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「愛がなんだ」はやっぱり傑作だった

2018年公開の映画「愛がなんだ」。つい先日各配信サイトでの配信が始まった。劇場でも観たけれど、配信されてすぐに観た2度目の「愛がなんだ」はやっぱり傑作だ、と思ったので月曜の夜から金麦飲みながらこのnoteを書いてみています。

おそらく10代からちゃんと愛されて大事にされる恋愛ができてきた人たちは「登場人物の誰にも共感できない、全員ムカつく」と言うと思う。主人公の山田テルコは大好きな田中マモル、マモちゃんのいわゆる「都合のいい女」。熱が出たから買い物してきてと言われれば夕飯の食材とカビキラーとお風呂用洗剤を買って行って病人に味噌煮込みうどんを作り、病人が寝てる横で頼まれてもいないのに風呂の床掃除を始める。見かねたマモちゃんに「もう大丈夫だから帰ってありがとう」と追い出される。公開当時、私は開始10分で「あああああああ、、、、、、」と心の中で唸りまくり、そのうち段々と「ア...ア......」としか言えなくなってカオナシと成り果てた。

「マモちゃんはドクズ」と言われればそうなのだけど、こういう状況を作り出しているのは、まあマモちゃん一人のせいじゃないよね、と思う。テルちゃんの友人葉子も「そんな男やめときな」という割には、自分だって自分に好意を寄せてくれている男ナカハラを非常に都合よく扱っている。みんなちょっとずつ狡い。

私が大好きなシーンは2つあって、1つはそのナカハラとテルちゃんが2人で話すシーン。「もう葉子さんを好きでいること辞めようと思って」と言うナカハラに、大真面目に「え、全っ然意味わかんない。」と言うテルちゃん。おそらくテルちゃんは最初は本当に「意味わかんな」かったのだと思うけど、だんだんと同志だと思ってたナカハラが「離脱」するのを見て、「そっちの選択肢」があるということを認めたくなかったんじゃないかな。今思えばテルちゃんの「異常なまでの執着」はここからはじまったんじゃないかと思う。涙目のナカハラが言う「幸せになりたいっすね、」に対してテルちゃんが金麦ロング缶片手に吐く「うるせぇバーカ!」は人生で好きなシーントップ10入るかもしれない。

2つ目は、テルちゃんがベッドでマモちゃんを見つめるシーン。シーンというかそういうテルちゃんの姿が何回か描かれるのだけど、その時のテルちゃんの目が本当に本当に、、、、、、これは本当に見てください。この時の間合い、テルちゃんの目線、静けさの中に響くシーツや枕カバーのカサカサという音に、この映画の本質を感じるくらい、それくらい好きな場面なのです。

たぶんこの映画には共感なんてできない方が世間一般的には「普通に幸せ」なんでしょう。だけど私はこの映画が刺さる側で良かった、とすら思うくらいこの映画が好き。テルちゃんみたいな恋愛の仕方なんてもうとっくに辞めたけど、きっと私はこの先ずーっとこの「愛がなんだ」という作品を好きなままだと思う。映画から入った後角田光代さんの原作小説も読んだけど、こちらもあっという間に好きな作品になった。

加えて、元々好きだった岸井ゆきのちゃんをこの作品でもっともっと大好きになった。何となく見ていたゆきのちゃんのインスタに印象的な一文があって、いつからかそれが私のお守りみたいになっている。

「物語から本当のことを知りたいし あわよくば埋没していたいね」

私も物語から本当のことを知りたい。だから私はきっとこの先も、何度も何度も「愛がなんだ」を観つづけるんだろうなと、金麦片手に思う。

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