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「情報的健康」を知れば、情報社会の荒波を少しは乗り越えやすくなるという話

アメリカの10代の1日あたりのSNSの利用時間が2023年夏時点で平均4.8時間にのぼり、1日3時間以上利用する若者はうつなどを発症するリスクが2倍にー

このような研究結果を、頻繁に見聞きするようになりました。国内外で、デジタル分野における「規制」の話題が増えているように、最近ではもっぱら情報社会の負の側面が注目され、悪をいかに封じ込めるか、という論調が強まっています。

多くの人が実感値として、この情報社会を「生きづらい」と感じているのではないでしょうか。その打開策として注目されているのが、タイトルにある「情報的健康」です。その定義と、それを生活の中でどのように生かすべきか、考えてみました。


「情報的健康」とは何か

そのワードから「なんだかよくわからない怪しさ」を感じてしまう人もいるようですが、実はそれほど複雑なものではありません。

情報的健康とは、「情報に触れる」というあらゆる行動を、「食」になぞらえる考え方です。ごはんを食べるように、私たちは日々、スマホやPCから様々な情報を体に取り込んでいます。そして偏った情報ばかりを食べていると、やがて何らかの不調を来します。

現に今の情報社会では、海のものとも山のものともつかない情報を無意識のうちに食べさせられた結果、冒頭のような「不調」に至る人が増えているわけです。

私たちは情報を食べている・・・?(イメージ)※AI生成

そのような現状を問題視し、何を食べ・何を控えるのかを意識的に選択できる環境づくりを目指して、名だたる研究者たちが、この分野における研究に乗り出しています。

私の解釈では、情報的健康それ自体は「もののたとえ」であり、考え方の一つに過ぎません。そのレンズを通して世界を見渡すと、情報社会で起きているあらゆる事象がとても分かりやすくなるという、シンプルかつ意義深い価値が、そこにはあると感じています。

「情報的健康」が分かりやすくなる3つの実例

一つの例として、「偏食」を考えてみしょう。実際の食生活では、偏った食事ばかり採っていると、疲れやすくなったり、生活習慣病リスクが高まったりと、身体にさまざまな影響が出ます。 では、偏った「情報」ばかりに触れていると、どうなるか。分かりやすいのは陰謀論ですかね。楽しいから、といって陰謀論の記事や動画ばかりに触れていると…ちょっと、普通とは言えない精神状態に陥ってしまう可能性があるというのは、想像に難くありません。

似たような例として、「ジャンクフード」の置き換えはどうでしょうか。ファストフードのように手間をかけず簡単に食べられて、かつ栄養価のバランスを欠いた食べ物のような情報といえば…? 私の勝手なイメージでは、SNSであふれるコンテンツの中でも、見た後に「こんなくだらないもの、見るんじゃなかった…」と思ってしまうようなコンテンツが、これにあたる気がします。ちなみに「ジャンク」とは、英語で「がらくた」の意味。まさにそういったものが、SNS上にはたくさんあふれているのではないでしょうか。

さらには、不健康の代名詞ともいえる「メタボ」。日常的に何を、どれだけの量食べるか、ということに気を使わないと、体がどんどん肥大化してしまうように…日々どんな情報を、どれだけの量を接種するか気を使わないと…果たして、どうなってしまうでしょうか。専門家の間でよく指摘されるのは、次のような症状です。

  • うつや孤独感による自己肯定感の低下

  • ストレス症状

  • 集中力の低下、注意散漫、人の話を聞けない状態

  • 排他的、批判的、攻撃的な人格への変化など…

「メタボ」とは違って、「情報的な不健康」は見た目に分かりづらいのが難点です。その分かりづらさゆえ、深刻な問題として、なかなか認知されづらいという背景もあるように思います。

このように「食と健康」にあてはめてみると、デジタル空間で起きている様々な分かりづらい問題を、明快に説明しやすくなります。さらにはその「対策」を考える上でも、食と健康に当てはめることで、効果的なアイデアが浮かんでくるケースがあります。

「情報的健康」のメリットをどう活かすか

例えば「うつや孤独感による自己肯定感の低下」に悩んでいる人がいるとします。この場合、たとえ身体的には健康でも、情報的には…もしかしたら、不健康状態にあると言えるかもしれません。

そこで、SNSのような「ジャンクフード」の量を減らしてみる。そして、しばらくは「偏食」をやめて、たとえばテレビや新聞、読書などをバランスよく、健康的な「情報的・食習慣」を意識してみる・・・といった具合に、「食生活なら自分はどうするかな」と自分なりの仮説を立て、対策を練ってみることができるわけです。

当たり前ですが、「情報社会」というのは人類史上、初めて直面するエポックメイキングな事態です。脳へのマイナスの影響がどれくらいあって、どのように対抗したらいいかなど、知見やノウハウが何もありません。世界中でさまざまな仮説をもとに、「法規制」や「研究開発」が、まさに“手探りで”おこなわれているのが現状です。

そのため、デジタル空間で起こるあらゆる出来事に、だれも責任を持ってはくれません。自分の身は、自分で守るしかないのです。「情報に触れることは、ごはんを食べることに似ている」という考え方は、この時代を生き抜くための、力強い武器になってくれるはずです。

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