実家に帰ると悪夢を見る話

1人暮らしを始めて1年が経ち、久々に実家に帰り、十数年使っていた自分の部屋のベッドに横たわった。
すると、すごく衝撃的だった。
十数年もの間、こんなに硬い所で寝ていたのかと。
非常に寝心地が悪かった。
その日、悪夢を見た。
3時に目が覚め、すぐにあることを思い出した。
私は、一人暮らしをする前の1週間、毎日悪夢を見続け、非常に辛かったのだ。

思い返せば、一人暮らしを始めたときから悪夢は見なくなった。
まず、ベッドが硬く、寝心地が悪いことが、悪夢を見る要因かと疑ったが、十数年同じベッドで寝ているし、それは違う。
そうなると心霊的なものを想像してしまう。
あまりの恐怖に眠気は完全に吹き飛んだ。
そうして冷静になると、悪夢を見るひとつの要因が思い浮かんだ。
それは母親の存在だった。

母親はよく話す人で、その日あったことをよく話していた。
私に質問をしてくることはあったが、結局は母親自身の話になり、それを長い間、聞かされた。
幼い時から続き、小学生になると、辛いと感じ始めたが、長男である自分が聞いてあげなきゃいけないという使命感に駆られ、話を聞いた。
ただ、兄弟も大きくなり、母の話を聞いており、私が小学生高学年にもなると、自分の部屋へ逃げることで、辛い状況から逃げた。
罪悪感はかなりあった。
ただ、その後、中学高校大学と、思春期を経て、家にいる時間も少なくなり、あえて逃げることは、なかったように思う。
ただ、社会人になり、一人暮らしを始める前の1週間、その"逃げる"ことを思い出した。
母は、私が家を出るということで、寂しさから、いろいろと話したかったのだと思う。
私も話をしたい気持ちは同じだった。
ただ、これまでと同じように、最初はいくつか私に質問をするが、その後、永遠と母の話が始まる。
そうすると、脳内が、逃げ出したい感情でいっぱいになり、いてもたってもいられなくなる。
そうして、自分の部屋へ行こうとすると、母は非常に寂しそうな顔をするのだった。
私は、自分の部屋に入ると、罪悪感でいっぱいになった。
そして親不孝な息子だと思い、明日こそはもっと話そうと眠りにつき、悪夢を見た。
そしてこれは、引っ越し当日まで続いた。

この日もまったく同じだった。
久々に実家に帰り、母は話したがった。
私も、一人暮らしを始めてからの色々を話したかったが、耐えられずに逃げた。そして後悔して眠りについたのだった。
この精神的なストレスが悪夢の要因となっているのだろう。

こんな話を母にしたら、非常に悲しむだろうと思ったが、しばらくたったのち、話してみた。
すると母は酒飲みながら、良いつまみだといわんばかりに笑っていた。
そして相も変わらず自分の話をしていた。
心はかなり軽くなった。

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