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隠れた真実・創造・狂気 ~ARスタートアップPretiaがなぜ今7億円資金調達したのか

こんにちは。拡張現実(AR)開発プラットフォームを運営しております、プレティア・テクノロジーズの牛尾です。

このたび7億円の資金調達を発表させていただきました。

「Pretia」は空間認識技術とマルチプレイヤー基盤を中核とした、ARアプリの開発プラットフォームです。このようなサービスはARクラウドとも呼ばれます。

思い返せば最初にARクラウドを開発することを決めた2017年では、「日本の小さなスタートアップがARクラウドなんてつくれない」「GAFAには勝てない」という島国根性にあふれたコメントを数多くいただきました。

しかし幸いにして、コンピュータビジョンの研究者・ベテランゲームクリエイター等、この構想実現に必要な仲間に数多く恵まれ、今年4月にはプラットフォームを世界に向けてリリースすることができました。この社運を賭けた挑戦は、プレティアチームひとりひとりの覚悟と狂気の産物と言えます。

そしてリリース後は、幸いにして一時の話題で留まることもなく、一定の開発者の皆様に使い続けていただくことができています。

メタバースやWeb3といったバズワードの陰に隠れ、ARがいかに地道に進化を遂げてきたのか。どれだけものすごいチャンスが私たちの目の前にあるのか。私たちがARスタートアップとして掴んでいる確信の一端をお話できればと思います。

1) ARは「革命前夜」を迎えている

1. メタバース需要に引っ張られている

メタバースにどのような意味を込めているのかを置いておいて、メタバースがこれだけバズワードになったのは「つながり」に対する飢えからだと理解しています。コロナ禍が浮き彫りにしたのは、消費者が「人とより簡単に・より深くつながる機会への飢え」ていることでした。これを企業側からみると「つながる場を提供することで顧客接点を強化する機会」と捉えることができます。

多人数同時接続×3DCG×インタラクティブをメタバースの要素とするなら、「ARクラウド」はこの要素をおさえています。感染症リスクの低い屋外において、ソフトウェアの力で人びとの交流を生み出すようなユースケースはもっと伸びていくでしょう。情報の次元を増やすことによって、人びとのより豊かなコミュニケーションが実現できるのではないか、という期待感は事実そこにあると思います。

このコロナ禍で生まれた3DCGコミュニケーションへの需要は、ゲーム市場の継続活況・後述する大手各社のAR/VR投資の強化・VTuberに代表されるアバターコミュニケーションの普及等により、コロナを克服した世界でも広がっていくと考えています。

Web3の動きも追い風にしかならないでしょう。NFTのユーティリティ(利用価値)として、クリエイターもメタバースそのもの、あるいはメタバース空間上での創作活動にどんどん流れ込んでいくと思います。

2. GAFAMによる大規模な投資は続く

実は2021〜2022年には、ARに関する積極的な発言や投資が相次いで見られました。

・Appleのティム・クックCEOも「私はARに大変期待しています」「14,000以上のARKitアプリが誕生」「私たちが提供するものに、ご期待ください。」と直近発言しています。
・Metaは2021年だけでXRに約100億ドル(約1.1兆円)もの投資をおこなったと公表しました。

NianticのLightship、Google ARCore等、ARのソフトウェアインフラを充実させるような製品・機能リリースが相次いでいるのも見逃せません。

私たちは「AR市場そのものが成長すればプレティアも自動的に成長する」と考え、「プレティア個社の都合ではなく、AR業界やコミュニティそのものへ貢献する」という基本姿勢をとっています。

前述のような動きは、同様のプラットフォーム事業を営むプレティアにとって脅威とも言えます。ですが、AR市場そのものへ注目が集まることは明らかにポジティブです。「AR盛り上がってるな」とユーザーの利用意欲や大手企業の導入意欲が高まることは、歓迎すべきことでしょう。

