【19】Books&Appsで取り上げた、文章力と知恵を提供してくれる書籍15冊。

文章力は独学では向上しない

「文章力」を向上させるために何が必要ですか?と聞かれたら、まず「書くこと」を挙げるのは当然だ。

だがもちろん、漫然と書くだけでは、文章力は向上しない。
技能とは、まず「お手本」があり、お手本と自分の技能の差を認識し、アウトプットの修正を繰り返すことでしか改善されない。

このことは、下で紹介する、心理学の研究者に依る著作「超一流になるのは才能か努力か?」においても、繰り返し語られている。
「自己流」をいくら積み上げても、大した技能の向上はないといえる。


だが「私には文章を直してくれる人はいない」という方がほとんどだろう。
独学で文章力を向上させることなど、果たしてできるのだろうか?

この点に関して、最も良いアドバイスをくれるのが、アメリカ建国の父の一人であり、稀代の天才であるベンジャミン・フランクリンだ。

ベンジャミン・フランクリンの著作「フランクリン自伝」には、父親に「お前は文章がヘタクソだ」と指摘され、一念発起して鍛錬を始めた、彼の文章の練習方法が詳細に記述されている。

このころたまたま私はスペクテイター紙(一七一一年アディソンとスティールがロンドンで創刊した日刊紙。翌一二年廃刊)の半端物を見つけた。
第三巻だったが、この新聞はそれまでに一巻も見たことがなかった。
私はこれを買い求めて再三熟読しているうちに、大変面白く思われてき、立派な文章だから、できれば真似てみたいと考えた。

その目的から、同紙の文章をいくつか選び出し、一つ一つの文の意味について簡単な覚え書を作り、そしてそれを数日間放っておいてから、今度は本を見ないで、頭に浮んで来る適当な言葉を使って覚え書にしておいた意味を引延し、原文にできるだけ近く表現しながら、もとの文章に戻すことを試みた。
それから原文と私の書いた文章とを比べ、誤りを見つけては訂正した。

すると私は自分がいかに言葉を知らないか、また知っている言葉でもやすやすとは思い出して使えぬことに気がつき、もし詩を作りつづけていたら、とうの昔にそんなことはできるようになっていたろうと思った。

彼によれば、「うまい・面白い」と思った文章を、記憶を頼りに再現する練習を繰り返した結果、彼の文章力は飛躍的な向上を遂げた。

ベンジャミン・フランクリンは練習の成果を次のように述べている。

これによって私は思想を整理する方法を学ぶことができた。あとで原文と比べあわせてみると、私の文章には欠点が沢山見当って直さねばならなかったが、時に、些細な点ではあるが、論の運び方なり言いしなりが、幸い原文よりもよくなっているように思えることもあって気をよくしたものだ。

これに力をえて、そのうちには相当な文章家になれないでもあるまいと考えるようになった。私は是非ともそうなりたいと思っていたのだ。

余談だが、私の文体の元ネタは、ピーター・ドラッカーの日本語訳を手掛けている上田惇生氏のものだ。

上田惇生氏のドラッカー本の翻訳は大変素晴らしく、「こんなかっこよい文章がかけたら素晴らしいなあ」と、文体を真似ているうちに、自分の文体がいつの間にかできていた、という具合だ。

これまでに紹介した「お手本となる」書籍

したがって、「文章力向上」を目指すのであれば、ライターはお手本となるような書籍を読み、自分の文章に反映させる練習を積まねばならない。

また、以前の記事でも書いたが、面白い記事の本質は「知の連結」であるから、知の源泉たる「本」を読めば読むほど、文章の質を向上させやすい。

では一体、どんな本を読めばよいのか。

残念ながら「万人に向いている」本については私もよくわからない。
しかし「Books&Appsの読者」であれば、間違いなくおすすめの本は数多くある。
具体的には、以下だ。

なお、下では翻訳本を多く取り上げているが、これは「ライティング時に役に立つ知識」が網羅されていることが前提であり、「文体」を二の次においているためだ。

とはいえ、上田惇生氏のように、海外の難解な書籍を、日本語にわかりやすく置き換えてくれる翻訳者の技能には、恐れ入るばかりだ。


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