書評:全経営者にお勧めしたい「失敗の本質」で挙げられた失敗の要素を53個並べてみたよ
こちらは以前に書いたサピエンス全史に引き続き書評というか要約のような記事です。
はじめに
以下の「失敗の本質」といえば言わずと知れた名著ですが、皆さんお読みにはなりましたでしょうか。
簡単に説明すると、大東亜戦争(太平洋戦争)に破れた日本軍の敗因を組織論から導き出していこう、という目的でミッドウェー海戦、インパール作戦など著名な戦いを取り上げつつ分析を行っていく、という内容です。
僕も存在自体は以前から知っていましたが、初めて読んだのは去年で、あまりにも良かったので最近再読しました。
なんらかの形でまとめたいと思ったものの、学びがとても多すぎるゆえにきちんとまとめるとかなりの時間が必要になってしまう。
ということで、本の中で挙げられていた失敗の要素を分類し、箇条書きでひとまず雑にまとめる、ということにしました。
完全に厳密なリストではありませんがご容赦ください。
失敗の要素53個
【戦略】
情報収集の軽視
戦略が論理ではなく願望によって成り立っている
前提と現実の相違が大きい
前提と現実の齟齬のすり合わせが行われない
外部環境の変化への軽視
使用される兵器や戦略論が古く適応できない
想定敵と現実での敵のズレ
組織内での想定敵の違い
戦略が複数示されている
作戦の目的が現場に共有・徹底されていない
戦略が短期のものでしかない
戦略の終了点が明確でない
失敗したときのBプランがない
敗戦などからの学習の軽視
変更が必要な際にそれらが行われない
補給・兵站意識が薄弱
戦略が帰納的に導かれる
行動様式足り得ない抽象的なスローガン
自軍戦力への奢り
敵戦力の過小評価
【人事・組織】
現場の権限範囲が不明確
現場での指示系統への不信感
心情を慮った判断
行き過ぎた責任論
失敗をした者への自決の強要、または当事者の自決
失敗への責任所在が不明瞭
組織の理屈(コネなど)での人事
信賞必罰でない
目的とは異なる方向への適応
軍が戦闘ではなく、統治機関として発達
暴走した個人を諌める手段がない
組織内での過度の秘密主義
失敗を想定するだけで消極的であると罰せられる
変更・調整が必要であっても先延ばしされる
意思決定プロセスに時間がかかる
組織内で議論が行われる風土がない
結果ではなくプロセスを評価
結果ではなく「やる気」や姿勢を評価
感情論での評価や責任の免除
評価基準が曖昧
出世が学生時代(記憶力が主)の成績で決められている
抜擢人事が行われない
組織が属人的に統合されている
自己革新力の欠如
組織内の平均年齢の高さ
人員の多様性のなさ
【個人】
「察する」ことによる意思決定
「察する」ことを相手に望む
不屈の精神があれば勝利できる、など精神論への依存
感情論での行動
【他】
現実から目をそらす
指示が曖昧
過去の成功への固執
過度の最適化
非常に優秀なパイロットしか乗りこなせない航空機の製造など
資源が少ないゆえにそれを過度に惜しむ
攻めるべき場面での撤退など
ーーーーー
上記のリストは戦争での出来事由来のものであり、全てをそのまま経営に活かすことはできません。
しかし、そもそも「戦略」という言葉そのものが軍事用語から経営においても応用されたように、この本の内容から得た学びを活かすことはおおいにできると考えます。
なぜ良い本だと感じたか
上記で挙げられた"失敗の本質"は今の時代においても非常に有用であると考えるからです。
日本は一時期軍事力を飛躍的に上昇させ、破竹の勢いで領土を広げ続けていましたが、太平洋戦争に破れ多くの領土を失いました。
そして戦後、日本は経済大国として大躍進を遂げましたが、現在はその勢いには陰りが見え、これからの展望も明るいとは言えない状況です。
これらの状況が重なって見えるのは僕だけでしょうか。
敗戦・無条件降伏時には、さながら明治維新時のように組織の刷新が行われました。
しかし、経済の失墜においてはそのような明確な通牒は行われないため、組織が自己革新を行うには非常に大きな力が必要です。
その革新を行うにあたり、この本は非常に役立つ本だと感じますし、それは大企業以外でも中小企業、はたまた個人においても活用できる学びがあると考えています。
文章もよく練られたものであり、読んでいて単純に面白い、というのもあります。
まとめ
初読時は全経営者が読んだほうが良い本だなと感じましたが、今は、個人としても読んだほうが良い本だとも感じます。
なぜなら、戦略は戦争や経営だけでなく、人生をより良くするためにも重要なので。
今までに読んではちゃめちゃに良かった他の本についても、どこかしらでまとめたいですね。
今後の人生でも、「この本に出会えてよかった」と感じられる本をもっと読んでいきたい。
ITベンチャーに新卒入社後2012年創業 複数回エクイティ・デッドでの資金調達を行い各種事業を行う 2015年に既存事業譲渡と訪日旅行者向けWebメディア立ち上げを並行しつつ、 2016年にフジメディアホールディングスグループに数億円でバイアウト 2019年から福岡で2度目の創業