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幸福度を上げる方法、路上で見付けました

今日は〝ぽかぽか〟の正体について迫ろうと思う。

先週、人生で初めて「地獄に仏や」と呟かれた。80歳くらいのお婆さんにだ。

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そのお婆さんは耳鼻科に行きたかったみたいで、耳鼻科の前で入り口が開くのを待っていた。

たまたま僕がその病院の前を通り過ぎると、

「本日急遽都合により休診とさせていただきます」

という貼り紙が入り口に貼られていることにすぐに気が付いた。

その耳鼻科は休みだったのだ。お婆さんは気付かずにずっと待ち続けていたのである。

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見なかったふりをして通り過ぎることもできたのだが(いや実はちょっと通り過ぎたが)、やっぱり立ち止まって教えてあげることにした。

「あらやだ~今日休みだったのねぇ」

コロナの関係で今は完全予約制になっていて、予約がないときは早くに閉まっていることを伝えると、

「そうだったのねぇ、ありがとう~」
「でも電話番号わからないわぁ、どうしましょ」

すぐにネットで調べてあげた。

書くものありますか?ない。
写メ撮れますか?撮れない。
ネットで調べ方わかりますか?わからない。

ならばと、お婆さんがかろうじて持っていたガラケーに耳鼻科の番号と休診日を登録してあげることにした。

すると

「地獄に仏や…地獄に仏や……」

と聞いたことないようなフレーズで何度も何度も感謝されたのであった。

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この帰り道、どこかとても気持ちが良かった。

たまにドラマで見知らぬお婆さんの重たい荷物を持ってあげるというシーンが出てくるが、恥ずかしながらそんなこと一度もしたことがなかったからだ。

それだけに、その日はとても寒かったが、すごく〝ぽかぽかした気持ち〟になっていたのだった。

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■偶然にも見つかった幸福度を上げる方法とは

この「ぽかぽか」の正体を知りたくて、

家に帰ってから、すぐにポジティブ心理学の世界的権威であるソニア・リュボミアスキーさんの文献を読み返してみたら、まさにこれだー!!!というのが見付かった。

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そこには、ボランティア活動をする5人の女性を、3年以上にわたって追跡調査した「親切」についての研究が載っていた。

この5人の女性は全員、多発性硬化症(脳や脊髄などの中枢神経に異常をきたす病気)を患っていて、67人の他の多発性硬化症患者を相互支援するために選ばれた。

そして、積極的に、かつ優しく話を聞くテクニックを教え込まれ、月に一度、15分ずつそれぞれが担当する患者を訪ねることになった。

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その後の調査によると、驚くべきことに彼女たちの「生活満足度」は他の患者の7倍も高い数値を示していたのである!

相互支援を行った5人の女性が経験したポジティブな変化は、彼女たちが支援していた患者たちの変化よりもはるかに大きかったのだ。

満足度や自信、達成感が高まり、彼女たちは以前よりも社会的活動に加わるようになり、落ち込むことも減ったそうだ。


この実験に関わった女性は最後にこう言った。

「患者間の相互支援を行うという役割のおかげで、自分自身や自分の問題から気をそらすことができ、他人の問題に目を向けられた」

「多発性硬化症の治療法はありませんが、どんなものが私の行く手にやってきても、今ではどうにかなるという気がしています」

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この実験被験者と比べたら、僕がした「親切」なんてたかが知れている。

ちょっと話しかけて携帯に電話番号を登録してあげただけ。ほんの数分の出来事で、お金がかかったわけでもないし、複雑なことでもない。

それでも僕の幸福度が少し上がったのは確かだった。

もちろん前々から「他人に親切にしたら幸福度が上がる」という研究は知ってはいた。

しかし、今回身を持って体験し本当に驚いた。いや、なんだか少し嬉しかったのだ。

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「人に親切にすれば、親切にされた人だけでなく、その行動をとった人にもいい影響を与える」

