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140字では語りつくせぬ映画愛 番外編  映画の悪役40選~愛すべきワルども~中編

悪役ってやっぱいいもんですねえ~。こないだ友達が「続き早く書けよ」と言ってくれまして、悪の持つカリスマ性を再確認した次第です。というわけで引き続き映画に出てくる悪役をバシバシ書いていきます。



No.11 ジェームズ・モリアーティ教授『シャーロックホームズ ゲームオブシャドウ』

かの名探偵シャーロックホームズの宿敵ロンドンの悪事の半分を裏から操る男犯罪界のナポレオンジェームズ・モリアーティ教授がエントリー。ガイ・リッチーが監督を務める新生シャーロックホームズシリーズの第2弾に登場したこの人は原作においてシャーロックホームズが自らの命を懸けて倒したシリーズ屈指の頭脳を持つ最強の悪役

主人公シャーロックホームズをロバート・ダウニーJr.、その相棒ワトソンくんをジュード・ロウという2大スターが演じる人気シリーズの本作においてホームズと双璧をなすモリアーティを演じるのはどんな人気俳優なのかと話題にもなったのですが、演じたのはジャレッド・ハリスというさほど、日本では特に知名度の高くない俳優。舞台がメインらしい。沖津はこの人の存在は知っていたものの、観る前は正直少しテンションが下がった。しかしそんな心配は杞憂でした。その気品や知性、と同時に内在する残虐性を見事に表現してました。

コメディ色も強く、ホームズとワトソンのやり取りが見どころである本シリーズにおいてその二人と真逆に、あえてスター性や個性を廃し知性と利己性を追究したこのキャスティングとそれに応えたジャレッド・ハリスの控え目かつ迫力ある演技は完全に正解でした。両極に立つお互いの存在感が上手く強調されたんではないでしょうか。

基本全編通して表情変わらないんですねモリアーティ教授。ホームズを上手く出し抜いた時も真顔全財産奪われた時も真顔。常に考えてるんですよ。先を。そういう顔をしてるんです。その冷静さに宿敵としての貫禄が表れているわけですが、これが不気味でいい悪役でした。あと、なんかわかんないけど歯並びが怖い



No.12 エスター『エスター』

コールマン夫妻が孤児院から引き取ってきた9歳の少女、エスター。頭が良く、非常にしっかりしていてすぐにコールマン一家に馴染むエスターだが年齢に不相応な落着きはどこか不気味。やがて少女の周りで不可解な事件が続発する、お決まりの展開

クラスメイトを突き落とし、孤児院のシスターも殴り殺し、終いにはコールマン家の長男ダニエル少年をツリーハウスに閉じ込め火をつける・・・

⇧燃え盛るツリーハウスを見上げるエスター。こわ・・・

本作の見どころは何といっても凶悪少女エスターの表情。悪だくみしている際のニヒルな微笑み、邪魔が入った時の苛立ちの表情真顔。いいんですねえ。怖いですねえ

コールマン家の母親だけがエスターの怪しさに気づくんだけど、まわりには「何言ってんだコイツ」状態で聞き入れてもらえない。のもお決まり

この映画のちょっと面白い所はエスターに隠されたある秘密。一応ネタバレにならないように伏せるけど、この少女が凶行に走る理由は呪われてるとか悪霊に取り憑かれてるとかその類のものじゃない。むしろその手のホラー映画の定番を逆手に取ったラストと言える。



No.13 エージェント:スミス『マトリックスシリーズ』

突然ですが皆さん、今我々が生きているこの世界は「仮想現実=マトリックス」だって知っていましたか?「本当の現実」に居る私たちは支配者であるコンピュータに繋がれ延々と眠り続けていて、そこで見ている共通の夢みたいなものが今我々が生きる「仮想現実=マトリックス」というわけです。

ところがどっこいたまにいるんですよ。コンピュータに逆らって「目を醒ます」人間が。しかも目を醒ましたヤツらは「マトリックス」に不正に侵入して眠らされた人間たちを解放しようとするんです。そんな不正規の侵入者を排除するマトリックス内のプログラムこそこのエージェント:スミスなわけです。

