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界 アルプス | 流れゆく水のように

たまにしか会わないけれど、すごく大切な友達がいる。大学の同期で、それでいて今の会社の同期だった。彼女は先日、新たな夢を見つけて転職をしてしまったのだけれど、大学時代はアルバイトも同じで。そりゃ似てるよなっていう価値観の持ち主。この間は久しぶりに、コーヒー片手に3時間、おしゃべりをした。うんうん、分かる分かる、とお互いにうなずきながら、共感することの心地よさを久しぶりに感じた。

価値観は一緒だけれど、たぶん行動の性格はちょっと違う。直感的なわたしと、じっくり見極める彼女。同じことを考えていても、モノの試し方だったり、選び方だったり、ちょっとずつ違くて、だから余計に面白いのだろうと思う。

そんな彼女と長野を旅したのは確か2年前。ゆったり温泉に浸かって、美味しいご飯を食べようよ、と界アルプスに行った。

軽井沢駅で友人に拾ってもらい、車でドライブ。途中、浅間山が美しく見えて、東京から新幹線でたった1時間の先にこんな世界があることをもっと早く知りたかったと思った。途中でランチ。わたしが好きそうだと選んでくれた「RK Garden」というお花屋さんとカフェが一緒になったお店。たくさんの植物に囲まれて、ヴィーガンメニューが楽しめる。心地いい空間だった。

心地いい日差しと共に
この頃はまだぎゅっと集まれなかった

界アルプスに着くと、囲炉裏から煙が静かに立っていた。界アルプスのご当地楽は「囲炉裏でディープな田舎体験」らしい。

囲炉裏って特別な感じがある。日常の中ではなかなかない。山々に囲まれた少し寒い地域にあるというイメージ。そこで到着早々、わたしたちはおやきをいただいた。長野の北部は山間地や急斜面が多く冷涼な気候のため、稲作に不向きだったらしい。その代わりに多く栽培された小麦を使って、お米の代わりに食べられていたのがおやき。白く、こんがり焼き目がついたおやきをぺろりと平らげた。

たしかあれはまだ夏になる前のことで、夕方の空気の気持ちよさと空の色が心地よかった。そしてその時間に入る温泉。至福以外のなにものでもない。カラマツの林に囲まれた静かな大浴場。まだ明るい空の向こうに山々が見える。日が落ちてちょっとだけ空気がひんやりした中、露天風呂の端っこに腰かけて膝まで湯につかる。永遠に話せるんじゃないかと思いながら、やっぱり温泉の保温効果は偉大なものでたっぷり体が温まった。

夫と旅行に行くと当然男湯と女湯で分かれる。あのひとりきりのじんわりとした時間も好きだけれど、女友達と行くずーーっと一緒に全部一緒に感じて、共感して、なんだかずっと安心できるこういう時間も大好きなのだ。

夕食は信州の恵みをたっぷり味わって、最近日本酒の勉強をしているという彼女にいろいろ教えてもらいながら利き酒をしたりなんかした。

普段は日本酒をあまり飲まないけれど、やはり長野の水が別格なのだということがわたしでも分かった。まろやかで、ずーっと絶えず山から流れてきたのだろうなと感じる水。すっきりとして、透明で、そのなかにある深み。山々を伝ってきた自然の恵みに心から感謝をした。

利き酒3種

部屋に戻ってからも眠りにつくまでおしゃべりをして、これからのこととか、これまでのこととか、まだまだ知らないお互いのことを話した。

なんというか、彼女の言葉にはいつも嘘がない。そう思っていることだけを話してくれる。そして人の幸せをいつも願っている。妬みがないというか、そんな感じ。ちょっと誤解されやすかったり、自己主張しきれなかったり、彼女には彼女なりの試練もたくさんあるのだと思うけれど、わたしはいつもいいなと思っているよ。素直なあなたが大好きです。

夏空と小川

朝起きて、敷地の中を流れている小さな川の音を聞いていた。きらきら水面が輝く。やっぱり旅って不思議で、あんなに昨日の夜食べたのにお腹が空く。朝ごはんもよく食べた。目覚めのいっぱいのりんご酢ジュースが身体中に染みわたった。旅恒例の朝風呂にも入り、身も心もゆるゆるの状態だった。

ごはんのおともがたっぷり

長野に来ると、海はないのに水に触れることが多い。どんな大海原に流れゆく水もこの山々をたどってきたのだと思うと、ここは海よりも広大な、偉大な場所なのかもしれないと思う。水はとても穏やかで、ときに激しい。どんなに岩々にせき止められても、その小さな隙間から流れゆく水。とどまることを知らず、流れゆくままに、流れゆきたい方へ、進んでいるように思う。

そんな人生にしたいと心のどこかで思っているし、きっと人生はそういうものなのかもしれないな、とも思う。

彼女との時間はあっという間に流れていき、「またすぐに会おうね。」と指切りをした。たくさんは会えなくても、大切な節目の折には会いたいと思う友。互いの人生を見ていたい、見てほしいと思う友。

ふたりが好きな長野で旅ができて本当によかったな。何年かして、また沢山沢山、身も心も変わったわたしたちで旅をしようね。

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