【25】ブログで稼げなくなった今、ライターがまともに稼げる領域はどこにあるか。
2010年頃、「ブログで稼ぐ」というキーワードが、インターネット上で流行りました。
まだ、副業ブームの起きる前だったでしょうか。
実は2003年〜2005年頃に、「第一次ブログブーム」がありました。
NHKで「アルファブロガー」の特番が組まれたくらいです。
ただ、それはPCでインターネットを使う人のためのもので、
真に大きなムーブメントではありませんでした。パソコンを使えない人も多かったですからね。
ですがその後、大きな転換がありました。
それは、2008年の、iPhoneの発売です。
iPhoneは、すべての人にとって、インターネットを一気に身近なものにしました。
そして、その頃から急に、「普通の人」が、インターネットで「ブログを読む」という方が増えたのだと思います。
「ブログ飯」なんていうキーワードが出てきたのもこの頃で、本なんかも出版されました。
古き良きインターネットを知る人にとっては、いい時代、と認識されているかもしれません。
私も2012年からブログを書いので、ちょっと遅れてブームに乗った人間の一人、という感じでしたが、
ブログを書く人が増えて、インターネットで読めるコンテンツも随分と多様化しました。
その頃はまだSNSがそれほど一般化しておらず、「使う人は使ってるるよね」と言った感じだったのですが、
ブログ+SNSで拡散という流れができたのも、ちょうどこの頃だったと思います。
「バズる」なんて言う言葉が使われだして、「ナンノコッチャ」と思ったことを、よく覚えています。
で。
ちょうどそのころ、個人でもかなりアクセスを集めるサイトを持つ人が増えてきました。
月間100万PVもあれば、ネット上ではちょっとした有名人になれます。
往年のイケダハヤトさんや、ちきりんさんなどは、その好例だと思います。
その記事は、従来のニュースサイトでは決して読めない、
まさに「生々しい、現実の人が考えていることが、そのまま文字になった」ものでした。
初めてそれを見た時、私は興奮しました。
「随分とはっきり物を言う人達だなあ」と思いましたが、従来のメディアが言えないことを、スパッといい切ってくれる数々のブログは、私にとって2ちゃんねる以来の良い読み物になったのです。
*
さて、そうした流れの中、人々の耳目が集まると必ず「それをお金に変えられないか」と考える人が出てきます。
特に、2003年に始まったGoogleアドセンスは、ブロガーがトラフィックを集めると、それを自動的jに収益に変えてくれる素晴らしいツールでした。
アドセンスは、PC時代に一度大きく広まりましたが、iPhoneと共に、2010年頃に再度、爆発的に広まりまったのです。
また、「アフィリエイト広告」という、成果報酬型の広告も勢いを増しました。自分自身のブログに広告を貼り付けて稼ぐことができるようになったのです。
これは恐ろしく画期的だったと思います。
なにせ、その頃は「会社員が、会社以外から収入を得る」なんてことは、殆どなかったのですから。
終身雇用制度の崩壊と相まって、先行きに不安を覚えた、特に若者たちが大勢、「ブログで稼ぐ」に参入しました。
中には、一部の先行していたブロガーに「月に100万稼げる!」などといった文言で煽られ、会社を辞めたり、地方に移住する人まで現れました。
そうして、地方のおじいちゃん、おばあちゃんまで「ブログ」という言葉を知ったのです。
ところが2016年末、そのブームは唐突に終りを迎えます。
welq問題、要するに今で言う「フェイクニュース」の問題です。
幻冬舎ウェブマ
「WELQ」とは、当時、株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)が運営していたヘルスケア情報キュレーションサイト。いわゆる、まとめサイトです。圧倒的な情報量が特徴で、医療情報を検索すれば必ず検索上位に表示される人気サイトでもありました。
しかし、2016年末にWELQが不正確な医療情報記事を大量に公開していたことが発覚します。「ブラックシードという健康食品はあらゆる病を治す」であったり「肩こりが酷いのは霊のせい」など、医学的根拠の無い低品質な記事が次々と暴かれ、SNS上で話題となりました。キュレーションサイトで大量に公開されていた記事のほとんどが、医療に関して素人のライターが書いたものだったのです。
医療情報は人の命に関わります。その医療情報に対する不誠実なメディア運営は、大きな批判を浴びることとなり、ネットにある医療情報の信頼性を揺るがす一大事件となりました。この騒動を受けて、運営元であるDeNAはサイトを閉鎖しています。
「とにかく耳目を集めれば金になる」という事がわかったwelqは、Googleの検索ロジックに対してハッキングを仕掛けたと言って良いでしょう。
そして、彼らはwebから追放されました。
この事件、一見「サイトの閉鎖」で一件落着に見えますが、波及効果がありました。
それは、有象無象の大勢のブロガーたちへの影響です。
Googleによるwelq問題を受けての、検索結果表示ロジックの変更は「権威性」の重みが増し、次第に「大手企業」の所有するサイトを優先的に表示するようになりました。
いままで大手を抑えて、検索上位にいた個人のブログは、これによってほとんど消滅しました。
その結果、アドセンスでも、アフィリエイトでも「ブログで稼ぐ」が極めて困難になってしまった人が大勢出ました。
また、SNSを利用する人が増えた影響で、Googleの検索エンジンの必要性が低下し、次第にブログからは人がいなくなりました。
「検索エンジンをハックして、稼ぎましょう」が通用しなくなったのです。
結果、2016年当時からわずか2年程度で、「ブログで稼いで、自由を手に入れる」と張り切っていた若者たちは、霧散してしまいました。
ついにブログは「稼げるツール」ではなくなってしまいました。
では、彼らは一体どこに行ったのでしょう。
それは、Youtubeです。
現在、「個人で稼げる」ネタの最前線は、Youtubeを始めとした、動画メディア上に存在します。
私が知る限り、イケダハヤトさんは、このような嗅覚がたいへん鋭い人の一人ですが、彼はいま、Youtubeを勧めています。おそらく、それは間違っていないでしょう。
実際、つい先日Yahooニュースで「世界一稼いだYoutuber」の記事を見ましたが、それはなんと、8歳の子供でした。
単に玩具のレビューをするだけの番組なのですが、なかなか夢がある話です。
Youtubeは「動画」「非言語」という特性上、ブログに比べて、遥かに視聴者の裾野を広く取れます。
それはすなわち「マーケットが大きい」を意味しますから、ブログよりも大きく稼げるのは納得です。
では「ブログは死んだ」のでしょうか。
とんでもない。
確かに、ブログは「個人の稼ぐツール」ではなくなりました。
が、ブログは「企業の集客ツール」としては依然として有効です。
むしろ「個人」の力が弱まった結果、企業にとっては非常に使いやすい物となってきています。
実際、特にブログを有効に使える属性の企業群があります。それは
ここから先は
生成AI時代の「ライターとマーケティング」の、実践的教科書
ビジネスマガジン「Books&Apps」の創設者兼ライターの安達裕哉が、生成AIの利用、webメディア運営、マーケティング、SNS利活用の…
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?