何しろこの世界を形作っているコンピュータサイドのプログラムですからね。圧倒的に強いんですよ。どこにでも出現できるし、物理法則にも従わなくていいんです。そんな強さを誇りながら見た目はただのスーツ姿っていうその無機質さがまたいいじゃないですか。

実は侵入者や不必要になった他のプログラムを排除するプログラムは何種類かいるのですがスミスだけ一味違う。

⇧真ん中がスミス。右がエージェントジョーンズ、左がブラウン。

スミスは2作目以降コンピュータに反旗を翻し、自分がマトリックスの支配者になろうとします。そうなったらもうラスボス街道まっしぐら。自分もエージェントに追われる存在になるのですが、まるでコンピュータウィルスのように他のプログラムを書き換え「自分」にする能力を手に入れてしまいます。つまり際限なく増えてしまうのです。気持ち悪いッいっぱい同じ顔のおっさんがいるッ。(上の画像参照)

スタイリッシュで無機質な雰囲気がカッコよく、圧倒した強さを持つ彼は非常に人気の悪役と言えるでしょう。



No.14 イワン・コルシュノフ『エアフォースワン』

ソ連の復活を渇望するロシア国粋主義系のテロリストであるイワンとその一味がハイジャックした飛行機はなんと「合衆国大統領専用機」、通称エアフォースワン!!!

その方法はテレビクルーに化けて飛行機に乗り込むだけ!アメリカのセキュリティってそんなにザルなの?なんてツッコミは90年代のアクション映画にはナンセンス。面白ければそれでいいのだ。

彼らにたった1人立ち向かうヒーローはこれまた驚き、大統領ご本人!大統領ってそんな強いの?なんてツッコミはハリソン・フォードにはナンセンス。カッコよければそれでいいのだ。

テロリストのリーダー、イワンを演じるのは名優ゲイリー・オールドマンカメレオン俳優と名高い彼はイギリスの出身でありながらロシア系を演じます。以前聞いた話だと彼は「~訛りの英語」を5種類ほど使い分けられるそうですが、本作のロシア訛りも日本人からすれば完璧

本編では大して印象に残るような演出はないんだけどゲイリーオールドマン大好き芸人である沖津にとって彼が大統領の家族を脅すシーンなんて最高なんすね。狂気に満ちた眼、叫んだ時に小刻みに震える顔面、独特の声・・・。たまらん。

なんかシリウス・ブラックに似ている気がする



No.15 マモー『ルパン三世 ルパン対複製人間』

記念すべきルパン三世最初の劇場作品の悪役マモー

マモーの悪行はとても壮大で悪役としての器は充分すぎるほど。鉄鉱・運輸・造船・報道などのあらゆる産業を押さえ、世界の三分の一の富を支配する彼はクローン技術を用いて1万年以上もの間生きながらえ、なおも米ソ両国に生物および遺伝子工学の技術を要求。不二子を通してルパンにも「不死」にまつわる財宝を盗ませます。1万年も生きてるのに何故いまさら財宝に頼る・・・。

果てはクローン技術でよみがえらせた歴史上の偉人を自分の宮殿に住まわせるという豪快さ。どういう趣味だ。

しかしながらマモーが沖津に悪役としての強烈な印象を残した要因はそんなことではござんせん。その要因は彼の正体にあります。

クローニングによる「遺伝子の劣化」や「変異体の発生」が限界まで到達し直接クローンとして代替えすることを諦め最終的に落ち着いたマモーの本体がこちら。

バカでけえ脳。

⇧マモーの真の姿。普通にキモい…

いいよねえ~。頭よすぎる系の悪役ってこういう発想になるんだよね~。

しかしこんな姿になってまで1万年も生きたマモーが本気で欲しがったのが不二子ちゃんだと思うと超絶ナイスな肉体を持った絶世の美女の前では男は平等に「バカ」になるんだなって情けないやら生物の本質に思いを馳せるやら

