【コラム】おいしい読書感想文の書き方

読書感想文とは

読書感想文。それは遍く小学生の暑い心的外傷。
読みたくもない文章を読み、書きたくもない長文を書くという毎夏の苦行。
それが、貴重な夏休みの後半(前半に書くわけがない)を擦り減らしてしたためるとなれば、そりゃもう、あらすじで400字詰め原稿用紙2枚は埋めたくなるというものです。

そもそも課題図書からして、数多ある書籍の中からよくもここまで読む気がしない本を?選んだのかな?という思いが荒野を駆け巡る訳ですが、そこは読んでみたら案外面白い、ってのもないことはないので良しとしましょう。いざとなったら、自由図書でもいいでしょうし。ただ、自由図書の方がそれを選択するセンスも問われるし、実際は難しいんですけれど。

とまれ、読書して感想を書くという、大人になったら頼まれなくてもやってしまうことがなぜそこまでしんどいかというと、やっぱり無理強いされるからかと思います。自発的に感想文書く小中学生とかはぐれメタル並のエンカウント率です。

ということは逆に言うと、書きたくなる要素さえ見つければ自然に筆も動き出すかもしれません。そのために必要なのは、本の中から誰かに伝えたい、共有したい、想いや事柄を見つけることです。

大体において課題図書というものは、それさえもお仕着せしようと企まれている節がありますので、そことフィーリングが合えば楽に書けるはずなのですが、そうはいかないのが現実。痒いところはそこじゃない、と思いながらもいまいち痒いところが自分でもわからないイライラ感に苛まれます。足の裏付近の所在不明の痒みに近いです(近くはない)。

そんなわけでここでは、そんな痒いところへ手を届かせる方法を論じていきたいと思っています。前置きが長いですね。

下ごしらえ

さて、腐っても読書感想文ですから、まずは対象となる本は読破しておきましょう。剛の者はあらすじだけでも原稿用紙いくらでも埋められますけど、そんな古強者はここ読んでないでしょうから、眠くても読み終わってくださいね。

読み終えたら、内容を忘れない内に登場人物たちとその人のやったことを箇条書きでも良いので出来るだけ書き出します。人物相関図も書けるなら書いてみると後から整理しやすいです。ここらへんがめんどくさい場合は、運が良ければ wikipedia にまとまってる可能性もあります。ググって!

ところでこの作業の際、できれば気持ちは入れ込まず、淡々と事象だけを追っていくと、後から活用する際に自分でも読んでる間に気づかなかった視点が現れてくるかもしれません。マシーンになりましょう。

調理:炒める、焼く

この段階で、自作にしろwikiにしろ、感想を書くために必要な材料は概ね揃っていますので、メインとなる食材を決めます。登場人物の中から「推し」を選んでいただきます。大抵は主人公になると思うんですが、強烈な脇役、もしくは敵役なんかを選ぶと、それだけで通っぽい感想文になります。

あとは、決めた推しの行動を褒めたり貶したり、なんでそんなことしたのか考察したりと、身内か親戚になった気持ちでつらつらと書きつけます。何なら、SNSの経験があれば、RTで回ってきたものに一言物申す感じでもいいと思います。

とにかく「推し」に対して、言いたいことは全部ここで書き出しておきます。今の段階では自分のことは棚上げしといてもいいので、ちゃんと食材全体に火を通しましょう。

調理:蒸す、煮込む

前段で概ね自分の思いが吐露できてると、ここで読み返した時にちょっとしんどくなる位にはエグみを感じることになると思います。それでいいのです。そこから推敲を繰り返して粗熱を取りつつ、浮いてきたアクも取り除きます。くどい言い回し、前後の整合性、誤字脱字など、音読して気恥ずかしくならない位になるといい感じです。

味付け

読書感想文に敢えて自分の色を出すこともないかもしれませんが、せっかく書くなら多少は自分なりの表現にすることも大事です。ですます調、である調、おもしろ、時事ネタ、などなど、何気に全体に影響する部分なので、丁寧にどうぞ。

ただ、ここであんまり味見を繰り返すと、段々味がわからなくなってくるので、一晩寝かせるのも良策です。一夜明けた自分はもう他人。多少はフラットな視点で読めるかと思われます。

盛り付け

最後にまえがきとあとがきを付け加えることになります。まえがきは正直適当でもいいです。思いつかないなら、その本を選んだ経緯とかでいいんじゃないでしょうか。本文の印象的なセリフを冒頭に持ってくるのもいいかもしれません。

あとがきについてはきちんと締めたほうがイイのと、読書感想文の肝としての「自分自身に帰結」を盛り込んでおくとそれらしくなるのでおすすめです。我々若者は、とか、人類は、とか、主語を大きくしていくのもいいかもしれません。

以上、ここまでつらつら書いてきましたけど、上記を実践することで読書感想文っぽいものができるかもしれないし、できないかもしれないので、我々人類はもっと書に親しみ、知を分かち合い、来たるべき未来への自らの糧としていかなければいけないなと思いました。

〈おわり〉


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