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国産SaaSのアメリカ展開はじめの一歩(3つのしくじり)

こんにちは!コミューンの高田です。
BRIDGEさんで記事を掲載いただいたように、2021年12月にアメリカ展開を決め、8ヶ月ほど経ちました。

この記事では、「はじめの一歩」として具体的にどのようなことをしてきて、どのような学びや反省があったのか、記します。
正直うまくいっていないことばかりなのですが、US展開を考えるスタートアップの皆さんや、海外キャリアに興味があるみなさんの参考になればうれしいです!

プロダクトのグローバライズ

コミューンは立ち上げ段階から一貫して日本語版のみを提供していたので、まずプロダクトの英語対応が必要でした。

ユーザーが使えるものを出すまでに半年

これが意外と大変で、i18n(インターナショナライゼーション)専任チームを作ってから、ユーザーが使えるものを出すまでに半年ほどかかりました。

そもそもB2B SaaSの場合はシングルコードベースが原理原則なので、一つのプロダクトの中で日本語、英語が共存する形で作成しないといけません
英語版はコードベースを分けて0から…という選択肢に比べて開発の複雑性が高まります。日本語版の開発・改修と並行して膨大な量のファイルの多言語化をリリースしていくのに苦戦しましたし、日本語版に影響が出ないように慎重に進めるためにかなりの手間がかかりました。

また、単純に日本語→英語に翻訳していけばよいわけではなく、文化翻訳も必要です。
例えば日本語だと「17時開始のイベント」のように24時間表記が普通ですが、US(というか英語圏)だとAM/PMが普通なので、「5PM開始のイベント」としないといけませんし、そもそもアメリカの中でも時差があるので、「5PM(PDT)」などに設定できるようにしないといけません。
コミューンの場合は管理者(クライアント企業)によるカスタマイズ性があるプロダクトなのでより難しく、管理画面には更に日本人にしか伝わらない仕様が…などなど、気が遠くなるような作業です。実際に一部の仕様については未だグローバル最適化の途上です。

実務面の詳細はi18n チームのざびえるさんのブログ記事をご覧ください。

ようやく今から最適化!

ユーザーが使えるものを出す、というところまでで半年ですが、これで終わりではなくようやくスタート地点に立った感じです。
現在は、グローバルニーズに合わせたプロダクト最適化、そのための組織変革という一層難易度の高いチャレンジへの挑戦をはじめています。

日本事業の権限移譲

US事業に私が集中するため、日本事業の権限委譲や役割の変更を行い、週80%をUS事業に割くぞ!と意思決定しました。

これがなかなか難しくて、結果的に週50%をUS事業に使えるようになるまでに3-4ヶ月、80%にできたのはここ最近の話です(し、今でも週によって波があります)。

難しかったポイント①:ちょっとずつボールを渡していくことと、自分が持ち続ける20%は何なのか?を見極めること

そもそもコミューンはアーリーステージのスタートアップ。1日1日でどんどん変化していくし、経営判断と事業判断がほぼ同義なので、「この日から一切任せます!」が難しい。段階を設けて渡さないと誰も幸せにならない構造になってしまいます。
また、私の場合は採用とビジョンテリングは持ち続けてオペレーションは手放す、というのがあるべきだったのですが、割とオペレーションが好きなのでそこに時間を使ったのがミスだったなと思います。

難しかったポイント②:売上の100%が日本事業から来ているなかで、日本のオペレーションを腹くくって見ないようにする覚悟

ポイント①でオペレーションに時間を使ったのがミスだった、と書きましたが、ロジカルに考えると日本の事業オペレーションに自分の時間を使うのが向こう1年の売上を最大化するんですよね。。
5年、10年スパンでの勝負をするんだ、という覚悟を持って、日本の短期オペレーションは頑張って見ないようにする、というのがすごく難しかったです。
正直、今も苦労しています。

USの顧客ニーズ調査

週の50%をUS事業に使えるようになってから、具体的には4月ごろから顧客ニーズ調査をはじめました。
いまもまだPMF前ですしヒアリングは続けていますが、とにかく大量に生の声を聞くことが大切だと思っています。

100人近い方にヒアリング

リクルーティングの手段は紹介、アウトバウンドメール、オンラインコミュニティでの打診です。

アメリカのSaaS関係者にほとんどつてがなかったので紹介は数えるほどで、それ以外はほぼアウトバウンド、コミュニティ経由で話をさせていただきました。基本は気合です。

ヒアリングの学び:No Showは当たり前

  1. サポーティブな人が多い!無償でもヒアリングに協力してくれる人はたくさんいて、ほんとありがたいです。

  2. 本音を引き出すのに苦労します。愛想がよくて社交辞令感が強いので、特に初対面の人にガンガン率直なフィードバックをしたがる人は多くありません。すごいよさそう!とか適当に言ってくるので本気にせず深堀りが必要です。

  3. 平気でNo Showされます。日本だと「ミーティング設定は大変だけど、一度設定したら基本参加してくれる」と思いますが、USだと「ミーティング実施は承諾してくれるけど予定された時間に来ない」ことが全然あります。日本からCallするときは3時起き、4時からコールとかだけど、No Showされても落ち込まなくなりました。笑

具体的な学びの詳細はこちらのNoteに記載がありますが、コミューンにおいては結構日本とアメリカのニーズに違いがありました。

わたしにとってはアメリカの人にプロダクトを説明してフィードバックをもらえる事自体が常に楽しいことなので、もっと多くの方とこの経験を分かち合いたいな〜と思います!(コミューンではヒアリング録画やメモが見放題です✌)

