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今週の【情報通信をとりまく】気になるニュースまとめ

知らぬ間に「うざい広告」を消す機能が実装されていました。アップルはその事実をこれまでに明言していませんでしたが、実際に操作した記者が告発しています。消された広告はインプレッション換算されるのでしょうか。ウェブ広告業界に、少なからぬインパクトを与えそうです(ユーザーにとっては朗報?)

①PV至上主義時代に、定性評価する意義

良いニュースとは何か?という評価はとても難しい。しかし、ダイヤモンドさんはPV至上主義の時代に、しっかり定性面でも評価している素晴らしいメディアだということがよく分かります。

-最近では、コンバージョン(有料会員獲得)だけでなく、記事のクオリティにも注目している。例えばコンバージョンが良くなくても、ダイヤモンドのブランド向上につながる記事は評価するように
-週に1回の編集会議で「今週の良かった記事」を共有している。単にコンバージョンが良かった記事だけでなく、取材が難しかった企業の記事や、タイミングの良い深掘り記事なども評価
-実は記者編集者の評価にも、獲得数というのは入っていません。企画の提案本数と実現本数がKPIになっていて、そこを評価するようにしている

②巨大ロビー活動の実態

ジャーナリズム利用料を義務付ける法律に反対するグーグルは、1億6,000万円を反対の署名サイトなどへの広告キャンペーンに投じたと言います。

-CJPAは、テック大手が検索サービスやSNSでニュース記事を表示して広告収入を得た場合に、一部を「ジャーナリズム利用料」として報道機関に支払うよう義務付けるもの
-同様の法律はオーストラリアやカナダで制定されていますが、カリフォルニア州は全米初の法整備を目指していた
-最終的に、CJPAは議会を通らなかった
-その裏にはグーグルの存在があった。「グーグルはCJPAの可決に反対するロビー活動を行い、それがこの密室取引につながった」
-CJPAのような法律が成立した場合にグーグルが全米のメディアに支払うべき金額は年最大139億ドルにのぼる

③Googleが過激な見出しを評価せず?

ニュースメディアにとって重要な「トラフィック」の問題。注目されるGoogle Discoverがセンセーショナルな見出しを評価していないというのは良い傾向かもしれません。

-全体のトラフィックに占めるソーシャルメディアからのトラフィックの割合は2023年1月から現在で、6%から4%へと減少
-一方で、Google Discoverが新たな主要トラフィック源として浮上
-ある社ではGoogle Discoverが通常の検索を上回る最大のトラフィック源になっており、「ニュース報道、特に速報ニュースにとって、ますます有望な場になっている」と評価
-しかしGoogle Discoverでの成功の法則はまだ確立されておらず、各社が試行錯誤を重ねている段階
-Google Discoverの特徴として、従来のSEO戦略が通用しないこと、センセーショナルな見出しが効果的でないことなどが挙げられる

④アクティビストは自治体・・・勝算は

物言う株主は自治体?興味深いアクション

-岡山県真庭市は7月、JR西日本の株式3万4000株を約1億円で取得した。自治体による上場企業の株式取得は珍しい。背景には同市内を走る姫新線の廃線への危機感がある
-自治体が積極的にアクションを起こすことで、限界を迎えつつある仕組みを見直すきっかけにも
-株主総会では提案できず発言にとどまるため、影響力は限定的か。中長期的な企業価値創造を求める機関投資家の理解は得られない可能性

⑤多角経営こそメディアの生き残る道?

メディア企業がいかにしてビジネスモデルを多角化し、成長していくか。FT Strategiesによるレポート。

-400社以上のメディア企業に対する調査によれば、4~5つの収益源を持っている企業が最も利益率が高いという結果が分かった。他方、それらを超えてくると再び利益率は下がっていき、「全ての人に全てものを提供することはできない」ということを示しているとレポートは指摘
-事例からは、多角化に取り組むのに遅すぎることはないこと、既存の経験(印刷広告)を活かして新分野(デジタルマーケットプレイス)に参入できること、そして投資と同様に撤退の決断も重要であることを学ぶことができる

⑥情報空間の健全化に必要なこと

京都大学・曽我部教授による鋭い指摘。「良い情報」が「悪い情報」を駆逐するわけではないと。

-背景にあるのが、新聞、テレビなど伝統メディアの衰退だ。公共性や裏付けがある「良質」な情報を提供する役割を担ってきたが、発行部数も記事を書く記者も減り、全国紙ですら一部地域で発送できなくなってきた。情報空間に良質なコンテンツを供給する力が弱まっている
-発表に頼らない「調査報道」は時間もコストもかかるため、一般企業なら「不採算事業」と位置付けられて存続は厳しいだろう。新聞社の余剰利益でそのコストを吸収してきたが、長年続いたモデルは崩れ始めている
-正しい情報より扇情的な偽情報の方が早く、広く拡散しやすいこともわかってきた。膨らみ続ける情報量は、個人が理性的に正しく選別できる許容範囲を超えている
-一般企業が貢献できることもある。どこに広告を出すかが、情報空間に流れる情報の質に影響を与えるからだ。注目を集めるXのデマ投稿者に、広告費の一部が分配されるのが悪い例の一つだ。広告を通じて健全な情報空間を支える意識が広がると、状況の改善の一助になる可能性がある