3. いよいよARグラスが普及する

VR市場は、2020年10月のOculus Quest 2発売を皮切りに大きな飛躍を見せました。このQuest 2発売に相当するようなARグラスのターニングポイントはすぐそこに迫っていると考えています。私自身の予測ですと、ARグラスはうまくいけば2023年には300〜500万台クラスの普及をみせるのではないかと考えています。

HoloLensやMagic Leap、NrealやVuzix等のARグラスメーカーも含め、既存各社のARグラスはバージョンを重ねることに着実な進化を遂げています。さらにMetaは2022年末には法人向けにARグラスとしても使えるQuest Proをリリースすると噂され、ついにAppleも2023年にはARグラスを市場投入してくるのではないかと目されています。いよいよ大本命メーカーからもARグラスが登場するのです。

その他、センサーの進化・5G/6G等の通信インフラの整備・クラウドレンダリング…。すべてがすでに存在するAR市場を飛躍させます。マグマは地中深くでふつふつと煮えたぎり、爆発の時を待っているのです。

2) プレティアはこの市場でどう戦っていくか

前述のようにビッグネームが参入していることからも明らかな通り、ARは巨大なマーケットです。吹けば飛ぶようなスタートアップであるプレティアは、一体どのように戦っていくのか。

1. マルチプロダクト波待ち戦略

AR市場のホットスポットがどこか?を判断するには実はまだ情報が足りていません。プレティアはエンタメを始めとしたいくつかの市場がホットスポットになると仮説を立て、各業界の顧客と対話し、プロダクトを提供しています。

技術は技術であり、どう使うかが重要です。上記の取り組みのおかげで、プレティアは多岐にわたる業界の課題や業務フロー等のドメイン知識を獲得し、今後技術の進化と共にどのような段階でどうARを提供してくべきか、という現場感を獲得することができています。

市場が急拡大する前にこれらに取り組んでいるのが重要です。サーフィンと同じで、沖に出て漕ぎ出していないと、波には乗れないのです。

2. 超POC戦略

公平に言って、ARはまだ何でも出せば売れるような状態ではないと思います。しかし出せばちゃんと売れるものや、一回限りのPOC(実証実験)ではなく、POCを越えて継続的に使われるようなARサービスはちゃんと存在します

私たちのような小さなスタートアップでも、その限られたニッチマーケットを押さえることは十分に可能です。

プレティアでは、初期のAR謎解きゲームやARクラウド等、すでにエンドユーザーに安定的にサービスを提供した実績を数多く有しています。POCで端末一種類しかサポートしないのと、無数にあるスマートフォン機種をサポートし、QA(品質保証)をおこなった上できちんとARを動作させるのとでは、ビジネスのやり方が根本的に異なります。

3. No.1パートナー戦略

企業が「ARで何かをやりたい」と思ったときに、まず直面するのが「技術的な実現可能性」です。

スタートアップとしてR&Dチームを内製化するのは、大きなリスクをともなう決断でした。ですがARにとって、単なる現実空間への3DCGの重畳(ちょうじょう)表示=「アウトプット」は、要素の半分でしかありません。汎用ツールに頼ってそれだけをやっていたのでは、実現できることは著しく限られます。

ですがもう半分の要素、つまり3DCG描画の前提としてコンピュータに現実空間・物体・人物の形状を読み込ませること=「インプット」を扱えるようになる瞬間、ARで解決できる課題の幅がぐんと広がるのです。

結果、「プレティアにしかできない課題解決」があることが「ARで何かやるならプレティアと組もう」という認知につながると考えています。そして、そうした認知はある程度形成できてきていると自負しています。

そんなのはGoogleやAppleに任せておけ?それもひとつの戦略でしょう。ですが、顧客の近くにいて、顧客の課題を深く分析し、プロダクトを提供することができる会社は、ARが適切な期待値のもと健全に社会で利用され、普及していくために必要なんじゃないでしょうか。これは私たちのバリューである”Product meaningful impact”に従うところでもあります。