1万年生きても性欲ってなくならないんだ・・・。



No.16 ボーン市長『ジョーズ』

白い砂浜、輝く太陽、交わる海と空の境界線・・・。夏場の穴場リゾート地として人気を博すアミティ島。後に巨大なサメによって悲劇がもたらされるその島の市長を務めるのがこの男―経済的な利潤を最優先にする分からずや系悪役ラリー・ボーン市長

この人の罪は重いです。アミティ島近海においてサメによる死者が出るも主人公ブロディ署長の忠告に耳を貸さず海開きを断行。結果「子供は死なない」と言われるはずのスピルバーグ監督作品にもかかわらず少年が犠牲となってしまいます。

その後イタチザメが捕獲され町中が安堵しますがどう見てもサイズが小さく、怪しく思ったブロディと海洋学者のフーパーが調査を行い一連の事件の原因が他のサメであると断定。市長に報告しますが利益を優先したい市長はまたしてもこれを一笑に付し、海開きを再開。とうとう観光客がサメの餌食になり、ブロディの息子も襲われかける事態となったのです。

どうですか皆さん。この危機管理能力のなさ。他に列挙してきた悪役に比べれば可愛いものに思えるかもしれないけど観てるとホントにイライラするんだもん。普通この手のミスって一回が限度じゃないんか

しかもこの人の罪はこれだけでは終わらないのであります。

続く『ジョーズ2』でもアミティ島はサメの悲劇に見舞われることになります。あんな事態を引き起こしておきながら市長を続投しているのにも驚きですが1作目で改心した風だったくせに今作でもブロディの忠告を聞かず海開きを断行。果てはブロディのクビに賛成するという体たらく。マジか。コイツには学習という概念存在せえへんのか

ユニバーサルスタジオジャパンのアトラクション、「ジョーズ」の最後に乗組員が言う「皆さんが見たおっきいお魚さんのことは秘密にしてくださいね。お客さん来なくなっちゃいますから」というセリフは上記のくだりや設定を踏襲したものと思われます。



No.17 ジョーカー『ダークナイト』

ジョーカーが何故負けないのかというとこの人はそもそもバットマンや警察と同じ土俵では全く戦ってないんですよね。もちろん犯罪手腕は超一流で、それは冒頭の銀行強盗シーンで世界中の人間の心を掴んだことから明らかなわけですが、そういう小手先の悪だくみはバットマンにかかれば防ごうと思えば防げるわけですよ。事実護送中のハーヴィー・デント襲撃も人質にピエロの格好をさせた撹乱作戦も失敗してる。ただジョーカーは実は「そこ」では勝負してないんですよね。『容疑者Xの献身』で犯人である石神が「幾何の問題に見せかけて実は関数の問題」って言ってましたがまさにそれ。どの場面でも常に「邪魔された後」を考えてある。護送車襲撃が失敗したのも作戦通り、逮捕されてしまったのも予定通り、その後ハーヴィーの婚約者を殺害するという真の目的をしっかりとやり遂げています。さらに言ってしまえば究極的な彼の目的は「どんなに高潔な人間でも狂気に飲まれる」と証明することです。それに気づけないバットマンがジョーカーにリードできるはずはないんです。ジョーカーからすればバットマンに邪魔されることは楽しい遊びであり上述の目的が達成できれば他の犯罪が失敗してもなんらダメージじゃない。負けじゃない。そのため唯一ジョーカーがイラつきを見せたシーンは終盤フェリーの乗客が命の危機に瀕しても人としての尊厳を失わず倫理的な行動を取った場面でした。

