50億年後の地球と魅力的な絵と関係性について
お兄ちゃん(Sくん8歳)は春でも冬でもいつの間にか下着になって「いい感じの棒」をふりまわしつつ、妹に適切なツッコミを入れていきます。
死後の世界で何年生きたいか、という仮定のうえにまた仮定&ロマンチックをぶちこんだテーマが最近我が家の子供たちの間では熱いです。
「流石に50億年は生きたくないでしょ・・・」と長女(Kちゃん12歳)はため息まじりに言い、
「わたしは千年くらいでいいわ」と平安時代から現代までの長さをまるで謙虚の末の数字のように言います。
「僕は死んだら死んだでいいよ」と遠い未来のことに関心がなさそうなRくん(10歳)と、「僕は一万年くらい」と一万円札に大きな憧れを抱くSくん。
そんな子供達の話をおばあちゃんはニコニコしながら聞いています。
その時、Sくんが「おばあちゃんはあと20年くらいしか生きないでしょ?」と無邪気に言ってドキリとしました。
おばあちゃんは80歳。常識的に考えて、100歳まで生きれば長生きです。
でも50億年や一万年の話をしているときの「20年」は、ひやりとしたリアリティを持っていました。
おばあちゃんは面食らいつつも「悪かったわねえ」と笑います。
「おばあちゃんは死んだ後もみんなのこと見てるんだからね」
そう言うおばあちゃん。その言葉がどれほど本気か、一番わかっているのはおそらく私です。
死後の世界で何年生きたいか、と問われたら、おばあちゃんはきっと「孫たちが生きている間中見守りたい」と言うでしょう。そこには愛したからこその関係性の太いアンビリカルケーブルがつながっています。
以前漫画家の先生方が「漫画における魅力的な絵柄とはどんなものなのか」というテーマで話をしている時がありました。
あなたにもきっとある「自分にとって魅力的な絵柄」。それをなぜ「魅力的」と思うのか、言葉で説明できるとすれば今すぐコメント欄で教えてもらいたい。
恋をする理由を問われたときのような難しさがこの問にはあります。
「魅力」という、創作者が喉から手が出るほど欲しい魔法が何から生まれるのか、何を感じて私たちは「魅力的」と思うのか・・・。
「関係性を感じられるかどうか」
私はこの言葉にハッとして、綺麗に並んだ縦糸に横糸のシャトルが通り始めた気持ちになりました。
その絵と自分は関係がある気がする。
自分の好きなものに似ている、自分の苦悩に似ている、自分の欲望に似ている、自分の憧れに似ている、自分の反応に似ている、自分の成功に似ている、自分の欲しい躍動に似ている・・・
驚きの中で「絵」と何らかのつながりを感じる時、それは魅力に映るのではないか。
その不思議さを「関係性」という言葉で表現できるのではないか…と、
強い思いの正体の一部を言い表してくれている気がしました。
おばあちゃんが孫に抱く愛情はまさしく「関係性」があるゆえの想い。
でもこの言葉はもっともっと広く蜘蛛の巣のように広がり得る思考です。
孫じゃなくて、好きなアイドルの行く末を見守りたい人もいるでしょう。
好きな文化の100年後の変化を見たい人もいるでしょう。
科学に強いつながりを持つ人は200年後の科学技術はどんなものかきっと見たいし、人類の思想に興味がある人は500年後のことも1000年後のことも知りたいに違いありません。
地球に住む生き物自体に深い関係性を感じていれば、50億年後の地球のことだってきっと見届けたいと思うのです。
なぜかわからないけれど「50億年後まで(妖怪として)生きたい」と思うWちゃんは、この地球という大地と深く強く繋がっているのかもしれません。
自分の死後にどれほど(妖怪として)生きていたいか、なんて問いを真面目に考えるのもどうかと思いますが、それは翻って「自分は何と繋がっているのだろう」と考える機会になりました。
血縁、趣味、推し、文化、国家、医学、音楽、自然科学。
命を超えたエネルギーをどれだけ遠くまで放り投げられるでしょうか?
788年前の今日。
1235年の5月27日に誕生した百人一首の記念日にそんなことを思いました。
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末次由紀のひみつノート
漫画家のプライベートの大したことないひみつの話。何かあったらすぐ漫画を書いてしまうので、プライベートで描いた漫画なども載せていきます。
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