3) なぜ資金調達をしたのか(Why)

今回の資金調達には大きく3つの意図があります。

1. 世界に出る

昨今の円安は、スタートアップに「世界で稼がなければ死ぬ」という危機感をもたらしました。プレティアは、海外への取引基盤を拡大していきます。

すでにグローバルでリリースされているPretiaに加え、私たちには公用語英語・7割外国籍・国籍数10数カ国のグローバル体制によって培われた「市場観」があります。組織はすでに世界に打って出る準備が出来ています。あとは大きなコストをかけずに出来ることを選び抜き、着実に実行していくだけです。

2. 大型プロジェクトに投資する

良くも悪くもARをよく目にするようになってきたことで、ユーザーはARに「慣れ」始めてきました。これはVRで先行して起こっていることでしょうが、並大抵のプロダクト品質ではどんどん勝てなくなっていくと予想しています。必然、プロジェクトは大型化していきます。

そこでプレティアでも、ユーザーの期待値を越えるような表現・エンタメ・利用価値をしっかりと生み出す体制を築いていきます

その一方で、今までも水面下では取り組んでいますが、個人の開発者やスタジオで開発可能なプロジェクトはどんどんパートナーとして巻き込み、仕事を依頼していきます。これがARにとりくむ開発者やクリエイターの増加にもつながると信じています。私たちは、体制の出来ている会社にしかできないことを粛々とやっていきます。

3. 冬に備える

アメリカ合衆国でも不景気への突入が観測され始めました。そんな中、今回出資いただいた貴重なお金には凄まじい価値があります。

AR市場そのものは伸び続けているので杞憂とも思えるかもしれませんが、ARが広がるためには、プレティアの既存提携先の皆様のような、先見性のある「半歩先を行く」顧客の存在が不可欠です。不景気によって支出の厳しい選別がおこなわれるようになれば、そうしたチャレンジに臨みたいという企業の予算は部分的に冷え込むかもしれません。

ARの”お試しニーズ”は不景気では死ぬかもしれません。しかし、売上増やコスト削減などの実利をもたらす骨太なサービスは、必ず利用され続けます。今までサービスに投資してきた私たちの本領はここで発揮されます。今回得た資金で、顧客価値にどんどん磨きをかけていきます。


4) なぜ資金調達できたのか(How)

「革命が起こっていること」を理解するのは容易いですが、「革命前夜」を直感するのは並大抵の業ではありません。未来を信じて投資を決めていただいた投資家の各社には、本当に頭が下がります。私たちを信じて出資をご決断いただいたことに、改めてこの場で御礼申し上げます。

私なりにどのようにプレティアを評価いただけたのかを整理しますと、下記の3つの点が挙げられると思います。

1. 市場性

株式市場の低迷によりスタートアップへの投資機運全体は冷え込んできていますが、AR・メタバース市場への期待自体は変わらず成長を続けています。

2. 将来性

GAFAプラットフォームへの乗っかり戦略ではなく、日本発プラットフォームを作り上げようという気概を評価いただけたのだと思います。

ハッカソンを実施して開発者コミュニティを盛り上げたり、小学館等の大手企業・東京都等の行政との取り組みにも表れるとおり、自社プラットフォーム上において着実に商用実績と積み上げている点もポイントだと考えています。

3. 収益性

AR自体に夢があるのはもちろんですが、すべてのビジネスには収益性が求められます。難易度の高いマルチプロダクト戦略のもと、しっかり売上や顧客開拓実績を積み上げてきた点も重要だったのだと思います。

