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最近の【ほぼ百字小説】2024年5月1日~5月12日



【ほぼ百字小説】
をひとつツイート(ポスト)したら、こっちでそれに関してあれこれ書いて、それが20篇くらい溜まったら、まとめて朗読して終わり、という形式でやってます。気が向いたらおつきあいください。

5月1日(水)

【ほぼ百字小説】(5179) 路地の中から見える隣町の高いビル、こんな雨の日は上半分が雲に隠れて見えなくなる。見えないのではなく、存在してないのかも。そんなことを思うが、向こうから見てもそんな感じか。いや、晴れてても見えないかな。

 うちの近所からは、あべのハルカスがよく見える。段々背が高くなっていって完成するまでを見てました。そして、靄がかかって半分見えなくなるのも本当。こっちからは見えるんですが、でも向こうからこの路地はよっぽど探さないと見えない。対等じゃないんですよね、当たり前ですが。

【ほぼ百字小説】(5180) 甲羅の中で暮らしている。膝を抱えて丸くなればぴったりの広さ。いつも夢と現のあいだでうとうとしている。何の甲羅だろう。亀なのか、蟹なのか、どちらでもない何かか。というか、いつ甲羅の中だと知ったんだっけ。

 なんというか、こんなふうにしてやり過ごすしかないと思うんですが、そういう甲羅も持ってないから無理なんだろうなあ。まあそんな感じです。せめて甲羅の中にいるんだと考えることにします。

5月2日(木)

【ほぼ百字小説】(5181) 雀なんかもういないのに電柱の影のまわりには雀の影が飛び回っていたり、雲なんかないのに雲の影が荒野を渡っていったり。おかしなことが続いているが、月蝕のはずなのに月が欠けないことに比べれば、些細なことか。

 影の話。つい先日から日傘を使ってます。何年か前から夏場には日傘を使うようになって、これがいちど使うともう手放せない。そして今年はもう必要なくらいの夏日です。日傘を差してるせいか、地面の影が気になる。それでまあこんな話になったのかな。月蝕は地球の影で、夜も地球の影ですね。

【ほぼ百字小説】(5182) 今朝も飛行機雲が伸びていく。頭の上にくっきりと見えている。もう飛行機なんか飛んでないのに。これは空の記憶の再生、つまり回想のようなものだとか。そんなことがあるんだな。まあ我々も同じようなものらしいが。

 飛行機雲も影に似ている。飛行機は見えないのに飛行機雲だけが見えてることありますよね。ということで、ひとつ前の飛行機雲バージョンみたいなやつ。

5月3日(金)

【ほぼ百字小説】(5183) どう観ても猫ではないが猫だと言われれば猫として観ることができるし、どう観ても幽霊ではないが幽霊だと言われれば幽霊として観ることができる、というのは舞台の不思議、と思ってはいたが、まあ現実だってそうか。

 これは演劇を観ていてよく思うこと。そしてこのあいだ見た芝居もそういうやつでした。劇中では猫ということになってるんですが、尻尾を付けた人間でやってる。でも、それを登場人物がみんな猫としてあつかうと、ちゃんとこっちにも猫に見えてくる。認識と言うのはおもしろい。まあだからこそ、世界なんてものが存在するように感じられてるんでしょうけど。
 あ、観た芝居は、これです。


【ほぼ百字小説】(5184) 床を育てていた。その上に立つのに、その上を転がるのに、その上で踏み切るのに、ほどよい床に育て上げるのだ。それを使って跳躍して、ここに着地した。今は、地面を育てている。根を下ろすのにちょうどいいように。

 演劇つながり、かな? ラジオを聞いてて、そこに「リノ(リノリウム)を育ててる」というフレーズが出てきて、それにちょっと感動してしまって、それに触発されて。
 これです。

そして、配信で観ることができるその舞台『悪童日記』は、ほんまにすごいです。生で見たかったなあ。予約したのに、私が観る予定にしてたその回は、中止になってしまったのでした。まあライブってそういうもんだ。でも、配信で観てもすごいですよ。原作が好きな人にもおすすめ。

 とまあこんな感じで、おもしろい芝居を観ると大抵それをネタにひとつふたつ書けるというのは、マイクロノベルの便利なところですね。

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