しくじり(反省)

さて皆さんお待ちかねの反省パートです。
ここまでのセクションでも一部反省が漏れ出てしまっているところがあるように、反省するところがあまりにも多い半年ちょっとでした。
大きなところを、恥を忍んで共有します。みなさんの役に立てば幸いです。

日本人には無理!という先入観が強く、アメリカ人採用に初期多くの時間を割いてしまった

アメリカの顧客は、会社が日本発でCEOの国籍が日本人でも特段気にしません。
なんならアメリカ人の殆どが日本発のSaaSを見たことがないので、むしろ物珍しさからポジティブに働き興味を持ってもらえることさえあります。

こちらの記事に記載のように、アメリカのユニコーンの内、非アメリカ人(移民)が創業しているスタートアップが55%を占めています。

プロダクトがよければどこの国から来た人のプロダクトでも使われるのがアメリカのいいところです。

にも関わらず、私はなんとなく日本人には無理なのではと思いアメリカ人のセールスを採用しました。
しかし、そもそもファウンダー/CEOがやってうまくいかないなら誰がやってもうまくいかないですし、PMF前の検証フェーズでチームメンバーが増えても情報共有の必要性が増えるだけでいいことは一つもありません。

今考えると、ド初期にアメリカ人採用に時間使うのではなく、とにかく創業者自身によるカスタマーディスカバリーコールとプロダクト開発に時間とお金を使うべきだったと思います。

*ただしこれは私が英語が話せてUSに行ける状況であることが大きいです。ご自身では難しい場合はまずカントリーマネージャーを採用する、というのが定石だと思います。
が、個人的な所感としてはCEOが英語話せない場合はレイター/上場してからUS展開したほうがよいんじゃないかなと思います。(理由は直接聞いてください!笑)


プロダクトづくりの初期にグローバライゼーションを前提とした設計にしておけばよかった

たらればすぎる話ですし、そもそもコミューンが日本でPMFして売れるかもわかっていなかったので仕方ないのですが…。

プロダクトが一定発展してからのグローバライゼーションは大変です。上記のi18nも、初期からグローバル対応を前提とした設計にしていればどんなによかったか、、、と思います。

単純に所要時間が変化するだけでなく、グローバライズの過程でどうしても日本に影響が出てしまう部分が発覚することもあり、そのたびに対応に悩みます。

また、「SaaSがUSにチャレンジする」という場合、多くのケースで日米でニーズが違うはずです
日本で一定事業が立ち上がっていると、明らかにUSの方が潜在市場が大きいけど日本事業の売上拡大も大事…という悩みに常に向き合う必要が出てきます。

前向きに考えると、今からはグローバルニーズへのプロダクト最適化、本格的な挑戦に取り組むことができる一番楽しいフェーズなので、ワクワクしています!😊

シードスタートアップの自覚を持ち、身の丈にあったステップで検証を進めるべきだった

日本で事業が立ち上がっていると、他国展開の際に欲張って色んなことを一度に検証しようとしてしまいがちです。
そうするとお金とリソースが過剰にかかるし、if(仮定)にifを重ねているから検証も非効率になります。

当社の場合は、最初から訴求価値やビジネスモデル、GTM、プライシング、組織体制、TAMなどなどあらゆることに目が行ってしまい、動きがシャープではありませんでした

日本でどんな状況でも、USではゼロ価値ゼロ検証フェーズで、シードラウンドである、という自覚が必要です。
そこで重要なのが、選択と集中です。

シードの会社として、最初はMVPをベースに、使ってくれる人がいるか、価値を感じてくれるのか、のみにフォーカスすればよかったと反省しています。

今後の展望

いまのコミューンUSは、数は少ないものの、新規ユーザーが使い始めるサイクルが回りはじめたくらいのフェーズです。

顧客ニーズに再現性が出てきていて、こちらのツイートにあるように、「この変化球見たことある!」という体験が増えてきました。一方で、それが打てるかどうかは話が別です。

アメリカはプロダクト次第

とにかくいいプロダクトづくりが勝敗を分けます。
いまのコミューンのプロダクトは課題だらけで、今のままでは勝てないと感じています。

相手はメジャーリーグですからね。日本のプロ野球でそこそこだと勝てないのは当たり前なのですが…

プロダクトをもっと磨いて世界で使われるソフトウェアを日本から創りたいです。
前例も乏しいし、すごく大変です。
だけど、ソフトウェアの本場、USの顧客のフィードバックを生で聞けて、より良いプロダクトを作って彼らをハッピーにできる環境にはその大変さも飛び越える楽しさとワクワクがあります。

i18nは一段落しこれからプロダクト力の真価が問われるフェーズで、かつアメリカの顧客ニーズは掴めてきている
手前味噌ですがこんな機会なかなかないと思います。

ちょっとご興味でてきませんか?

ぜひ私のこれまでの学びや失敗、現在の課題についてお話させてください。いますぐ転職は考えていなくても歓迎です!
世界で評価される、グローバルプロダクトづくりを牽引されたいエンジニア、デザイナーの方、お待ちしております!


前を向いて粛々とやっていく(あとがき)

ポール・グレアムの「死なないために」のショートカットをスマホのホーム画面に載せて、よく見返しています。

そのなかの

スタートアップの死の根本的な原因は、創業者が無理だ、と思って諦めること

スタートアップがキーを叩きながら死ぬことはめったにない。だからタイピングし続けよう!

という言葉が好きです。

アメリカ展開は大変だ、と思っていましたが、予想通り大変です。
ですが、引き続き前を向いて一歩ずつ着実に這ってでも前進し続けていきます!


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