以前知り合いが「あの映画のすごい所は悪が勝つところ」と言っていました。そうでしょうか。沖津は少し違うと思います。確かにジョーカーの目論見通りハーヴィーは悪に堕ち、殺人鬼と化しました。しかもこの映画においてバットマンはほとんど何もしません。シーンの上では常に活躍しますが肝心な部分では負けるか、バットマン以外の人物が解決します。バットマンが愛した女性は救えず、ジョーカーを逮捕したのはゴードン警部(中盤以降は市警本部長)、フェリーの乗客は自ら窮地を脱し、終盤ジョーカーが捕まったのは目的を達成した後だから、結局はハーヴィーも狂気の殺人鬼になってしまう。では「ヒーロー映画」である本作における主人公のヒロイズムはどこに表れたのか。これはラストのラストでしょう。バットマンは犯罪の横行するゴッサムシティにとっての光であるハーヴィーがダークサイドに堕ちたと市民が知ればゴッサムを救うことはできないと判断。ハーヴィーの罪を被り警察に追われる身になることを決心します。最も高潔であった人間は悪に染まりましたがそれが市民に伝播することは食い止め、ジョーカーが言っていた「ゴッサムをカオスに陥れる」ことは防いだのです。沖津はこれを「ジョーカーとの戦いを無理やり引き分けに持ち込んだ」と考えています。本当に最後の最後でこの映画はヒーロー映画として確立されるのです。主人公が市民の敵になることで。

ジョーカーを演じたヒース・レジャーは本作の撮影後次の作品の製作中に亡くなりました。ヒース・レジャーは彼の死後、本作でアカデミー賞助演男優賞を獲得しています。『ダークナイト』で圧巻の演技を見せたヒース・レジャーが生きていたらどんな俳優になったのだろうかと思います。その辺りの事情も含め自分にとっては伝説的な悪役です。



No.18 ノーマン・スタンスフィールド『レオン』

みんなも大好きな名作『レオン』から麻薬取締官(だったか捜査官だったか)ノーマン・スタンスフィールド、通称スタンが満を持しての登場です。

麻薬取締官という立場を利用して麻薬の密売をし、自身も薬漬けのジャンキー、裏切者を家族ともども皆殺し、女子供にも一切容赦しない。

まさしく外道!!!
この手の悪役って印象に残りこそすれ人気は出ないものですが何故か人気ですよね。沖津も大好き。

今更『レオン』の紹介は要らないですからコイツについてだけ書きますけどコイツ登場時間の少なさに反して名シーンが多いんですよね。

①クスリ口に入れて噛み砕くシーン
こっこホント最高ですよね。クスリが入ったケースを耳もとでカラカラ鳴らし、カプセルを前歯でくわえたら準備万端。上を向いて力を込めて「ガリッ」。ご覧くださいこの顔。

映画ファンはフリスクやミンティアを食べるとき必ず真似します

②のれんくぐり
裏切者の家に訪本人をキッチンに見つけ入ってきます。キッチンにあるじゃらじゃらしたのれんを潜り抜けるシーンが独特で不気味。こう。

これも映画ファンはお寿司屋さんで真似します。ちなみに一家殺害中にベートーベン口ずさんでるのもGOOD!

③ドア裏待機シーン
自分の職場に復讐に来たマチルダをトイレの扉の裏で待ちかまえます。恐る恐るトイレに入るマチルダ。あれ、スタン居ないな。静かに閉まるドア……扉の裏で棒立ちのスタン登場。ギャーー。怖い!!!!

④絶叫
レオンのアジトに特殊部隊が突入。レオンが強くていまいちはかどらない作戦。

スタン「全員集めろ」

隊員「・・・全員ですか?」

「ゥゥエエッッブゥリイイイワン!!!!!!」

キャラの濃さが人気の要因なんだろうなあ。他にも名場面たくさんあるんですけどこんくらいにしときますね。

なーんかシリウス・ブラックに似てんなあこの人



さ、今回の悪役はいかがでしたか?

え?ジョーカーのくだりが長すぎて引いた?ホントはアレの倍くらい書きたいんですよ。1シーン1シーン書きたいくらい。

1人1人が長すぎてなかなか進まないこの企画も次回最終回。残り20人強!



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