今後投資家の方々からのフィードバックも徐々に公開していきますので、詳細が気になる方はぜひそちらもご覧ください。

5) 調達した資金を何に使うのか

上記のようなご期待をいただきお預かりした大切なお金は、以下の投資へ振り向けていきます。

1. 人材投資

人材に投資することで、プロダクトの品質、ひいては顧客価値へ投資をしていきます。

直近ではGAFAや大手テック企業も採用凍結・レイオフを実施していますが、プレティアにはARへの情熱に溢れた挑戦者を受け入れる準備があります。不況下でも、世界中から優れた技術者・研究者・クリエイター・ビジネスプロフェッショナルを採用し続けます

また合わせて、人材市場においてPretiaがどのような貢献できるか?も明確にしなければなりません。その答えは「ARエキスパートの輩出」だと思います。プレティアは「プレティアで働くことがARのエキスパートになるための最善の道」とすべく、プレティアに所属するすべての社員が専門性を高められるようなプログラムをどんどん発表していきます。

2. コミュニティ構築

Pretiaプラットフォームのユーザーは、私たちにとって最も大切な顧客であり、一緒にAR普及の担っていく同志でもあります。AR開発者のコミュニティへ、私たちのビジネスの成功がもたらすお金を還元していくことが、まだまだ黎明期にある業界において、ある程度の幸運に恵まれている私たちの務めです。

皆様と一緒に楽しく創造に取り組んでいけるよう、様々なプロジェクトを発表していきます。

3. ランウェイの確保

冬の時代を見越すなら、今からガツンと広告宣伝費等にお金を振り向けるのはリスクがあります。AR市場の成長も一朝一夕に成るものではなく、地道に開発者・クリエイターの皆様による素晴らしい製品・作品の創出を積み上げていくしかありません

これには大変な時間を要します。お金は、この長期戦に臨むための軍資金にもなります。

補足. 7億円じゃ足りなくない?

いい質問です。

前提として、大型資金調達は競争が激しかったり、初期的にMoat(競争の防御壁)が薄いが突き放せばネットワーク効果の積み上げでひっくり返せなくなる、といったマーケットでやるものと理解しています。

AR市場のタイミングと、プレティアが築いてきた技術的優位性を考慮すれば、プレティアが大きな資金調達に踏むのは少し後でいいと考えています。

おわりに

思い返せば、2017年のARKit・ARCoreのリリース当時、「AR市場はこれから来る!」と予想した人は多くいました。そこから5年弱。隣接領域であるVRにおけるメタバース特需や、関連づけて語られやすいWeb3の盛り上がりを横目に、ARをやり続けるというのは正気の沙汰じゃありません

でもVRもブロックチェーンも、最初はそうでした。ここで挙げていない数多の技術だってそうです。そのような狂気的なコミットメントが次の時代を創造します

そして、その狂気の花がついに芽吹き始めているのが、2022年のAR業界です。

何より私たちがARに賭けているのは、プレティアのミッションが「共に達成する喜びを届ける」ことであり、ARという技術は「現実世界で人びとが誰かと何かを達成する喜びを分かち合う」ためにある、と考えるからです。オンライン&リモートで人びとを結びつける手段はすでに無数にありますが、現実世界にはまだまだそれが足りていないと考えています。

バーチャルも現実の一部です。ですが、物理的な空間を共有して人を結びつける価値は絶対になくならず、ソフトウェアの力でその価値をより簡単に・豊かに届ける手段=ARの価値もまた高まっていくはずです。

まだまだ楽して稼げる市場では絶対にありません。「楽して儲かりたい」というお考えでしたら別の業界を推奨します(あるといいですが)。ですが、実力のあるチームが明確な戦略のもとに努力を続ければ、きちんと結果が跳ね返ってきます。それくらいには、ARは着実に社会に浸透してきていると言っていいと思います。

一緒にやりましょう。

プレティアで働く最大の報酬は「情熱と実力を持ったメンバーと、日本からプレティアでしかできないプロダクトづくりに挑戦できること」です。

たとえ世間がこの文章に賛同しなくとも、もしあなただけに響く「隠れた真実」がここに書かれていると感じたら、ぜひプレティアの門戸を叩いてください。

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