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【今でしょ!note#71】 観光白書から観光業の概観を掴む

いかがお過ごしでしょうか。林でございます。

1990年代前半のバブル崩壊以降、低迷し続ける日本経済の起爆剤として、観光産業が期待されていることは、皆さんもよく聞くところと思います。

自動車をはじめとした、かつての製造業のような巨大産業だけでは、過去の経済成長は見込めず、サービス産業へとシフトしつつあります。
この流れの中で注目されている観光業について、国際比較における日本の状況や、数字で実態を理解するということをあまりしてきませんでしたので、一度自分の基本知識の定着のために、まとめておこうと思います。

観光庁が公表している「観光白書」令和5年版をもとに整理しておきますので、概略だけでもいいから把握してみたい、という方は、ぜひご覧になってください!

2022年の世界の観光トレンド

UNWTO(国連世界観光機関)の2023年1月の発表によると、2022年の世界全体の国際観光客数は、9億人を超えて新型コロナウイルス影響による落ち込みから回復傾向を示しています。
ちょうど先週、同機関が2023年の国際観光客数を公表していて、12億8600万人と、コロナ前(2019年)の約88%まで回復していることが分かります。

地域別には、中東において前年比22%増と大きく伸びたほか、欧州・アフリカ・米州もコロナ前水準の90%以上まで回復しています。
アジア・太平洋地域は、65%程度の回復ですが、UNWTOは24年には回復が進むとの見立てを表明しており、世界全体でも2024年には、コロナ前と同水準にまで回復すると見込まれています。

2023年の国際観光客数は、2016年をすでに上回っています
2010年代のグローバリゼーションが数字にも顕著に表れています

国際観光客数の地域別傾向では、2022年観光客数9億1700万人のうち、欧州を訪れた人が半分以上の約5.8億人とあります。
欧州諸国は、世界的にもコロナ後の移動制限解除が早かったこと、特にEU諸国は陸続きで、近隣に一定所得がある国民が生活している国が集まっているエリアであることから観光業がもともと強い地域ということで、まぁ納得な数字です。

アジア太平洋を訪れた観光客は、全体の1割に満たない数字です

訪日旅行の状況

訪日外国人旅行者数は、2019 年には3188万人と過去最高を更新していましたが、2020年以降、コロナ拡大防止目的の水際措置強化により減少していました。

2010年代の伸びが右肩上がりになっているのは、2012年に発足した第二次安倍政権が円安を背景としたインバウンド政策の一環として、タイやインドネシア、中国などの国へのビザ発給要件の緩和を行なったことがあります。
また、東アジア・東南アジアなどの比較的近い国が急スピードで成長し、海外旅行ができる人の総数が近隣国で増えたことが要因と考えられます。

訪日外国人旅行者数の推移

直近の数字を見ると、2023年4月時点でコロナ前水準の66%に該当する2,000万人近くまで回復しています。
下図のグラフにはまだ出てこない23年5月以降はコロナ第五類への移行措置がなされていますから、24年にはかなりのところまで回復してくることが予想されます。

22年10月から一気に増加傾向に。このタイミングで日本政府が
個人旅行受け入れ、査証免除措置を再開したことの結果が出ています

2022年の訪日外国人旅行者数を国・地域別に見ると、アジア主要市場からの旅行者数が279.1万人となり、全体の7割以上を占めています。
東アジアでは、韓国が101.3万人と最も多く、台湾(33.1 万人)、香港(26.9 万人)と続き、全体の47.0%を占めました。

ベトナム、フィリピン、タイなどのASEAN主要国からの訪日外国人旅行者数も93.5万人にのぼっています。

比較的近場のアジア地域からの旅行者が大半を占めている

日本では、2006年に観光業を国内経済の基盤とする「観光立国推進法」が成立し、2007年に施行、2008年には観光庁が発足しました。

もともと2020年に訪日外国人数4,000万人、2030年に6,000万人という数字目標を掲げており、2020年にはコロナ影響で未達となったものの、2030年に向けた目標は継続されました。

目標達成に向けた政府施策として、フリーWifi整備、洋式トイレの準備、多言語対応などの受け入れ環境整備のほか、バリアフリー化、大型連休からずらした旅行や旅行をしながら仕事をするなどの新しい旅行スタイルの定着に力を入れていくとしています。

また、2030年には、6,000万人という数字と同時に、訪日外国人旅行消費額15兆円という数字も掲げています。
当目標の達成においては、日本が長い年月をかけて築いてきたもので、他国が簡単にはコピーできない「文化」「食」「自然」をうまく活用し、お金を落とすためのコンテンツ設計、付加価値サービス拡充、プロモーションが鍵となっています。

国籍・地域別の訪日外国人旅行消費額

2022年の訪日外国人旅行消費額は、9,000億円弱で、旅行者数としては多くないものの中国とアメリカの消費額で2,000億円近くを占めています。
富裕層観光に限らず、やはりこれら先進国旅行者や成長著しい東南アジア諸国などの一人当たり消費額をいかに大きくするか、リピートしてもらうか、が観光産業の鍵ですね。

2022年の実績値ベースでは、総計400万人弱で消費額が9,000億円弱となっていますから、2030年に15兆円を目指すのであれば、人数としては17倍の6,800万人が必要ということになります。
これを6,000万人で達成しようとしているわけですから、やはり一人当たり消費額の増加が大切です。
周辺国は日本よりも成長幅が大きく、今後もインバウンド観光者数は増えていくことが予想されますから、受け側として、きちんとお金を使う場所の設計、適切なバリュープライシングにかかっています。

国内観光はほぼ横ばい

2022年の日本人一人当たりの国内宿泊旅行回数は1.2回、日帰り旅行回数は1.1回、一人当たり宿泊数は1.9泊となっています。
コロナ前においても、一人当たり宿泊旅行回数は2.3回程度と、私としては少ない!という感覚です。

コロナ前の国内旅行関連の数字はほぼ横ばい

私は、移動して色々なものを見る・美味しいものを食べる・飲むのが好きという性格もあるのかもしれませんが、おそらく1年に1度も旅行に行かないという人も一定数いるのでしょう。

私が特に注目したのは、宿泊日数の短さです。

国内だと土日祝の3連休があれば、1泊2日で残りの1日は休憩日みたいな感じで予定を組む人が多いのかと推察しますが、年休取って、せめて2泊3日くらいがスタンダードになればいいですね。

特に私の場合は小さな子どもがいるからかもしれませんが、1泊2日だと、ともに移動日になるので、ほぼ休めずにバタバタしてかえって疲れてしまうイベントになってしまいます。

日本国内における旅行消費額

上図の通り、日本人の国内宿泊旅行および国内日帰り旅行の消費額推移を見ても、2013年→2019年でほとんど変わっていませんが、仮に1回の旅行プランを、1泊2日から2泊3日に延長するだけで、結構消費額は変わってきます。

コロナ禍がもたらしたリモートワークの普及、仕事への価値観の変化により、1泊延長くらいなら、結構ハードル下がりましたよね。
仮に1泊延長で一人あたり宿泊代がプラス15,000円だとして、日中ご飯食べたりで何やかんや20,000円使ったとします。

日本全体の人口ざっくり1.2億人から、18歳以下と75歳以上人口である約1,700万人を引いても1億人くらいいますから、1億人×2万円=2兆円の消費増が見込めます。

ぜひ、そんな小さなところから、消費増に繋がり観光業がもっと盛り上がるといいなと思います。

それでは、今日もよい1日をお過ごしください。
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林 裕也@30代民間企業の育児マネージャー
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