そして、

「本当の幸せは人を幸せにすることにある」

ということを僕は路上でお婆さんから学んだ。


これこそが人助けをした帰り道に感じた「ぽかぽか」の正体だったのだ。

この高揚感はその日眠るまで続いた。


なので、2021年、森井悠太は

「親切、はじめました」

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【ここからは〝森井書店〟のお時間です。】

~記事の内容に合った「10年後もあなたの本棚に残る名著」を90秒でさくっと紹介するコーナーです~

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今回のテーマは「親切と幸せ」

ポジティブ心理学の本で有名どころはだいたい読みましたが、僕が一番好きなのはショーン・エイカー教授の『幸福優位7つの法則』という本なのですが(激オススメです!特に冒頭の38~50ページまでの12ページは、豊富な事例と流れるような論理展開が神がかっていてすごすぎて震えました。心理学の教授の中で世界一文章が上手いと思いました)、せっかくなので今回は本文にも出てきたソニア・リュボミアスキーさんの『幸せがずっと続く12の行動習慣』をご紹介します。

もともと「人に優しくすればいい気分になれる」「本当の幸せは人を幸せにすることにある」というようなことは何世紀も前から言われていました。「情けは人の為ならず」ってやつですね。

そんな中、それが科学的に信憑性のあることなのかを研究し、「親切な行動を増やせば、幸福度が高まる」という考え方を世界で初めて示したのがこの本の著者であるソニア・リュボミアスキーさんです。超すごい人です。

(もう30秒も経ってしまったので)なぜ親切が体にいいのかは本書に譲りますが、親切の頻度と程度のお手本としてオススメしているのが「週に1日、曜日を決めて(例えば毎週月曜日など)、新しくて特別な大きな親切を1つするか、小さな親切を3つすること」です。

そのアイデアとしては……

①時間の贈り物をあげる
→修理が必要なものを直す、庭の草むしりをする、子どもの面倒を見てあげるなど

②相手を驚かせる
→サプライズ!

③自分にとって当たり前でない行動を何か試す
→この著者にとってで言うと、勧誘の電話をかけてくる相手に礼儀正しく接するなど

④苦境に立たされている人に寄り添う
→解雇された、体調が悪そうにしている、電球も交換できないような老人に手を貸してあげるなど

があります。

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これも先週の話なのですが、いきなり重たい話になってしまいますが、仲の良い友人が中絶手術を受けました。複雑な事情により中絶という選択をすることになってしまい、友人はとても落ち込んでいて、夜中に連絡が来ました。

僕は話を聞くことしかできなくて、勇気付けられたかもわからず、とてももどかしかったですが、話を聞き終えた夜中3時、今から言うことはとても不謹慎に聞こえてしまうかもしれませんが、(これはその時本人にもLINEで伝えましたが)、なぜだか僕が精神的に楽になっていたのです。

ちょうどその日、僕は仕事で同じミスを二度もしてしまい、家に帰ってきてから珍しく落ち込んでいました。自分は本当にだめなやつだなぁと布団の中で病んでいたら、中絶をした友人から連絡が来て話を聞くこととなります。

そのときは自分の立場より辛い状況にいる人がいるとわかり、自分の状況なんて大したことないと思えたから精神的に楽になったとばかり思っていましたが、今これを書きながら違うことに気がつきました。

寄り添っていたからです。苦境に立たされている人に寄り添うことで、僕が救われていたのでした。

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「森井書店」今回が初めての試みだったのですが、いかがだったでしょうか?ギリギリ90秒でおさまり、麺も伸びずにすみました、さぁ召し上がれ。無知から未知へ、いってらっしゃいませ!

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■関連記事

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最後に、完全に余談ですが、お婆さんの携帯に電話番号を登録してあげる時に、久しぶりのガラケーで漢字の変換の仕方がわからなかったので「耳鼻科の名前、(登録するのに)平仮名でも大丈夫ですか?」と言ったら、

「平仮名はいけるわよ!漢字も読めるからね!」と言われました。

ふむ。地獄に仏や(言いたいだけ)。

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大学生の頃、初めて便箋7枚ものブログのファンレターをもらった時のことを今でもよく覚えています。自分の文章が誰かの世界を救ったのかととても嬉しかった。その原体験で今もやらせてもらっています。 "優しくて易しい社会科学"を目指して、感動しながら学べるものを作っていきたいです。