司馬遷がこの歴史書を書こうかと思い立ったかというと父親であった司馬談は高級官僚でしたが、激務の合間を縫って歴史書の編纂をしていました。それが前述した「史記」です。しかし、道半ばで過労が祟ったのか司馬談が亡くなってしまいます。そうして、時が流れ、司馬遷は匈奴(モンゴル系民族)征伐に失敗した李陵をかばったがために武帝の怒りを買い、局部を切断されるという屈辱的な目に遭います。李陵というのが「キングダム」の主人公のひとりである李信の子孫であり、李信の子孫には後に唐王朝を建国することとなる李淵とその息子である名君・李世民がいるなどここにも脈々と続く歴史を感じます。

局部を切断された司馬遷は自殺することも考えますが、父親が書き終えていない「史記」を完成させることこそが自分に課せられた使命だと思い直し、存命中に「史記」を書き上げました。その書き終えた創作物が後世に語り継がれていく歴史書となったのは言うまでもなく、現代に言い換えると父親がやり残した事業だったり、会社だったり、僕らで言えば農業だったりと受け継いでいって、また新たなものを生み出していくという流れに繋がっていったりすることも多いわけですから、人の営みの根本もまた変わらないということでしょう。

当然、900年近い歴史を列挙している訳ですから、当然、勃興したものの衰退する国の話は当然出てきて、「キングダム」に出てくる秦王朝も「あんなに戦って、あんなに死んだのに、どうしてたったの15年で終わってしまったのか」というと、秦王朝のやり方が厳しすぎたというのと、実力主義に徹しすぎた結果として人材バランスが著しく欠けてしまったり、始皇帝・嬴政があまりにも優秀で人を死ぬまで疑う性格だったがために何もかもを自分でやらなければ気が済まなかったからこそ、属人化極まりない運営になってしまった結果として始皇帝が死んであっという間に滅亡へと進んでしまったというのは多くの方が知るところだと思います。

殷王朝と周王朝の最期も終わりは絶世の美女と呼ばれた女性に溺れに溺れた結果として、政治が退廃し、その有様に怒った臣下に殺されてしまってその人生と王朝を終わらせてしまいました。こうして見ていくと王朝の興亡記というのは今現在の会社さんだったり、芸能人やスポーツ選手などの諸行無常にもよく似ていて、それが大昔から現在まで何度も何度も繰り返されているのだと思うと世の中と、この「史記」の中にも出てきますが、「邯鄲の夢」の故事の言う通り、人の生涯の儚さを感じざるを得ません。始皇帝も武帝も不老不死に執着していたものの、その願いは果たされる訳もなかった訳ですが、王朝政治というのは基本的に世襲がベースとなっていますから、カリスマ君主が出続ければ回っていく仕組みになっていますが、そうでなくなったら回らなくなるのは自明の理ではありました。そこでシステム化を進めていくも時間と共に陳腐化してしまってこれも長続きしなかったりします。

そこで生み出されたものが民主主義だったりすると思うわけですが、この民主主義も問題をはらんでいるものの、それでもこの数千年近い中国を始めとした世界の歴史の中で、我々のご先祖様たちが試行錯誤を激しく繰り広げた結果として辿り着いた一つの答えなのかもしれません。もちろん、正解ではないかもしれませんが、今現在の形に馴染んでいくような結果となっていることを踏まえると着地点は見い出せたのかもしれません。僕らが今、生きている世界や環境というのは当たり前にあったものではなく、長い時間と歴史の中で始まっては終わってという繰り返しの中で作られた文化ですから、その歴史の流れを知ることで今の時代を知ることに繋がってきますし、何より自分たちが生きる時代の立ち位置や自分がこの先、どう生きてけばよいのかという道標になったりする。それこそが「史記」などの歴史書から学び、得られる教訓の一つではないかと思わされます。そう考えると戦争の歴史というのは人間の営みを語る上で切り離せないものでもありますし、こうして脈々と受け継がれていることを考えると、古代の人たちや僕らの生きた歴史もまた壮大な大河ドラマのようだと思わされたりもします。

どの時代にも正解はなくて、「諸子百家」と呼ばれた人間たちに代表して、それぞれの人間がそれぞれの主張をぶつけ合い、時には分かり合えずに殺し合い、奪い合い、滅ぼし、滅ぼされという繰り返しの中でやはり同じ時代を生き抜いていかなければならない訳ですから、世代間闘争をするのではなく、互いの妥協点を見出して共に生き抜いていく。それこそが今僕らが生きる時代の価値観なのかもしれません。10年後、50年後、100年後と時が流れた時に僕らの生きる時代が後世の人達にどう語られるのか。それは分かりませんが、常に時は流れ、変わっていくものですし、自分が生きている間に出来ることもまた限られています。それでも、自分に出来ることを探し続けて、実行し続けていくことで自分や自分の周りだけでも変わっていけばそれでいいと考えています。乱文になりましたけれども、それが歴史書の超大作とも呼べる「史記」から学ばされた結論です。

色んな方が解説の記事を出して下さったりしていますので、それを補足資料として時折見ながら、困難に直面したりした時に見返して自分を振り返ったり鼓舞したりする時に「史記」のような歴史書を、変わらない人間の本質と歴史に思いを馳せることで向き合って乗り越えていければいいと考えております。長くなりましたが、ここで筆を置かせて頂きます。


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