季節の変わり目には、統合失調症が顔を出すものだ、と医者が言った。

私は58歳の時、統合失調症を発症しました。
原因は、
①家族に死に別れて一人暮らしになったこと、
②住んでいるマンションの上階が騒音を出す家族に変わったことです。

私の場合、統合失調症は
幻聴ではなく、独語、という形で現れました。
自分の口からひとりでに言葉が出てくるのです。
幻聴が聞こえる、ではなく一人で勝手にしゃべる。です。

ただ、この一人で勝手にしゃべる、というのは、周りの人々には聞こえていません。他人と話をしている時は普通にしゃべれます。
一人だけで歩いている時に突然、言葉が出てくるのです。
最初は「青いもの、青いもの、ロウソクに火がついた」としゃべりました。

全然意味がわかりません。
そのうちに、5種類くらいの人が、私の中でしゃべるようになりました。
4人は男の声、一人は女の声です。

女の声は、万葉の和歌のようなことを延々としゃべっています。
平気で30分くらいしゃべりました。今では何を言っていたか、覚えていませんが、現代の言葉ではなかったです。

私は、霊が憑いた、と思い、知り合いのお坊さんに頼んで、お祓いするお寺を紹介してもらいました。

やけに曇った日、私は紹介されたお寺に行きました。
それは、東京の鶴見区にあるお寺で、私の住んでいるところから電車で1時間くらいのところにありました。

お祓いする部屋に通されて、お坊さんがお経を読み始めると、私の口から思いがけない叫び声が出ました。
「祓えないぞ！」私は、身体を揺らしなが大声で叫んでいました。

お坊さんは、私に霊がついている、ということを頭から信じていませんでした。そして私を怒鳴りつけました。
「ふざけるな！」

その後、優しい声になって
「お金は返すから、帰りなさい、世の中には、生きたくても生きられなくて困っている人がたくさんいるんだ、ふざけてないでしっかり生きなさい」
と、言いました。
　そうです、お坊さんは、霊を祓う気なんて全然なかったのです。元々、霊がいる、なんて思ってもいませんでした。

帰り道は、雨が降っていました。私は、泣きながら帰りました。

その後、ネットで、自分の画像を送れば、1万5千円で霊視してくれる、というサイトを見つけ、お金を払い、自分の画像を送りました。
結果は、
「あなたに霊は憑いていません、統合失調症を疑って下さい」
と、いうものでした。

私は統合失調症、という病名は知っていましたが、どういう病気か知りませんでした。
あわてて、ネットで統合失調症、を探し出し、その症状が私に当てはまる、とわかったのです。

ああ、私は統合失症という病気になっていたのか、と気付き、慌ててメンタルクリニックに行きました。
そこで症状を言い、統合失調症の薬を出してもらいました。

私は、この薬を飲めば統合失調症が治るのだと思って、喜んで薬をのみました。けれども、それは悪夢の始まりでした。
精神病薬の副作用がひどかったのです。

目の焦点が合わない、涙が出る、身体が震える、などの副作用を私は必死に堪えました。統合失調症を解説している本には、薬の効き目が出るには2週間程度、時間が掛かる、と書いてあったからです。

しかし2週間が過ぎ、1ヶ月を過ぎても、副作用は止まらず、統合失調症の症状も止まりませんでした。。。。私は薬を飲むのを止めました。

あまりに薬の副作用がひどいので、その後、2ヶ月ほど病院に行きませんでしたが、考えを変えて、最初の病院を止め、別の病院に行きました。

2度目の病院では、最初の副作用の話をし、別の薬をもらいました。
それは、統合失調症の薬としては、かなり効果の弱い薬でしたが、その薬で、私の症状はかなり治まり、副作用も出なかったのです。

それから、10年過ぎましたが、私の統合失調症の症状は薬の飲むことによって、治まっています。
でも、今のような夏から冬への境目、冬から春の境目には、かなり不安感が増し、しんどくなります。

医者は「木の芽時、といってね、季節の変わり目には、症状が辛くなる人は多いんですよ」と言いました。

今、ちょうど、精神的にしんどい時期です。でも、何も出来ないというようなことはなく、普通に生活ができています。

思い返す時、私の統合失調症の症状は、じっと動けなくなる、ということはなく、いつも日常生活はできていました。それはありがたいことでした。

ちなみに
「あなたに憑いている霊を霊視します」というサイトは詐欺サイトでした。私は詐欺サイトに1万5千円を払ったわけですが、後悔はしていません。その詐欺サイトのおかげで、自分の統合失調症に気づけたからです。

いま、ちょっと精神がしんどいですが、このしんどさに負けず、毎日、自分に課した課題を進めて行きたいと思います。