⑦AI検索の覇者はメディアの敵か味方か

検索サービスでGoogle一強に挑むPerplexity。動向に注目したい

-報道機関などと広告収益を分配する『パブリッシャープログラム』を導入すると発表し、150超の報道機関から問い合わせを受けた。グーグルは収益分配を拒んできたが当社は双方の利益を一致させようとしている

⑧偽情報対策に政治圧力かかるワケ

フェイクニュースや偽誤情報を防ぐためのファクトチェックに対し、政治圧力がかかっている。今後の世界的な動向に注視する必要があります。

-背景にあるのが政治圧力だ。保守強硬派として知られる共和党のジム・ジョーダン下院議員が委員長を務める下院司法委員会は23年6月、SIO創設者のステイモス氏を呼び出して聴取した。下院は22年の米中間選挙で共和党が多数派を奪還し、偽情報研究への風当たりを強めていた
-「中国共産党にも匹敵する監視、検閲、統制の体制を築いた」と主張し、関与した研究者らを相手取り集団訴訟を起こした
-訴訟対応に費用と労力がかかり、研究に協力した学生を含めた関係者に嫌がらせも
-偽情報で世論を誘導する動きを防ぐのは重要だが、投稿の管理が行き過ぎると一部の側に有利に働くことにもつながりかねない。その線引きは難しい

⑨社会課題解決に企業の協力が必要な時代

社会課題を解決するために、企業の議論へ参加が重要になってきていると。背景にあるのは少子高齢化や人手不足。これまで地域貢献活動を担ってきたNPOや自治体にかわって、人モノ金を提供する立場に?

-埼玉りそな銀行サステナビリティ推進室の鈴木学室長は「地域社会をもっと良くしたいという志を持った団体や個人と貴重な交流ができる」とし、金融の枠にとらわれない連携強化に役立てる狙い
-地元企業が積極的に社会に関わることで、地域課題の解決と企業による新たな事業展開といった両者のメリットを追求していけるかが重要

⑩ウェブ広告業界を揺るがしそうな事実

知らぬ間に「うざい広告ブロッカー」がiOSに実装されていた。これはウェブ広告業界を揺るがしそう

-これまでアップルは目立つ形では言及していなかったものの、ネット広告に関わるマーケターにとって重要なiOS 18の新機能がウェブブラウザー「Safari(サファリ)」の「気をそらすものコントロール」である
-「非表示」という書かれたボタンを押すと、ちりとなって飛んでいくようなアニメーションが現れて、その項目が消える
-「うざい広告」に悩むユーザーにとっては便利な機能であることは間違いない
-デジタル広告に関わるマーケターや広告を掲載するウェブメディア視点で見れば、実質「広告ブロッカー」であると見なされる
-今回の「気をそらすものコントロール」もアップルがブラウザーの標準機能として提供することにより、ITPやIDFAと同様、ネット広告業界を大きく揺るがす可能性がある

⑪日本が先導するルールづくり

規模ではなく質を評価する世界へ?光の当たらないルールづくりは日本こそが先導すべきと。

-(G7における)首脳宣言は半導体やレアメタルなど購入時に価格だけでなく、供給の持続性や信頼性を重視する基準づくりを記した
-日本が数年前から米欧に訴えてきた「価格以外の要素が正当に評価される市場づくり」の成果
-国際ルールづくりは持続的な効果を期待できるが光は当たりにくい。「やっている感」だけなら投資規模を膨らませる政策のほうがよっぽど分かりやすい
-日本の国際競争力の復活に向け、ルールづくりという目立たない分野でも行動できるか

⑫デジタル民主主義カギは「大まかな合意」

こういう独自の発想がオードリータンならではだなと感じます。いつもポジティブな気持ちにさせてくれる。

-デジタル民主主義では『大まかな合意』を形成しながら議論の方向性を決めていく。インターネットの文化がまさにそうだが、試行錯誤を経て最適な解に向かおうとする発想だ。その際のルールは契約書のような明確なものではなく、家族の間の申し合わせのようなより緩やかなものだ。これは関係者の間に信頼関係がなければ成り立たない
-デジタル民主主義をうまく機能させるには、平時から人々が互いにつながりあうための『筋肉』を鍛えておくしかない。国全体といった規模である必要はない。自分の身の回りのコミュニティーで、一緒に解決策を考えるくせをつけておくべき

⑬Xなき世界でウェルビーイング?

Xが強制的に利用停止となったブラジルでは、メンタルヘルスの改善が進んでいる。

-3割以上の回答者が、Xの利用停止によってメンタルヘルスが改善したと感じている
-支持者の一人は「数年前にXを使うのはやめた。見ても疲れるコメントにあふれていた」という
-世界でも有数のSNS利用大国での壮大な「実験」が投げかけた問いは、言論の自由の問題とともに、SNSのあり方そのものにも及ぶ

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